秋春制は日程の問題
【西部謙司】2009年03月26日

 Jリーグが秋春へのシーズン移行案を却下するだろうと予想し、前回のコラムでは継続して議論すべきだと書いた。そうしたら、本当に日本協会のほうで検討グループを立ち上げるという。もちろん、僕は賛成である。だが、「(積雪対策の設備投資に)本当にそんなに金がかかるのか」という犬飼会長の発言を聞くかぎり、ピント外れの感は否めない。秋春制実現へ検討するなら、焦点は日程調整しかないからだ。

 秋春制のメリットとデメリットを整理してみよう。最大のメリットは試合のパフォーマンスが向上することだ。春と秋に試合をすることについては、誰も異論はない。しかし秋と春だけでは日程を消化できないから、夏にやるか冬なのかという点でJリーグとJFAで意見が分かれている。しかし、寒いのと暑いのでどちらがいい試合になる可能性が高いかといえば寒いほうだ。これはほとんど議論の余地がない。
 また、シーズンが欧州などと同じになれば、優れた選手や監督を獲得しやすくなる。これもパフォーマンスの向上につながる。ただし、シーズンが同じになっただけで有能な人材がどれだけ流入するかは明確でないし、逆に人材流出も考えられる。ただ、現行の春秋よりも状況は良くなると思う。もう1つは、テレビ放映権。冬にスポーツイベントの目玉がほしいというテレビ側の意向があるという。
 デメリットのうち最大なのは、積雪で開催に支障が出ること。暑いより寒いほうがいいゲームができるといっても、雪上サッカーではどうにもならない。また、低気温による観客動員の落ち込みも懸念される。ほかに学校との年度違いの問題もあるが、こちらはそれほど難問ではない。何と言っても積雪対策が重要課題だろう。冬に積雪地域で試合をやろうと思えば屋根が必要だが、屋根があっても芝生の育成に支障が出る。当然、練習場にも同様の施設が必要になる。ドームスタジアムと人工芝の導入が落としどころだが、それをクラブ単独の予算でやるのは不可能だ。では、Jリーグにそれだけの財源があるかというとこれも疑わしい。
 では、秋春制移行を検討するとしたら、何を検討すべきなのか。
 まず、設備投資は諦めたほうがいい。ない袖は振れないし、J1からJFLまですべてのクラブに対策を施すのは無理で、メンテナンスも必要だから出費はどう考えても莫大なものになる。つまり、真冬にリーグ戦は開催できない。
 そうなると、日程を調整するしかないのだ。しかし試合数を減らすとクラブの収入が減ってしまう。試合数をなるべく減らさず、冬に積雪地域での開催を避けるにはどうしたらいいか。
 そもそも南北に長い日本列島で、全国一斉開催できる期間は自ずと限定されてくる。しかし地形の長さを利用すれば、1年中どこかでサッカーはできる。つまり、リーグ戦は真冬と真夏の開催を避け、リーグ期間中はカップ戦を入れない。もちろんカップ戦をやらないと試合数が減ってしまうので、夏季と冬季に集中的に行う。例えば、プレシーズンの8月に北海道・東北でナビスコカップ、ウインターブレイクの2月に九州・沖縄で同様のトーナメント(JOMOカップ?)、Jリーグ勢が出てくる段階から天皇杯を12~1月いっぱいの間に開催可能な地域でやる。それで日程が収まるかどうか、興業面でどうなのか。検討すべきはそこではないだろうか。(西部謙司=スポーツライター)

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