2009年3月23日

強風のため、スコッツデールでのナイトゲームは７回で終了。
レフトからライトに向かって吹く風が、フィールドのごみを紙吹雪のように舞い散らせて、回が進むごとに、直接風の当たるライトスタンド側から順番に、冗談のようにお客さんがごっそりいなくなっていくのです。
まるでどっきりカメラのような減りっぷりでした。

かわいそうだったのはアーロン（マイルズ・二塁手）です。
先発出場ではなかったので、別に来なくてもよかったのに、
自分の名前が紙に書いてあったからと、律儀に遠征バスに乗って来た。
なのに監督に、
「なんでここにおるんや？って、いぶかしがられちゃった・・・」
遠征に来なければ今頃あったかい家の中で、ゆっくり何か飲んでいたはず。
しょぼんと肩を落として、ベンチでぴったり寄り添ってくる彼は、
その実、しっかり僕を風除けにしていたのでした。

ともあれ、強風ゆえに、守備位置は大変見ごたえがあったことでしょう。
レフトはショートの真後ろ。ライトはフェンスの手前。
フライは空中でイレギュラーするし、
ホームランは風で戻されて外野フライになってしまう。
最後まで残ってくれたお客さんが、せめてそれくらいを楽しんでくれたことを願うばかりです。

アリゾナ州メサにて　田口壮　

2009年3月25日

オフのためお休み

アリゾナ州メサにて　田口壮　

2009年3月24日

明日はキャンプインしてから、２度目で最後の休日、だというのに少し心がブルーな私です。
いえ、今日に限ったことではなく、去年あたりから感じていたことなんですけどね。
本日のメールは、だから、ちょっとばっかり愚痴を聞いてもらっていいですか？
本当は前向きで上向きで明るい話だけを書いていきたいのですが、ガス抜きしないことには、なかなか難しそうです。すみません。

全部ではありませんが、僕は多くのマスコミに、「そろそろ引退する」存在として扱われています。
「もう本当だったらとっくに引退していてもおかしくないし、メジャーに残れなかったら引退するんだろうし、それでも子供に野球をしている姿を見せたいがために、何とか必死でプレーを続けている」今年４０の田口壮の散り際が、もっぱらの興味、という感じです。
たとえば、去年なかなか移籍先が決まらなかった時も、「もう引退するだろう」という予想ありきで、その上に質問が来ました。華々しくもなく、スター選手でもなく、なのに４０歳という大台を迎える選手は、そろそろ引退して当然なのでしょうか？まだまだ続けたいだなんて、図々しいのでしょうか？

「マイナーに落ちたらどうするんですか？」という質問も数多く受けました。
どうするんですか？って、不思議な質問です。そこには、
「マイナーに落ちたらもう潮時ということでしょうね・・・」と言わせたい、言うであろう、という
想定があるのです。もしくは、
「マイナーだって僕はがんばりますよ！」と言わせたい、言うであろう、という想定があるのです。

残念ながら、そんな気持ちが相手から伝わってくる。こういうインタビューを受けるのは本当に切ない。今、ますます野球が面白くなってきて、どんどん突っ走ろうとしているところで、
「もう散り際の人」扱いされるのは悲しい。
せっかく知識と経験を、やっと１７年かかって蓄えたのです。
いわば、僕の財産、それを今後のプレーに生かさず終わるのは、もったいないことじゃありませんか。
定年退職される会社員の方も、同じ気持ちになるのかもしれませんね。

今年マイナーに落ちたら？もちろんメジャーに上がれるまで必死になりますよ。
まわりから見て、どれだけみっともなくて泥だらけでかっこ悪くても、野球が好きな限り、野球がうまくなりたい限り、悔しいと思う限り、僕は現役でありたい。
「お前なんかもういらん」とすべてのチームに背中を向けられて、手も脚も思うように動かなくなった
そのときに、「さてどうしようか」と思うことでしょう。

それまでは、僕を勝手に引退させないでください。
かっこいい引退へのストーリーを作って、それに見合った答えを引き出そうとしないでください。
一般論の中に当てはめないでください。
そして、本当にその時がきたら、思いっきり泣かせてください。

ところで、近々ホホカムスタジアムで、メジャーＯＢの試合があるらしいのです。
「１０ドルちょっとで普通席。２５ドルでＶＩＰ席！みんな来てくださいね！」という呼び込みに、僕が、
「じゃあ５０ドル払ったら一緒にプレーさせてもらえるのかなあ？」と言ったところ、
ジョーイ（ガスライト・外野手）が、
「あと２年待ったらタダだ！ソウはあっちのチームでプレーしてるよ！」
ということで、本日新たに「ジョーイより長く現役」という目標も設定しました。

ご清聴、ありがとうございました。

アリゾナ州メサにて　田口壮　

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