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堺屋太一のビデオコラム Vol.92 公務員制度の改革(3)

編集部2007/12/31
『悪い奴ほど出世する』このような退廃倫理がまかり通る官僚政治を、来年こそ打破 できるのか? 官僚が政治家と一緒に利益を追求する現実。 この双方の接触を絶つ手段を、英国の議会内閣制を基に考えていきます。 '08年も引き続き、『官僚・公務員制度改革』を真剣に訴えていきましょう。
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ビデオコラムよりテキスト化・一部抜粋
 いよいよ今年も年末、大晦日になりました。これからの課題、来年の課題ということで話をしておりますが、重要なのは公務員制度の改革、という問題です。これを3回連続でお伝えしております。その公務員制度のなかで、ひとつ重要なのが官僚倫理の退廃ということです。日本の官僚は倫理的に退廃しているんではないか?つまり、何が正しいことか、何がいいことかが分からなくなっているんじゃないか?という問題なんですね。

 だいたい倫理というものは腐敗と退廃があります。倫理が腐敗しているというのは、悪いと知りながら私利私欲に走ること。退廃というのは何が悪いのか分からなくなることなんですね。現在の官僚たちは、何が悪いことか分からなくなっているんじゃないか、そういう危険があるんではないかと。

 その第一は先週も申し上げました、仲間利益だけを追求すること。国家国民の利益ではなしに同じ省の仲間の利益を追求して、そのために天下り先を作ったり予算をばら撒いたり権限を振るったり、いろんなことがあるわけですね。そういうような問題が先週取り上げた重要な問題です。
その次に、無責任、無反省、失敗しても責任は取らない。今度の年金問題にいたしましても、あるいは建築確認の遅れにしても誰一人責任を取っていません。また、反省もしていないというのが第二の問題です。

 そして3番目には赤字事業をどんどん垂れ流して、それでもまた赤字事業を作る。これも仲間の利益のために国に不利益を与えるということですね。中でも問題なのは「悪い奴ほど出世する」、これをどうしたらいいか。それからもうひとつは長時間残業。生産性が非常に低い。これは自分たちが遅くまで役所にいるだけではなくて、お役所仕事といってなかなか何も進みませんね。こういう長時間残業、生産性の低さという問題があります。今日はとくにこの「悪い奴ほど出世する」、これはどうしたら止められるのかということです。

 たとえば今年、問題になりました防衛省の守屋事務次官という人がいました。この人は防衛省では「大物だ」というので、ずっと出世をして事務次官になり、ふつう事務次官は(任期が)1年か長くて2年なんですが、4年間も事務次官に君臨していた。そして前の防衛大臣である小池百合子さんが「もうそろそろあなた帰りなさい」と言ったら、大反対をして逆に小池さんのほうがお辞めになった。その後、守屋さんもお辞めになったんですが、よくよく調べてみると業者と400回もゴルフをしている。奥さんも10何回海外旅行をしている。娘さんもお世話になっている。そのうち、お祝い金までもらっていた、などということがだんだん分かってきてずいぶん腐敗していた。そういう腐敗した人がなぜ事務次官になるのか?ここが問題なんですね。

 私は、この守屋さんという人にはお目にかかったことがありませんが、10年ほど前に当時の厚生省、今の厚生労働省の次官になった岡光さんという人がいました。この人(の妻)も「おねだり妻」とか言われて、たいへん業者からお金をもらっていたので犯罪になったわけですけれども、この人も「大物だ」と言われた。私は、この人にはお目にかかったことがあるんですけれども、この人が「ゴールド・プラン」という年金プランですね、これを改革するのに持ち寄られた。それで私どもの所にも説明に来ていただいたことがあるんですけれども、「ゴールド・プランをこれをやったら国民は安心です」「何十年何百年もこの案は持つでしょう」(と言う)。「いや、どうしてそれが持つんですか?」「これではこういう破綻が起こるでしょう」ということを質問したらぜんぜん答えないんですね。そういうことはまったく分からない。そして何をおっしゃるかというと「誰々厚生大臣も賛成しています」「誰々委員長も賛成しています」「どこやらの政党も異論がありません」・・・政治家の話ばっかりするんです。

 じつは、守屋さんもそうなんですけれども、この倫理に退廃・腐敗した人が出世するというのは全部政治家なんです。政治家の人気がいいというか顔が利くんですね。これはどういうことかといいますと、なぜ「悪い奴ほど出世する」か、このことを考えていただきたいと思うんです。

 悪い奴というのはどういう人かといいますと、まず業者からお金を集めるんですね。このこと自体、犯罪です。そして情報をどんどんもらう。これは明らかに公務員法に違反しています。そしてお金を集めて自分のところへ一旦来るのではなく、口を利いて政治家に献金させるんです。したがって政治家は、この人から口利きでA社、たとえば守屋さんの場合には山田洋行という防衛省専門の商社でありましたけれども、そこから政治家にお金を出させる。そうすると政治家は、直接関係がないところからお金が来るわけですから喜びます。それでこの悪い奴が政治家に顔が利く。同時に自分もいくらか取っているんですね。政治家にもお金を渡し自分も取っている。そうすると今度は「先生、この予算お願いしますよ」「この法案、早くお願いしますよ」と言うと、政治家も「ふんふん、わかったわかった」ということになるわけです。そうすると(省庁の)内部で見ていると、「あの人がやると予算が取れる」「法案が通る」「嬉しい嬉しい」というので省内の人気はよくなるんですね。要するに悪いことをすれば政治家に顔が利いて内部の評判がよくなるという、そういう仕掛けになっている。
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