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社説

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二階経産相―献金疑惑の説明を求める

 二階俊博・経済産業相が、地元の和歌山県で代表を務める自民党支部に対し、偽装献金が行われていた。カネの出どころは、小沢民主党代表の秘書が起訴された違法献金事件と同じく、準大手ゼネコンの西松建設だ。このような疑惑が報じられている。

 この支部の政治資金収支報告書には06年と07年、個人献金としてそれぞれ計300万円の記載があった。ところが、実際は西松建設が社員60人の名義を使い、1人あたり5万円ずつ個人献金したかのように装ったもので、資金も西松が出していた。

 5万円以下の個人献金は、献金者の氏名を報告書に載せなくてもいいという規定を悪用した可能性もある。

 それだけではない。西松建設OBが社長を務める会社が、大阪市内でマンションを買い、二階氏を支援する政治団体に事務所として年間300万円近くで貸していた。

 これらが、西松建設の関係者が明かす疑惑の内容だ。事実であれば、他人名義での献金を禁じた政治資金規正法に触れるのではないか。もし、この献金が事務所の賃貸料の穴埋めだったとしたら、事実上の無償提供にはならないのか。こうした疑問は消えない。

 ほかにも西松建設は、小沢氏の秘書の事件にかかわったとされる二つの政治団体を経由させ、二階派のパーティー券計838万円分を購入していた。

 経済産業相は産業全体の振興をつかさどる役職だ。なおのこと、特定の企業との癒着は許されない。

 しかも、未曽有の経済危機克服のかじ取りをすべき経産相が公正さを疑われるようでは、その職責を十分に全うできるだろうか。

 それにもかかわらず、二階氏は西松からの偽装献金疑惑について「私の方にはそういう認識はない。政治資金規正法に基づいた対応をきちんとやっているというふうに認識している」と述べるのにとどまっている。

 小沢氏のケースと違い、秘書が逮捕・起訴されたわけではないから説明する必要はない。そう高をくくっているとしたら大間違いだ。

 二階氏は、政策を決定し、公共事業に大きな影響力を持つ政権側に身を置く。しかも現職の主要閣僚であり、その説明責任は極めて重い。

 麻生首相は「説明責任は政治家個人にかかっている」とひとごとのように話している。それですむ話ではなかろう。二階氏に、資料を公開し誠実に答えるよう促すべきだ。

 西松側から献金を受け取っていた自民党議員はほかにもいるが、いまのところ、検察が立件したのは小沢代表側だけだ。自民党側に違法行為はなかったのかと国民は注視している。

 検察は疑惑の全容解明のための捜査をつくしてほしい。

後半国会―消化試合にしないために

 09年度予算と関連法が成立し、与野党論戦の舞台は後半国会に移った。

 遅くとも秋までには総選挙がある。本来なら号砲を待つ競走馬のように、与党も野党も対決色をみなぎらせ、政治にいっきに緊張感が高まっておかしくない時期である。

 だが、2大政党の現状は空気の抜けた風船のようなありさまだ。

 民主党は小沢代表秘書の違法献金事件、自民党は二階経産相の疑惑や財務副大臣の辞任など「政治とカネ」のスキャンダルに見舞われ、さあ対決という機運はまったく盛り上がらない。

 深刻な不況の渦中である。地に落ちた政治への信頼回復も急務だ。与野党が論じ合うべきテーマは山ほどある。なのに、このままでは6月3日まで会期を残す後半国会は、消化試合のように終わってしまいかねない。

 それでいいはずがない。政治が活力を取り戻すには、一日も早く解散・総選挙を行うことだ。だが、政府与党は今国会に補正予算案を出す方向で、すでに動き出している。麻生首相が解散の封印を解くそぶりは見えない。

 だとすれば、2カ月余りの国会会期を無駄にしないために、各党にはよほど知恵を絞ってもらわねばならない。

 多くは望めまい。せめてこの2点だけでも、成果をうみだせないか。

 第1に、有効で実のある経済対策である。政府与党内では20兆円だ、いや30兆円だと威勢のいい掛け声ばかりが先行しているが、問題は中身だ。

 一時の効果しか期待できない定額給付金のような愚かなばらまきは、もう願い下げにしたい。環境や福祉、教育など、国民の将来に役立つ投資に賢く使うべきだ。同時に、くらしや雇用に不安を抱く人たちに手を差し伸べる施策にも十分に気を配ってもらいたい。

 民主党など野党も対案を出し、そのうえで与野党で協力できるものは協力し、早く成立させることだ。

 第2は、民主党の小沢代表が提起した企業献金の全廃だ。党首が思い切って提案したのに、菅直人代表代行、岡田克也副代表ら幹部がさっそく慎重論を唱えているのはどうしたことか。

 個人献金がなかなか広がらない、といった事情はあろう。ただ、政治不信の核心といってもいい問題で腰が引けるようでは、小沢氏の進退とは別に、民主党の姿勢、自浄能力が疑われかねない。ここはやせ我慢をしてでも前に進むべきだ。

 共産、社民両党にとっては、年来の主張を実現する好機である。民主党をどんどん突き上げてほしい。「クリーン」が旗じるしの公明党も、与党の側から存在感を見せたらどうか。

 対立すべきものでは対立し、妥協できるものでは妥協する。そんな政治技術にたけているのはどの党か。それも有権者の有力な判断材料になる。

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