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堺屋太一のビデオコラム Vol.94 政局2008の課題(2)

編集部2008/01/14
前回から続いて、今年の国政課題についてお話していきます。何もしてこなかったことが明確化している現実。今日本が行っていることは、即ち「盲腸の手術」なのです。江戸・明治期の改革にならい、直面する問題を抜本的に改革する必要性を考えます。
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ビデオコラムよりテキスト化・一部抜粋
――新しい年を迎えて今月はこういうテーマ、「今年何をなすべきか」というテーマでお話をしております。まず第一回には、日本は今たいへん困ったことになっている。10年前に私が書きました『平成三十年』という小説の予測がだんだん当たりだしている、とくにその中で重要なのは「何もしなかった日本」、これが非常に明確になってきているということなんですね。

「何もしなかった」。もちろん改革はどんどんやりました。しかし、その改革というのはすべて盲腸の手術のような、今ここが悪いからこれをやって治す、ここに吹き出物が出たから膏薬を貼る、そういうことであって体質の改善、日本という国・日本という社会の体質の改善であるとか、あるいは気分の書き換えであるとか、そういったことは行わずに悪いことを防いでいるだけだと。そういうふうなことを「何もしなかった日本」と、こう書いたんですね。そして現に、この10年間を見ますと「何もしなかった日本」ではないか。

最初98年、99年、あの金融不況のときにはかなり日本も頑張って変えました。金融制度も変えました。あるいは会社の買収、M&Aもできるようにしました。持ち株会社も作りました。派遣社員の範囲も広げました。その結果、いくらか日本でも自由度が広がって経済の復活は進んでいるわけですけれども、その後は郵政の改革であるとか、あるいは道路公団の改革とか、目立っているけれどもその部分だけ。つまり、盲腸の手術のようなことしかやってない。依然として体質改善ができてない、こういう問題がありますね。

ここで「改革」とか「維新」とかいろいろと言います。英語で言えば「レボリューション」【revolution】ということがいろいろ言われますけれども、その中にも2つの種類がある。このことを今日はお話したいと思います。

その2つの種類といいますのは、有名な歴史上の改革、ひとつは「享保の改革」であります。これは18世紀の中ごろですね。18世紀の前半、ちょうど徳川幕府ができてから130年、140年ぐらい経ったときに起こった大改革です。八代将軍吉宗という人が登場いたしました。この人は徳川本家ではなくて、本家の血筋、男の子が絶えたものですから紀州・和歌山の徳川家から入ってきた将軍でした。そういうような人脈の新しさもありまして、この「享保の大改革」というのを行ったのですね。

これは歴史上高く評価する人も多いんですけれども、ここに書いてありますように(ビデオ参照)「享保の改革」というのは非常に保守的な改革でした。けっして前進したものではなくて、むしろ復古調の改革で取り締まりを強化いたします。その結果、幕藩体制、徳川幕府と各諸藩ですね、こういった徳川体制が安定をした。この点は歴史学者のなかには高く評価する人もいるんですけれども、その結果、日本の経済と文化、技術は非常に停滞をいたします。その後、享保の大不況、享保の大飢饉というのがやってくるんですね。そういう安定志向、昔に戻ろう、保守化しよう、そういうような改革をしたんです。

それに対して、もうひとつの有名な改革は「明治維新」であります。この「明治維新」のときは何を変えたかといいますと、昔に戻るという復古的な改革ではなくて体制を一新する、幕藩体制、徳川幕府というのを倒してしまう。そして藩をやめて廃藩置県をする。そういう体制を一新いたしました。そのために明治の動乱、幕末維新の動乱というのがあって、一部には鳥羽・伏見の戦いであるとか戊辰戦争とか箱館戦争というような血生臭い事件もありました。しかし、その結果は大いに発展をし、進歩をした。明治からの殖産興業がどんどん進むと、そういうような状況になるわけです。

同じ改革、維新といいましても大変な違いがあります。今、日本がやっている、あるいはこれから日本がやるのはこのどちらになるのかということなんですね。これが極めて重要なポイントです。――
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