一般会計総額が88兆5400億円、政策的経費である一般歳出が51兆7300億円と、ともに過去最大となった09年度政府予算が成立した。麻生太郎首相の言う、08年度の第1次補正予算、第2次補正予算に続く、第3弾の施策が動き出す。
昨年10~12月期に続き、今年1~3月期も前期比・年率で2けた前後の実質マイナス成長が予想されている中、政府・与党の関心は追加景気対策の策定や第1次補正予算編成に移っている。09年度を通しても4%程度のマイナス成長の予測が有力なことを理由に、実体経済への支援、金融支援を問わず、何でもありの対策が必要との論調が与党内では高まっている。
4月2日にロンドンで開かれる第2回金融サミットでは、財政出動の重要性では意見の一致をみる見通しだ。日本として国際協調の視点からも、短期的には大型補正、中長期には成長力強化で対応していくという判断である。
では、なんでもありの政策でいいのか。それで本当に景気に明るさは出てくるのか。国民は安心を取り戻すことができるのか。いまの与党の議論の方向には問題が多い。
政府の経済財政諮問会議は25日、三村明夫新日鉄会長など民間議員が提案した経済危機克服の道筋を了承した。景気を危機、底入れ、回復・成長の局面にわけ、それぞれ必要な施策を講じていくというものだ。
危機対策では雇用対策や公共事業前倒しなど内需下支えを中心に位置付けている。底入れ期には社会保障機能強化や安全・安心のためのインフラ整備、環境、医療などの潜在的内需の顕在化策を、回復・成長期には新たな成長分野の創出・育成に向けた諸施策や財政規律の回復を挙げている。
大筋で納得できる内容だ。ところが、与党や経済界は別の方向を向いているとしか思えない。典型が公共投資積み増しや株価対策などによる企業部門を中心とした供給側の活性化策である。小さな政府こそが正しい道と主張してきた経済界が30兆円もの経済対策を求めることも、論理一貫性に欠ける。
外需頼みからの脱却というのであれば、効果的な雇用対策など家計部門の立て直しに寄与する施策を幅広く示すべきだ。公共事業のばらまきは最悪の手法だ。今のような経済状況下で財政がその役割を果たさなければならないことは間違いない。だからといって、何でもいいのではない。
財政健全化の観点も忘れてはならない。財政が破綻(はたん)状態では将来的にも思い切った施策は打てない。そのためにも、国債を増発するに当たっては財政効果や効率、国民の安心向上など多面的な検討が必要だ。理念も節度も欠いた対策では、経済再生はままならないことを認識すべきだ。
毎日新聞 2009年3月28日 東京朝刊