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雑談:イチロー選手の素顔をちょっとかいま見た

2009/03/25 20:24

 

■WBCの決勝戦のとき、総理番記者たちも番小屋(官邸内にある総理番記者らの作業室。総理執務室前を映すモニターがあり人の出入りが確認できる)で、テレビにかじりついていた。私は外のエントランスホールにいたが、9回裏でダルビッシュが打たれたときの悲鳴もイチローのタイムリーのときの歓声もエントランス中に響いていたよ。

 

 

■実は私は野球があまり好きではない。新人記者時代の高校野球地方予選取材やリトル・リーグ取材でトラウマがある。いくつも試合かけもちで、炎天下の中でスコアブックつけて写真とって原稿をかくという超ハードな仕事で、若さと体力だけでするようなもんなのだが、これがミスしやすい。自分で撮った写真ですら、同じようなカットば何枚もあるから、何試合の何の場面だったか勘違いして「えとき」を間違ったりするのだ。

 

 

■あのころは暗室現像とか電送とか全部自分でするんで、自分が間違ったら最後、誰も救えない。で、翌日の新聞をみて親御さんとかから悲鳴に似たクレームがくる。そりゃそうだ。地方版とはいえ、息子の晴れ姿(タイムリーヒットを打ったところとか)の写真が掲載されるべきところに別人の写真が載ったりするわけだから悲劇。こっちもすまなさで涙目よ。おかげで途中からスタンドの応援風景の写真しか使ってもらえなくなった。野球の試合をみると、あのころの吐き気を催すような取材の日々を思い出す。

 

 

■そんなわけで、野球も野球選手のこともあまり知らない。北京五輪のとき、ジャパンハウスでダルビッシュ選手を見かけて、ほえ~最近のプロ野球選手はこんな少女漫画に出てきそうなルックスの人がいるんだ、と驚いたくらいだ。私の野球選手のイメージといえば「がんばれタブチくん」とか掛布選手だったから。

 

 

■それでもWBCの二連覇は日本人として誇らしい。そして、週刊誌などで「もう歳」みたいな書かれ方をされていたイチロー選手が、最後の最後で勝利を決めたのは、勇気づけられた。野球に興味のない私でさえ、ついつい外国人に自慢してしまう。

 

 

■ところで、イチロー選手というのは、以前は天才肌だけどプライドも高くクールな人だと思っていた。記者の質問にもひややかだったり、傲慢だという人もいる。でも最近印象を変えている。こんな話を聞かされたからだ。

 

 

■私が某政府高官の自宅に夜回りにいったときのこと。お茶請けにシアトル産のチョコレートが出された。夫人によると、そのチョコは、シアトルの日本総領事館に駐在する政府高官の後輩の警察官僚から贈られてきたもので、それには「人の縁とは本当に不思議なものです」という書き出しではじまる綺麗な字の手紙が添えられていた。

 

■その警察官僚は、シアトルのホテルの一室でひとり、ひっそり息を引き取った、ある老人の身元確認と遺体の搬送手続きを担当したときのことを手紙に書いていた。

 

■その老人(73)はがんを患い、何度も手術をして余命いくばくもないと言われていたそうである。だがイチロー選手の大ファンで死ぬまでに一度でいいからマリナーズの試合を現地でみたいと、ひとりシアトルにやってきた。そしてシーズン最後の試合を見たあと、本当にホテルで急死したのだった。

 

 

■老人のシアトルまでのひとり旅の目的が達成されたことに奇妙な感動を覚えた警察官僚はその話を妻にした。妻は行きつけの美容院で店長にその話をした。その美容院がたまたまイチロー夫人の行きつけの店で、店長がイチロー夫人にその話をした。イチロー夫人がイチロー選手にその話をした。そして、イチロー選手から警察官僚に、その老人の遺族と連絡を取りたいという問い合わせがあった。警察官僚が、改めてその老人の遺族と連絡をとると、偶然にもその老人の甥っ子が、警察官僚のかつての上司だったという。その後、イチロー選手から、老人の息子さんあてに、老人が見たシーズン最後の試合でイチロー選手が使ったスパイクが送られてきたそうだ。

 

 

■だから?と言われればそれまでの話のなのだが、ああ、クールに見えるけれどイチロー選手って人とのささやかな出会いとか縁とか本当に大切にする人なんだなあ、と思った。そして、警察官僚というと刑事ドラマじゃたいてい出世欲の塊の仇役で出てくる冷たいイメージだけれど、そんなささやかな人との関わりの感動を桜もようの便せんにしたためて、先輩に伝えてくる。その政府高官といえば、やはり週刊誌では諸悪の根元みたいな書かれっぷりだが、そういう他愛もない話を手紙をみせながらしみじみと記者に話すような人である。

 

■輝かしい業績や高い地位にではなく、むしろ、他人が知らないような、こんな小さなあたたかさをかいま見たとき、私はみょうにじーんときたりする。

 

 

 

 

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コメント(18)

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2009/03/25 20:40

Commented by 居眠り半睡 さん

♪福島さま いいお話です。戦後1950年代、幼少時の草野球もよく分からず倫敦郊外で小中高を過ごし、大学も波士頓のため野球は赤靴下軍のものと思っていた時期がありました。イチローさんは侍・日本の士です。

 
 

2009/03/25 22:37

Commented by 一閑 さん

福島記者

> 私の野球選手のイメージといえば「がんばれタブチくん」とか掛布選手...

あれ? 「'85年のお祭り」も経験してる筈...でも、そのトラウマはキツいですな♪


> そういう他愛もない話を手紙をみせながらしみじみと記者に話すような人...

実にいい話ですよ。 そういう縁とか奇遇とかを大事にする心だけは失いたくないもんだなあ...と思いますし、機械装置の如き印象を受ける官僚機構の中でもそういうまともな感性で感動体験を語れる人々が確実に居る事が嬉しいですね。

しかしイチロー選手格好良すぎやろ...将に日本の一番打者ですな♪

 
 

2009/03/25 22:42

Commented by orchid さん

福島さん、いい話ですね。前回のWBCあたりから、イチローって本当はホットな男なんだということが見えてきてましたが、今回は最後の最後での劇的なシーンもあって一段とホットなイチローでしたね。予選から2次ラウンドとなかなかクリーンヒットがでませんでしたが、昨年もメジャーのオ-プン千で20数打席ヒットが出なかったのでした。少し前のイチローならこんなことはなかったのにと、やはり心配です。今年はメジャーで空前(そして絶後?)となる9年連続200本安打がかかっていますから、是非WBCの勢いでロケットスタートを切ってほしいものです。
で、福島さん、イチローをまくらにして、本当は某政府高官が意外とイイヒトなんですよ!と言いたかったのが、今日の狙いでしょうか?

 
 

2009/03/25 23:56

Commented by 内田一ノ輔 さん

good column!!

 
 

2009/03/26 02:01

Commented by 花うさぎ さん

福島香織さん

良い話をありがとう。イチローの人となりが伺われます。

出来れば何らかの形で産経新聞にも反映させてくれれば、と思う。

 
 

2009/03/26 08:12

Commented by gryphon さん

私なんかも、やっぱりネットを使うようでいて古い体質なんだなあ。
この前と同じですが読んでいて「エッ、こんないい特ダネ話、新聞本紙に書かずにブログにしちゃっていいの?」とか思ってしまいました。

 
 

2009/03/26 10:43

Commented by zunda-kun さん

福島記者

感動しました!!

心温まるお話有り難うございます。 繰り返し読みました。現在の我国で必要な事は、この様な心温まる物語が必要です。 政治経済、社会全体が、
沈鬱な状況の時こそ。
 
是非とも産経本紙(コラム)にてご紹介下さる事を強く希望申し上げます。
WBCの優勝と伴に日本人を、勇気づけるお話です。

蛇足
総理番記者になられてから、ツマラナイ事が多々あると思いますが、
福島記者独自の観察を楽しみしております。
ガンバレ 香織ちゃん 

 
 

2009/03/26 12:04

Commented by tenyoufood さん

断崖の父です。

イチロー君の嫁さんの昔の名前は、「福島」ってぇんだよ。

この嫁さんは、年上女房でしかもオツムのできも、グンバツなのよ。

イチロー君は変人で、おちゃらけ言っているときも、目はゼーンゼン笑ってないんだ。ま、嫁さんと二人っきりの時は、ドーダカ知らないけどね。

で、使い古しのスパイクの話は、このデキル嫁さんがイチロー君の尻を叩いて、アチコチ手を廻してプレゼントしたってぇ訳だ。

イチロー君はスパイクを嫁さんに渡しただけで、後はゼ~ンブ嫁さんがやったってぇことよ。

名前がおんなじでも、こんな気の効いたことが出来る<未だに独り身の>おシトはいねぇ~な。

 
 

2009/03/26 12:20

Commented by tenyoufood さん

断崖の父です。

↑のことなんだけどぉ~

決して福島香織さんのことではアリマセンよ。
年...じゃなかった、念の為。

五十歳になって、
初めてやっとのことで結婚された☆野知子さんのように、お美しいお方もいらっしゃいます。

 
 

2009/03/26 15:22

Commented by moonjack さん

穿った見方ばかりしないで、素直になりましょうよ。
いい話なんだから。

 
 

2009/03/26 19:40

Commented by stopchina さん

チャン*ロにはいやな奴が多いね。
天洋食品tenyoufood の毒ギョーザでも食ってくたばってしまえ、と言いたい。
 

 
 

2009/03/27 00:09

Commented by ..... tomtom さん

感動的なお話でした。
いいえ、スパイクではなく客死されたご老人の意志のほうです。
他人事ではないような歳に私も成って来たせいでしょう。

しかし、なぜスパイク靴を?
何か靴を贈る事に意味があるのかなあと硬い頭で考えています。
何処かの国では靴を投げつけたりするのは最大の侮辱とニュースで見ました。

このようなお話にどう心を動かされるかで人の価値が決まります。
いくら文化・文明・伝統を世界に冠たるものと誇っても人間の命と心が一番大事を、知らない人は日本の首相といえども(わざとこういわせてもらいます)尊敬されるものではないですね。

人間誰しもが誇りを持っているものですが、日本人が他国人と違うとすれば恥が誇りの裏側にあることでしょう。
Prideは傲慢と訳せますが、一般的に言って傲慢を表に出さない自制心を日本人は誇りとするのではないでしょうか?
それを知らない人は日本人にさえも世界一の誇りは簡単に傲慢になる危険性があると思います。
これは海外の方々にもそれほど難しい話ではないでしょう。
しかし、これを心の中にもつことは彼らには至難の業なのかもしれないと感じるところがあったのは啓示的でさえあり、非常に残念なことです。

 
 

2009/03/27 14:11

Commented by 故郷求めて さん

本当に不思議な縁ですね。世界は広いようで狭いです。
それにしても、人の話というのはしてみるもの、聞いてみるものです。
落語「崇徳院」を思い出させる話です。
面白いお話をありがとうございました。

 
 

2009/03/27 17:36

Commented by VO さん

>ところで、イチロー選手というのは、以前は天才肌だけどプライドも高くクールな人だと思っていた。記者の質問にもひややかだったり、傲慢だという人もいる。

野球に限らず、執拗でアサヒることが仕事のような報道陣にハイエナのごとき印象を持ち、冷ややかな態度で追い払いたくなる表情を示す人は、たぶん正常な神経と人情を持った人ではないでしょうか?

報道陣に受けのいい人は私は信用しませんしホントの情を持ち合わせない人と理解しています。

(福島記者がハイエナのひとりとは思っていませんが・・・)

 
 

2009/03/27 20:17

Commented by f4phantom さん

To stopchinaさん
>チャン*ロにはいやな奴が多いね。
>天洋食品tenyoufood の毒ギョーザでも食ってくたばってしまえ、と言いたい。
> 
というか彼奴と同じように書込禁止か、書込消去にしてしまえば良いのではないか?
どうせまともなことは書いてないのだから、ブログに留める意味がない。
奮青のレベルなんて、その程度さ。

 
 

2009/03/27 21:16

Commented by gujin さん

>ところで、イチロー選手というのは、以前は天才肌だけどプライドも高くクールな人だと思っていた……
 「プライドが高い」というより、単に「技術が高い」ということではないか? そして「その水準を維持するためには必要なことを何でもする」ということが、「クール」ということか。
 そのご老人の話を聞いて、スパイクをプレゼントすることは、技術の維持向上に何の妨げにもならない。嬉しく、また有り難い話なので喜んで記念のものを差し上げた。
 第一級のプロとはそういうものではないか。

 
 

2009/03/27 23:17

Commented by Cospaly さん

アネキ

私は、貴方様の削除行為を賛成できませんが、まあ、ストレスを解散出来ればいいと思います。

そして、福島ファンの怒りも理解出来ない。なんだよ。
おいらは、単なるアネキが好きだろう。そんなの、普通だろう。
記者だって、自分のファンが必要だろう。

 
 

2009/03/27 23:26

Commented by Cospaly さん

昔、福島のファンのひとりmoko?というIZAコードでおいらを散々悪戯をしてきた。おいらは、あいつを許していた。なぜなら、あいつらはおいらは人間と思っていないから。

ご苦労様です。IZAファン限らず、IZA記者でも仮想世界でも人々を区別してしまい、更なるあいつら自分んなりの仮想世界を作り上げてしまいます。

例えば古森記者いい年なのに、柔道6段を持ちながら、道を極めていない。本当にご苦労様です。

日本人は、WEB上で麻生を散々に叱っていた。しかしながら、麻生は成功者だろう。古森記者でもいい、福島でもいい、総理になってみればわかるさ。

おいらを抹殺する暇が有りましたら、落ち着いておいらのコメントを考えたら、どうだ。

まあ、おいらにいくら酷いことをされても構わぬよ。君らシナ政府以上できると思えない。君ら毛沢東以上の知恵はまずないだろう。

まあ、おやすみなさい、
明日また会おう

 
 
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