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堺屋太一のビデオコラム Vol.95 政局2008の課題(3)

編集部2008/01/21
求められる『明治維新型』の制度改革。それはつまり、日本の『体質の改善』と『気質の改革』なのです。何が必要で、何が必要ではないのか。外国人に依存することの多い日本文化のように、新しい倫理と美意識を積極的に吸収するべきではないのでしょうか?
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ビデオコラムよりテキスト化・一部抜粋
 ――平成になってから13人の総理大臣が出ましたが、各総理大臣とも改革を旗印にしました。しかし、現実にはそんなに変わっていない。世界がどんどんと進むのに対して、日本はどんどん遅れていく。そういう現実があるわけです。日本の経済的な地位、あるいは文化情報発信の地位、政治的な地位、それが国際的にみるとどんどんと下落しているんですね。これをどうすればよいか。そのためには日本を新しい世界の文化、知価社会に合わせるための改革が必要です。しかし、その改革というものの中にも2種類がある。これが前回お話ししたところですね。

 1つは享保の改革型。これは復古調である。そして取り締まりを強化する。今からちょうど18世紀の前半ですね。あの享保時代、8代将軍吉宗が行った改革というのは復古調、むしろ徳川家康の時代に戻ろう、そのために取り締まりを強化しよう、というほうの改革でした。その結果、日本は安定はしました。幕藩体制は安定したのですが、経済は停滞して不況に陥った。技術の進歩も止まった。人口も増えなくなった。それに対して、もう1つの改革は明治維新です。これは体制を変えた。徳川幕藩体制を全く変えた。その結果、動乱も起こりましたけれども、その後には大いに発展をいたしました。進歩・発展をした。こういう2つの改革がある。願わくば明治維新型の改革ができないものか、というわけです。

 この明治維新型の改革というのはどこが大事かといいますと、体質を変える、国の体質を変える。国の体質を変えることは国の形を変えることですね。それは国土の配置、産業の配置を変えると。例えば道州制をやるというようなことですね。府県を廃止して道州にする、というようなことが1つありますね。それから産業もモノ作り産業から知恵作り産業にしなければいけない。しかし国の形、体質を変えるためにはその根底になっている、そこで働いている機能している(人の)気質を変えなきゃいけない。気質を変えるということは何かというと倫理や美意識を変えることなんです。つまり何が正しいか、何が美しいか、この考え方を変えなきゃいけない。

 やっぱり様式美…お侍さんが裃(かみしも)を着て月代(さかやき)をきれいに剃ってきちんと座っている。これが美しい、それから外れちゃいけない、と言ってたって駄目なんですね。やっぱり新しいヨーロッパの知識、そういったものがどんどん入ってくる、それが美しいと思わなければいけない。そして何が正しいか。これは安定した社会の中で武士として務めるだけが正しいのではなくて、より人々を豊かにするための進歩が正しいんだ、改革が正しいんだ。そういう何が正しいか、何が美しいかという美意識と倫理観を変えなきゃいけないのです。これが気持ちの改革なんですね。気持ちが変わると体質、形も変えようとする。形が変わると気持ちも変わる。この2つをやっていかなきゃいかんというわけです。

 さて、これから日本が望むべき体質改革とはどんなものがあるのかといいますと、まず東京一極集中ですね。このところ21世紀になってから7、8年、まことにこの東京一極集中がすさまじい勢いで進んでいる。逆にいいますと、地方の疲弊が非常に大きい。人口も減り出しました。町もがらがらなって、シャッター通りがどんどん増えている。土地の値段も下がっている。地方にはお金持ちが行かなくなった。全部東京に吸い上げている。こういう東京一極集中から抜け出さなければいけない。そのためには道州制を敷いたらどうか、というのがいま言われています。

 道州制というのは、単に府県を合併して九州を1つにするとか東北を1つにする、とかいうことだけではありません。いちばん大事なのは国の役割。国の役割を限定する。外交であるとか国防であるとか通貨の発行とか対外通商政策とか、そういうようなことは国がやります。けれども公共事業とか福祉とか教育とか、そういったことは道州がやるんだ、そういう具合に改めようという。まさに国の仕組み、体質を変えるということなんですね。

 それから、その次に問題なのは資源多消費型。現在の日本は20世紀文明の資源多消費型の国です。資源消費型にしなきゃいけない。それにはコンパクトシティ、あるいは歩いて暮らせる街。そういうことがいいことだと考えなきゃいけない。この近代工業社会、戦後日本がずっと経済を成長させて行ったときに取った政策というのはまさに近代工業社会で東京一極に集中する、そして都心はぜんぶ商店街やオフィスにする。郊外に、住宅は遠くに。そしてその間を機械導線で長距離通勤する。これが正しいことだ、いいことだ、という感じだった。それを今度は通勤距離を小さくする。自動車や電車に乗らなくても暮らせる。そのためには住宅もオフィスも商店も、あるいは病院も役所の関係のものも娯楽地帯、1キロ四方に全部あるような街にしなきゃいけない。そういうコンパクトシティにしようという、これも1つの大きな問題です。

 それから、3番目には開かれた日本。例えばFTA、自由貿易地域ですね。こういったものも広げようとし、移民も拡大している。そういうことも考えなきゃいけない。こういうような日本の体質、殻に閉じこもったような日本、そして東京を中心とした有機型地域構造の日本、これをやめようということですね。――
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