人気歌手、ZARDの坂井泉水さんが入院中の慶應義塾大学病院で死亡したという一報を聞いて、5月28日午後、早速現場へ行ってみた。
入り口付近では、多くの報道陣がシャッターチャンスを待っている様子だった。昨日亡くなっているはずなのに、なぜ、いまカメラを構えて待っているのだろうか? ひょっとしたらこれから遺体が搬送されるのか?
ともあれ、記者は非常階段を探した。自殺と事故の両面から捜査がされているということだったので、現場を見る価値は大きいはずだ。程なくして、その階段は見つかった。
現場はスロープのようになっている病院ならではの非常階段。車いすでの往来用という感じだ。幅は2メートルくらいあり、緩やかな傾斜がついている。1階部分が黄色いテープで入れないようになっているので、ここにまちがいないだろう。
どこから、どのように転落したのかはわからない。しかし、そのスロープの傾斜は緩やかで、手すりを乗り越えなければ、突風でも、大雨で滑っても、階下に落ちることは考えづらいと思った。
1枚シャッターを切ったところでスーツ姿の男性数人に取り囲まれた。男性は「なぜ写真を撮っている? 患者さんが写ったら問題だ」と言う。
「患者さんは写っていませんよ」と言うと、データを見せろとまでは言われなかったが、もうこれ以上写真を撮ることは不可能な雰囲気だった。
あの報道陣のピリピリは、この取材だったのか!
スーツ姿の強面(こわもて)に押し出されるように、私は慶應義塾大学病院を後にした。ひょっとしたら遺体搬送などがあったかもしれないが、この報道陣の人垣の中で何かできるとは思えない。何なのだ、このピリピリは。
……と、帰宅して理由がわかった。やっとあの報道陣たちは、もう言うまでもあるまい、松岡農水大臣だ。
後日、ZARDファンの人たちのコメントをとりに、再びここへ来ようと思った。