住民監査請求書
(社会福祉法人に対する補助金等返還請求)
1.請求の趣旨
大阪市(關淳一市長)は、福祉施設(ケアハウス)入居者の預り金流用等平成10年の開所当時からずさんな経営で毎年赤字を積み重ねている社会福祉法人・藤光会(藤原勇一理事長)対して、平成13年、あらたに保育所の設置を認可し、多額の施設整備費や運営費を補助してきた。
事業者は補助金の目的に従って誠実に事業を行うよう努めなければならない(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律ー以下補助金適正化法というー第3条)ところ、社会福祉法人・藤光会および施設責任者らは、その運営内容はもとより毎年提出が義務付けられている「調書」の記載さえ極めてずさんで、基本的な事務さえ実行できていない。また、これを監理指導する立場の市健康福祉局法人管理課は、監査結果の指摘・指導に従わない状態を放置している。
経営破たんを招きかねない社会福祉法人・藤光会に対して、大阪市は、重ねて保育所設置を認可し、平成15年度本園開所に引き続き平成16年度には分園2箇所の開設を認め、多額の補助金を交付している。このことは、上記補助金適正化法をはじめ、社会福祉法、大阪市民間保育所運営補助金交付要綱にも反する違法不当な支出である。
確かに、規制緩和等により保育所入所待機児童数の解消が急務であることから、民間の認可保育所の設置が必要ではあるが、もともと認可保育所増設の目的は、保育ニーズに対する公的な施設不足から安易な無認可ベビーホテルの急増による乳幼児の事故防止のために、公的資金で保育の質を保障してニーズに応えようとしたものである。単に待機児数の減少を目的としたものではない。
社会福祉法人藤光会経営の福祉施設「ケアハウス金の鈴」の赤字について、事業者は、36室中14室が空室で予定の収入が入らないことを理由にあげているが、保育所同様ニーズが多く、市内の同様の施設はすべて満室のうえ待機者もある状況である。なぜこの施設が空室を保っているかを大阪市は解明すべきである。この事実をもってしても、社会福祉施設経営者の適格性が問われる。
市長は社会福祉法人藤光会に対し違法不当に交付された補助金の返還を求め、また、今後の補助金交付を差止め、福祉法人としての認可を取り消し、施設経営者らを交替させるなど、高齢者や乳幼児に一刻も早く健全な環境を保障するよう求めるものである。
2.法人の問題
社会福祉法人・藤光会は、その運営する施設「ケアハウス 金の鈴」「金の鈴特別養護老人ホーム」「金の鈴デイサービスセンター」「金の鈴短期入所施設」「在宅サービスステーション」について、毎年提出が求められる「法人調書」や「施設調書」の肝要な項目の記載もれや財務文書の添付もれが多く、ずさんな事務処理と運営内容を露呈している。以下、問題点を記載する。
1)法人の定款に「鈴の音保育園」の設置経営事業が記載されないままである。
2)法人の登記簿謄本の添付なし。
3)土地登記簿の添付なし。
4)財産目録、銀行残高証明などの添付なし。
5)1998年3月開所以来、2004年1月15日調べのケアハウス入所状況で市内18施設中金
の鈴のみが36室中14室の空室があり、待機者ゼロである。資金難の原因。
6)入居者不足が毎年大幅な欠損金を生じ、管理費の長期預り金を食いつぶしている。
2002年度預り金49,000,000円が計上されていない。
7)市法人監理課監査結果の改善指導にたいする「改善報告書」が平成16年2月23日期限で
求められているが、6月21日現在未提出である。
8)法人の監事監査報告書の添付なし。
市健康福祉局法人監理課は事実上この実態を放置し、是正・指導を怠っている。
3.保育所設置の問題
問題が多く社会福祉法人としての適格性に疑問がある。赤字経営に対して、多額の資金補填が必要にもかかわらず、これを是正せずにあらたに保育所設置の認可を受けている。(平成15年4月1日開所) わずか1年を経過した保育所建設及び運営についても疑問や問題が多い。
1)建設自己資金の捻出は適正か。
2)施設建設の請負については、入札により業者を決定しているか。
(社会福祉施設等整備費および社会福祉施設等設備整備費国庫負担(補助)金交付要綱
交付条件)
3)問題ある法人に認可を与えた大阪市の責任は重い。違法不当に支出された施設設備
補助金は返還させるべきである。
4)保育所調書記載不備。(平成15年度)
*監理規定制定に疑問(最低基準違反) *終業規則未制定(労働基準法違反)
*給与規程未制定 (労基法違反触) *衛生推進者不在(労働安全法違反)
*災害訓練の実施なし(最低基準違反) *消防機械器具の点検整備なし(法令違反)
*保育実施日数の記載なし *保育目標の記載なし *嘱託医との嘱託契約書なし
*給食の運営体制欄記載不備 *栄養基準量の算定記載なし
*会計書類は「資金収支予算内訳表」のみ 決算の報告書添付ほか計算書なし
*保育所職員一覧と実際の人数に差がある。
4.保育所運営の問題
1)法人の理事でもない、保育所の施設長でもない「相談役」なる人物が、事実上保育所の運
営の実権をもち人事を采配している。
2)保育所調書の記載不備で述べたように、「監理規程」「計理規程」「就業規則」「給与規程」
「旅費規程」などが設けられていない。「非常勤職員の雇用契約」も結んでいない。「時間外
労働に関する協定届」など雇用関係もほとんど規程がなく経営者のさじ加減でどうにでもなる
不安定な雇用状態である。
3)従って、保育士の定着が悪く、入所児や保護者の不安と不信を招いている。開所時の平成
15年度に就任していた保育士16人中平成16年度に継続している保育士は、園長を含む5
人にすぎない。年度途中の退職も多い。
4)また、平成15年度における保育士は16人であるが、「民間施設給与等改善適用申請書お
よび保育所職員一覧」では、18人が記載されている。(水増し人数か?)
5)非常勤職員は、雇用契約を結ぶことが求められているが、書類上では8人の非常勤職員に
対し契約書は5人分である。
6)4歳児、5歳児の合計9人のクラスは、担任が非常勤保育士のみである。
7)2歳児のクラスは最低基準以下の保育士数である。(6:1 16人/3人のところ二人最低基準)
8)保護者からの疑問、保育所の実態
@ 子どもの受け渡しが玄関先。 保護者が保育室へ入ることを禁じられている。
A 保育士が短期間で退職。担任が頻繁に交替。
B 苦情や疑問を受け付けない。区役所や市役所の児童福祉課へ訴えても即座に園に通
報され、園から非難されるので問題解決にならない。
C 給食の内容が知らされないので子どもに合った対応がされているか不安。(特に乳幼児
の食事やおやつが心配)
D 終日紙オムツ使用に不安。
E 保護者によって子どもの扱いに差がある。
F 保育士の個人的判断や意見が封じられ、すべて園の判断を仰いでいる。
G 本園から分園へ食事の運搬が心配。
H 検食が一度もなされていない。
I 子どものケガなどに対する説明がない。園の対応に誠意がない。「いやなら退園を」と言
われる。
5.分園設置認可の問題
上記のような多くの問題の解決や改善を放置したまま、平成15年度に申請した分園の設置を大阪市は認可し、さらに問題を積上げ、子どもたちに犠牲を強いている。
分園は、「保育所分園の設置運営について」(平成10年4月9日 厚生労働省児童家庭局長通知)により、本園と一体的な運営として30人規模とされている。本園と一体的な運営を条件として、本園に必要とされる屋外遊戯室、調理室、医務室などの設置が省略されている。
しかし、鈴の音保育園の経営者は、30人規模の分園を2件、ビルのワンフロアーで事実上一体として0歳児10人、1歳児24人、2歳児20人を保育している。このような施設設備や人件費を軽減した保育所の認可にあたっては、殊更法人の福祉に対する知識が必要である。
大阪市の監理責任も問われる。
6.措置請求
以上住民監査制度が求める財務会計上の違法不当行為の範疇に疑問のある事情などを述べたかも知れないが、違法不当な公金支出を証明するためには、社会福祉法人藤光会の多様な違法不当行為が開所以来継続し、改善されていないことを述べる必要がある。社会福祉法や児童福祉法等に違反する福祉法人への補助金交付は、違法不当な支出である。よって、市長に対し緊急に必要な措置を講じるよう勧告を求め、地方自治法242条1項に基づき事実証明添付のうえ請求するものである。なお、住民監査請求が規定する1年の期間徒過分については、市が是正措置を怠り違法状態が現在も継続していることから期間徒過に正当理由がある。
記
1.社会福祉法人藤光会が設置した老人福祉施設の「施設整備費」および「事業運営費」に関する補助金を返還させること。(補助金適正化法第3条違反)(大阪市民間保育所運営補助金交付要綱第3条違反)
2.福祉施設への平成16年度の運営補助金支出を差し止めること。(補助金適正化法第3条違反)
3.「鈴の音保育園」開設に関する「施設整備費」(120,969,000円)及び「運営費」(1300万円の12ヶ月 156,000,000円)に関する補助金(計:276,969,000円)を返還させること。(大阪市民間保育所運営補助金交付要綱第3条違反)
4.平成16年度の運営補助金の支出を差止めること。(平成16年保育所運営補助金交付基準1−(4)に反する)
5.社会福祉法人の認可を取り消し、各施設の経営者を交替させ、一日も早く入所者の健全な生活を保障すること。
事実証明書 別紙一覧表とおり
2004年6月23日
大阪市監査委員 様
請求人 見張り番会員 11名
(別紙)事実証明書一覧表
1.社会福祉法人藤光会、「法人調書」(平成14年度) 赤字経営状況
2.大阪市ケアハウスの入所状況 14室空室
3.「鈴の音保育園」の保育所認可申請書 補助金額
4.「鈴の音保育園」の「保育所調書」 記載不備 保育内容
5.他の90人定員保育所の「調書」(参考資料) 鈴の音との比較、特に会計書類
6.職員名簿一覧 常勤、非常勤の人数 雇用契約
7.新聞記事(4点)
8.大阪市法人監査結果の指摘事項 改善報告書の提出期限2月23日
9.大阪市民間保育所運営補助金交付要綱(平成13年4月1日改正) 補助対象
10.平成16年度保育所運営補助金交付基準 補助条件
根拠とした関係法令等
1.社会福祉法
2.児童福祉法
3.補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律
4.児童福祉施設最低基準(昭和23年12月29日 厚生省令)
5.平成15年度社会福祉法人・施設等指導監査の主眼事項及び着眼点(健康福祉局)
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