大いに揺れた「政局2007年」も残りわずか。今回の放送は、話題となった年金記録喪失問題や防衛庁職員の汚職問題から『公務員制度の改革』について詳しくお話していきます。「政治家は叩かれるが官僚は叩かれな」、この現状をどのようにして打開すれば良いのでしょうか?
ビデオコラムよりテキスト化・一部抜粋
――今年の政治はいろいろありました。夏の参議院選挙で与党・自民党、公明党が大敗をする。そして安倍総理大臣が突然の辞職をなさる。これで内閣が変わりまして初めは麻生太郎さんが有力だったんですけれども、瞬く間に逆転をして福田康夫内閣が誕生をする。と思うとその後、自由民主党と民主党との連合内閣ができるんじゃないか、大連立ができるんじゃないか、こんな話もありました。いろいろと激変があったわけですが、今になってみると延々と臨時国会が続いています。あのテロ特措法に代わる新しい法律をどうやって作るか、ここで難航しておりまして他の議題があまり取り上げられない、そんな事態に陥っています。
ところで、今年の問題として、あるいはこれからの問題として重要なものを、これからこの12月の番組で集中的に取り上げていきたいと思っています。それは、この公務員制度の改革というものです。今年は公務員の問題でもいろんな事件が起こりました。ちょっと考えてみましょう。まず、公務員の問題で最初に大きな話題になったのは年金記録の喪失5,000万件という話です。
これは長らく年金をかけてきた人たちの記録が残っていない。5,000万件ぐらい不明なものがあるというわけですね。年金をかけはじめた当初、それから30年間ぐらいかなりいいかげんなことをやってきた。かなりいいかげんな記録を取ってきた。その結果5,000万件もの年金が、誰が納めたか、本当に納めたか、どこに納めたか、ということがよく分からない。あるいは同じような名まえの人、例えば吉田茂という人がいれば、これがカタカナで書かれているから、どのシゲルさんかということがよく分からない。あるいは生年月日を記録していないものですから、住所を変わったり勤め口を変わったりしたら分からなくなる。そういうようなことが、いろいろと登場したんですね。
これが当初、今年の6月、7月頃、安倍内閣の頃には「来年の3月まで、今年度中には必ず明らかにする」と厚生労働大臣の桝添さんも、えらい張り切って言っておられたんですけれども、やがてこれが少なくとも2,000万件ぐらい、1,975万件ぐらいが名寄せが不可能だということが分かってきた。こういう問題がありました。これは政治の問題ではなしに、役人が記録をきちんと取っていなかった。あるいは取っていた記録を廃棄しちゃった。そういうような役所の問題、役人の問題であります。
その次は、最近になって今も大問題になっております建築許認可の問題。建築確認が遅れているということです。これは2年ほど前に姉歯という元建築士が偽装をした、鉄筋が入っていないのに「大丈夫だ」というような建築確認、設計をしていた。それを建築確認会社も見過ごして許可をしていた。このために建てかけのマンションをつぶしたり、いろいろ話題になりました。そういうことが姉歯・元建築士だけではなしに他にも2、3件出てきましたし、いろんな建築確認団体が見逃していた。そこで今度は厳しくやろうということで今年の6月から法改正をしたんです。
ところが、その改正した法律でどういう具合にやるのかというマニュアルが作られていなかった。そのために建築着工の許認可ができなくて、今年の10月には前年比37%も建築着工面積が減っちゃった。おかげで建築業界は大不況になりまして、いくつもの企業が倒産しましたし、建築関係で働いておられる方、大工さんとか左官屋さんとか、穴を掘る建設労務者の方が大量に失業して今たいへんに困っておるわけですね。このおかげで日本のGDP、国内総生産が1.2%も下がるという未曾有の大失策が現れました。これもひとえに官僚の怠慢と無能のせいであります。
3番目には混合医療の問題があります。混合医療というのは、健康保険でかかるような医療、たとえば入れ歯ですと39万円までの入れ歯ならいい。それから、それを超えるような医療、新しい薬を作ってくれとか、新しい医療機械を使ってくれとか、新しい医療法を執ってくれ。あるいは、昔からあるものでも保健にかからないような、先ほどの入れ歯でいいますと、エボナイトではなしにチタンを台に使ってくれと。そうすると39万円より高い50万円、60万円の入れ歯になります。そうすると39万円までは保健で出て、残りの10万円、20万円を自己負担にする。これが混合医療なんですが、現在の厚生労働省のやり方ではこれは禁止である。少しでも高いもの、少しでも新しい薬を使うと根っこから自己負担になる。こういう制度になっているんですが、じつはそのおかげでたいへん全国に大きな影響を与えましたし、日本では新薬は使えない、新しい医療器具が使えないという世界からドーンと遅れた状態になっていた。
これはじつは法律で決まっているのではなしに、役人が単独で規則……規則というのは法律、国会で通ったものでもなければ、政令……これは閣議で了解したものでもなければ、省令……大臣が決めたものでもない。一局長ぐらいが出した規則によってそういう具合になった。これはけしからん、というので東京地方裁判所で国が敗訴したんです。そういう法律の規定にはなっていない、と。そういうような重大なことを少数の数人の役人だけで決めていた。これがいいか悪いか、またこれから国が高等裁判所に控訴しておりますから、判決はまだ分かりませんけど、そういう問題も現れました。
その次は、話題になりました事務次官の逮捕。汚職であります。これは防衛省の守屋事務次官という人が、出入り業者と400回もゴルフをしていた。そのご婦人も一緒に遊んでいた。その他いろいろ便宜供与を受けていた。それでこの業者、山田洋行というところですが、それに多額の金品を払っていたのではないか。こういうような事件も明らかになりました。
その他に、もう一つ。鹿児島県で選挙違反という疑いで16人の人を逮捕しました。それで警察が言ったように「そのとおりです」と言った人はすぐ保釈されたんですが、「そんなことはしておりません」「私は無罪です」と言った人は、300日以上も拘束されました。一般の人間が300日拘束されますと、仕事も出来ないし世間でも格好が悪い。この逮捕された方の中にも、飼っていた牛がみんな死んじゃって娘さんが自殺未遂をする、というようなことがありました。ところがこれは、じつはぜんぶそういう事実はなかった。それにも拘らず、ずーっと誤逮捕を続けた。こういうようなことがありました。同じようなことは富山県でもありました。こういう具合に今年は官僚の問題がたくさん現われてきたんですね――
 |
映像の配信には富士ソフト(株)の【FSStream】を使用しています。 |
・映像配信(ストリーミング)は、Windows用「Internet Explorer 5.5以上」に対応します。ほかのブラウザ、OSには対応していません。
・初めてご覧になるときはプラグインをインストールします。「セキュリティ警告」のダイアログボックスが表示されますが、「はい(y)」を選びます。自動的にプレーヤーがインストールされ、ストリーミングがスタートします。 |
>>初めてストリーミングをご利用になる際の注意点 |
>>堺屋太一ビデオコラム
シリーズ一覧: