2009-03-28
■[刑事判例]催涙スプレー携帯で逆転無罪 最高裁

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090326-00000590-san-soci
軽犯罪法は「正当な理由なく刃物や鉄棒その他、人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者」を罰すると規定している。裁判を通して、争点は催涙スプレーの携帯に「正当な理由」があったかどうかだった。
男性は会社で経理を担当しており、現金などを持ち歩く必要があるため、護身用にスプレーを購入。平成19年8月26日未明、運動不足を解消しようと、スプレーをポケットに入れてサイクリングしていた際、東京・新宿中央公園付近で警察官の職務質問を受け、在宅起訴された。
同小法廷は「正当な理由」について、「職務や生活上の必要性から、社会通念上、相当と認められる場合」と判示。器具の用途や性能、職業や携帯の動機などを総合的に判断するべきだと指摘した。男性が深夜の外出時、万一に備えて小型のスプレーを携帯したことは「正当な理由」にあたると判断した。
今後、「自分の身は自分で守る」という意識が高まり、一層、催涙スプレーなどの護身グッズに注目が集まる可能性もあるが、26日の最高裁判決はあくまで、今回の男性の場合は軽犯罪法違反に当たらないという個別の判断だ。
甲斐中裁判長は「男性には前科もなく、万一に備えて、スプレーを携帯したもので、護身以外の意図はなかった」と説明。その上で、「防犯用品として製造された催涙スプレーでも、犯罪や不法行為の目的で持つことは『正当な理由』とはいえず、必要性もないのに、人の集まる場所などで携帯することは『正当な理由』がないと判断されることが多いと考える」とくぎを刺した。スプレーを携帯する際には「正当な理由」があるかどうか、十分留意する必要がありそうだ。
最高裁で、軽犯罪法の「正当な理由」が問題になること自体、かなり稀であるはずで、社会生活の中で問題になりやすいタイプのこの種行為について最高裁の判断が示された意味は小さくないでしょう。
ただ、最高裁の示した基準に照らしても、正当な理由があるかどうか判断が微妙なケースは、今後、かなり出てくるはずで、警察に聞いても、おそらく答えてはくれないはずですから、この問題(護身用に誰が何を持ち歩くのが適法であり違法か)の根本的な解決には程遠いということにはなりそうです。
なお、正当な理由がないのにあると勘違いして軽犯罪法規定の物をも持ち歩いた場合、いわゆる法律の錯誤として、故意は阻却されないと判断される可能性が高いでしょう。それだけに、この問題には難しさがつきまといます。
■[話題]漆間氏に虚偽答弁疑惑…「検察当局と接触ない」歴代副長官は情報交換のため定例会議

http://www.zakzak.co.jp/top/200903/t2009032715_all.html
鈴木氏は、官房副長官と捜査当局との関係について「法務省の法務次官、警察庁長官、警視総監、官房副長官の4者が集まる『水曜会』という会議がある」「治安問題の情報の交換。その週に起こったいろいろな問題について情報交換する」と、定例会議があったことを告白。
インタビュアーから「知った情報を、官房長官などに伝えるのか?」と聞かれ「それはある。官房長官とは四六時中会っているようなものだから」と答えているのだ。
石原氏の回顧も興味深い。リクルート事件を振り返り、「重要な案件は法務省は官房副長官に連絡する」「事務次官会議の後などに法務次官が寄ってきて、この問題はこういう展開になると教えてくれる」「政治家が絡む話になると、私の口から総理なり、官房長官にお知らせすることもある」と明かしている。
そのうえで、「副長官として積極的に関与するのか?」と聞かれ、「捜査に対してどうこうということは一切ない」としながらも、「内閣の運営に影響のあるような進展をするときには、事前になるべく早めに教えてくれよとはいう」と答えているのである。
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20090310#1236617568
でも少しコメントしましたが、警察官僚出身の内閣官房副長官ですから、上記のような場を利用しつつ、訳知り顔であちらこちらと動き回り、嗅ぎまわって情報収集していた可能性はかなり高いでしょうね。
過去にも、法務省の特定の官僚と特定の政治家の密接な関係が取り沙汰されたこともあり(何とかラインとか言われて)、特に法務省には、政治家と捜査の現場との間を遊泳しつつ、政治の意向を受け陰に陽に捜査に影響を与えるという側面もあり、国策捜査問題を考える場合も、物事を単純に捉えては実態を見誤る恐れがあります。
かつて、ある地検で、ある大きめの捜査(政治家も絡むような)に従事していた際、法務省の某高官(誰でも名前を知っているような人)から、政治家の意向を受け捜査に影響を与えるような「お願い」(実質的には指示)があって、主任検事が困惑しているのを見たことがありますが、内閣官房副長官に限らず、この世界では、様々な人々が、建前と本音を巧みに使い分けながら生きていて、そういった使い分けがうまくできないような人物は、例えば途中でドロップアウトして、毎日ブログを書く程度のしがない弁護士になる、という、そういう側面があるということは言えるでしょう。
■[話題]泥酔し出廷「殺してやる」 地裁、在宅起訴の男を勾留

http://www.asahi.com/national/update/0327/SEB200903270009.html
佐賀地裁は勾留状を出した詳しい理由を明らかにしていないが、被告の弁護人は「男の言動が裁判官の逆鱗(げきりん)に触れたのだろう」とみている。
関係者によると、被告は酒を飲んだ状態で出廷し、発言時以外は被告人席に上半身を横たえた状態だったため、奥野寿則裁判官に「あなたの裁判ですよ」「酒を飲んでくるとは何事ですか」と注意を受けたが、改めなかった。結審前に発言を許された時には、「おれを通報したやつを捕まえて殺してやる」と発言。裁判官はいったん休廷して弁護人を別室に呼び、「(被告を)勾留しようと思う」と告げたという。
ここまで無作法な被告人も珍しいと思いますが、裁判所としても、ここまで来ると勾留の理由や必要性があると判断したのでしょうか。「裁判所で傍若無人な振る舞いをするようでは、法規範を遵守することは期待できず再犯の恐れも大きく、実刑はやむを得ない」などと言われて実刑になる可能性も高く、愚かな行為が、結局は自分自身にはねかえってくる、という良い実例と言えるかもしれません。