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きょうの社説 2009年3月27日
◎北陸経済の活性化 消費刺激に「奨励金」設けては
製造業の不振が目立つ北陸経済の活性化には、幅広い分野での内需拡大が欠かせない。
政府・与党が策定中の追加経済対策は、地球温暖化対策と景気浮揚を結び付ける日本版「グリーン・ニューディール」構想が柱の一つになるとみられるが、このなかでも特に電気自動車やハイブリッド車など「次世代自動車」や地上デジタル放送対応テレビ、太陽光発電の普及促進に期待したい。北陸はデジタル家電部品の生産地であり、自動車の関連部品メーカーも少なくない。輸 出に期待できない今、生産拡大は内需を増やす以外に手はなく、冷え切った消費マインドを温める決定打がほしい。たとえば次世代自動車や地デジ対応テレビ、太陽光発電の普及に向け、「奨励金」を出す仕組みができれば、北陸にはありがたい景気刺激策になるだろう。 民間シンクタンクの試算では、五千万世帯に地デジ対応テレビ購入費二万円を支援する と、予算一兆円で七兆六千億円の波及効果があるという。ドイツ政府は景気対策として低燃費の環境対応車への買い替えに、約三十一万円の奨励金を出しており、二月の新車登録台数が前年同月比で22%増えた。報奨金やクーポン券の支給は消費を刺激し、即効性が期待できる。 次世代自動車については、国の経済財政諮問会議で市場を二〇二〇年に五兆円規模にま で拡大し、六万人の雇用創出につなげる成長戦略が練られている。まず「官」の需要を増やし、生産コストを引き下げる狙いだが、ハイブリッド車などは既に「価格破壊」が起きている。国民が競って買いたくなるような奨励金制度をつくれば、市場は短時間で大きく育つだろう。 地デジ対応テレビも、アナログ放送終了まで残り二年半の段階で、世帯普及率が50% に満たない。奨励金を出して一挙に普及率を上げてはどうか。太陽光発電装置は薄型テレビと共通の部品が多いため、苦境に立つ家電や電気部品メーカーの支援にもなる。 「消費不況」の克服には、何より消費者心理に訴える施策がほしい。定額給付金の支給 を呼び水として、千五百兆円近い個人金融資産を引き出す知恵を求めたい。
◎海外誘客「非常事態」 過度の悲観は必要ない
世界同時不況と円高のダブルパンチで、日本を訪れる外国人が急激に減少している。日
本政府観光局(JNTO)の推計では、二月の訪日外国人数は前年同期比約四割減となり、観光庁長官がその落ち込みぶりを「非常事態」と表現するほどである。石川、富山県を見てもおそらく似たような状況だろう。宿泊施設の苦戦や小松、能登、富山空港のチャーター便の不振などがしばらく続くかもしれない。ただ、だからといって、過度に悲観的になる必要はまったくあるまい。過去にも、新型 肺炎(SARS)の流行などによって、外国人の訪日旅行需要が冷え込んだことは幾度もあったが、いずれも一時的な現象に終わっている。世界の観光市場は、長い目で見れば着実に拡大し続けよう。 いずれ景気が好転した時、波に乗り遅れないためにも、種まきを怠るわけにはいかない 。今ある観光資源をさらに磨く努力を重ねるとともに、外国人旅行者が安心して滞在できる環境づくりも、むしろ加速させるくらいの意気込みで進めてほしい。 石川、富山県では、クモの巣のように張り巡らされている電線や電柱がせっかくの景観 を台無しにしている地区がまだまだ残っている。外国語でも対応できる観光案内所やガイド、海外のクレジットカードが利用できる現金自動預払機(ATM)など外国人向けの観光インフラも手薄だ。伸ばしたい長所も、克服しなければならない弱点もたくさんあるのである。 もちろん、セールス活動でも萎縮は禁物だ。台湾や韓国の落ち込みを最小限にとどめ、 さらに今月発売されたミシュラン・ガイドブックの「三つ星効果」を新たな顧客獲得に結びつけるためにも、より効果的できめ細かな情報発信に努めてほしい。富裕層の開拓にも果敢に取り組みたい。 観光庁にも、頑張る自治体に対する積極的な支援を求めておきたい。昨年十月に発足し た途端に堅調に推移していた訪日外国人数が大幅下落に転じ、頭の痛いところであろうが、苦しい時こそ組織の実力が試される。
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