県外客も多く利用する上信越道長野インター料金所。週末の料金値下げで混雑も予想される=長野市松代町 |
景気刺激を目的に、今月28日から高速道路料金が大幅に引き下げられる。県内全線を含む地方路線で、自動料金収受システム(ETC)の利用を条件に、乗用車に限り土日祝日は上限1000円で乗り放題、平日は昼間を中心に全車種が3割引きになる。マイカー利用者や観光地は「旅を楽しみやすくなる」と歓迎する一方で、「土日祝日に客が集中する」との懸念も。桜の名所など、知名度の高いイベントを控える地域では渋滞対策も課題になりそうだ。
長野市の上信越道松代パーキングエリア。会社の同僚2人とスノーボードをしに大町市に向かうという千葉県船橋市の斉藤裕介さん(24)は「1シーズンに十数回は長野や群馬などのスキー場に行く。関越道練馬インターから長野インターまでの高速料金が5000円くらいなので、5分の1ほどになるなら助かる」と喜んだ。
諏訪郡富士見町のスキー場「富士見パノラマリゾート」は、首都圏などからのマイカー客が中心。吉野敬志副支配人も「ありがたい」と歓迎する。今季は4月上旬で営業を終えるが、夏場はマウンテンバイクのコースを設けており、「値下げをきっかけに遊びに来てほしい」と話す。
これに対し、不安を訴えるのは千曲市上山田温泉のホテル経営者だ。「休日の前日は今でもほぼ満員」といい、平日の誘客が課題だった。高速料金が往復1万円以上かかる東京や大阪方面からの客も多いだけに、「時間に余裕があり平日に来ていた客まで、休日に集中してしまうのではないか」。
マイカー利用が進むと、公共交通機関の利用にも影響が出そうだ。
長野新幹線などを運行するJR東日本は「利用客数が減る可能性は否めない」(広報部)。伊那バス(伊那市)の小林金俊常務も「みんな乗用車で東京に行ってしまうんじゃないかね…」と懸念。同社は飯田、駒ケ根−新宿間で高速バスを毎日18便走らせているが、景気悪化の影響で昨年暮れごろから乗客が減少。マイカー利用が進めば、状況はさらに厳しくなるとみる。
4月以降、長野市では善光寺御開帳、伊那市では高遠城址公園さくら祭りが始まる。イベントの開催地周辺は、これまでも県内外から短期間に大勢の客が集中することによる渋滞の解消が課題となっている。
昨年、渋滞緩和策としてJR臨時列車を運行した伊那市観光課は「手応えを感じ始めていたのに…。これから臨時駐車場を増やすのは難しい」。長野市交通政策課は「車が増えた場合は、臨時駐車場の回転率をできるだけ上げて対応するしかない」と話している。