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堺屋太一のビデオコラム Vol.91 公務員制度の改革(2)

編集部2007/12/24
公務員の不祥事が相次いだ'07年、原因は一体どこにあったのでしょうか? 『仲間利益優先』や『悪い奴ほど出世する』官僚倫理の退廃が指摘される中、その解決策を探っていきます。官僚のエリート制度改善無くして、日本の明るい未来は見えてこないのです。
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ビデオコラムよりテキスト化・一部抜粋
 今月はこれからの課題として公務員改革ということを申し上げております。今年は公務員の不祥事、失敗、いろんな事件がたくさんございました。したがって公務員の制度の改革ということを取り上げております。そのなかで重要な問題、とくに重要な問題として二つ指摘をしたいと思います。

 ひとつは、公務員の仲間の利益。各省、財務省であるとか経産省であるとか厚生労働省であるとか、そういう各省の仲間の利益だけを追求する。国民の利益などはぜんぜん考えない。いわゆる「省益あって国益なし」と、こういう倫理がどこから生まれているか。このことが大変重要な問題で、天下り先の問題でも赤字の垂れ流しの問題でも、赤字と分かっているような事業をどんどんするというのも、すべてこの仲間の利益を追求する。

 国民の利益ではなくして、自分たち官僚がいかにしたら良くなるか、いかにしたら安楽に暮らせるか、いかにしたら天下り先が増えて退職金が増えるか、そういうことばっかりをやっているという。そして、官僚本人が「これがいいことだ」、「世の中の正義だ」と、思ってしまう。この官僚の倫理が退廃するんですね。この問題がひとつ。

 もうひとつは、悪い奴ほど出世する。今度の防衛省でも事務次官だって、4年もそのポストに君臨していたという人が大変な汚職をしていたということですが、前にも厚生省でもそのような事件がありました。いろんな役所でどんどん出世して、次官だ大物だと言われる人が悪い。悪い人ほど出世する。主としてこの二つの問題があるんですね。これをどうしたら解決できるかと、こういうことを考えてみたいと思います。

 公務員制度の問題というのはいろいろあります。まず第一に、言いました、仲間利益優先である。これは、学校を卒業して役人になるとずっと定年退職まで役人のままでいて、その定年退職後は天下りまで役所が面倒をみて、だいたい70歳位まで高給を食める。こういう制度が問題ではないかと。それから無責任体制である。仲間うちのことさえ考えていたら何の責任も追及されない。どんな失敗をしてもどんな迷惑を国民にかけても、どんな赤字を出しても責任を問われることもなければ、反省をすることもない。まったく評価制度が存在しない、これが問題ではないか。

 その次には赤字垂れ流し。たくさんの赤字の事業を国はやりました。たとえば東京湾のアクアラインにしても大赤字、四国架橋を3本かけたのも大赤字。その他、いろんな機関投資であるとか研究開発であるとか、いろんなことをして大赤字を出した。ところが、この赤字事業は始める時にはことごとく黒字だという結論でやっている。初めに結論、これをやるためにはどんな調査をすればいいか、ということをやっているんではないか。

 それから、悪い奴ほどよく出世する。汚職をしている人が事務次官になる。どこの組織でも数が多ければ不祥事を起こす人はいます。しかし、そういう人はふつうは脱落して途中で退職する。クビになるんですが、官僚にかぎってどんどん出世するのはなぜか。それから長時間労働、いつまででも役所にいる。そして、いかにも深夜まで霞が関に電気が点いているから、よく働いているようにみえるけれども、じつは効率がぜんぜん上がっていない。こういったような問題がいろいろあるんですが、そのなかでとくに仲間利益の優先、これこそ日本の官僚の最大の問題です。じゃあ、これをどうすればいいか、ということを考えてみましょう。

 次にこの仲間意識の優先、仲間利益の優先をなくすにはどうすればいいか。これは官僚共同体、官僚だけの共同体、これを崩すこと。官僚はそもそも、国のためにこういう仕事をする。そのために作られた所が官庁であり、そのために雇われ人が官僚なんですね。ところが、実際にはそうはならないで官僚たちの利益を追求している。内部だけの利益を追求している。これをなくすにはどうすればよいか。それは、何よりも内部の競争を烈しくすることなんですね。内部にまったく競争がない。だから、みんなノホホンで、内部のこと仲間のことだけ考えている人が出世するんだ。だから、これを崩すにはどうすればよいか。

 まず、第一は大学、学校を出て役人になった人が、ずーっと最後まで60ぐらいまで居る。しかも、天下りして70歳まで面倒をみられる。こういう制度を制限しまして、民間から新しい人をどんどん採る。こうすると仲間のことばかり考えていられない。仲間のことを考えていると民間の人、外から来た人にその席を奪われるんじゃないか。こういう競争をすれば、国民のためにいくらか働くのではないか。

 とくにこのエリート。エリート官僚といいまして、一種国家公務員試験に合格した人。この人たちはずーっと全員がまず課長ぐらいまでなる。そして課長ぐらいになると、ちょっとずつ差が出てきて一年に一人ずつ次官が出る。こういうようなエリート制度ができている。このエリートになったら自分たちの仲間のことさえ考えていれば出世するわけですから、非常に考え方が内向きになって国民の方に顔を向けることはない。このエリート主義を見直さなければいけないのではないか。

 その次は天下りです。天下りで役所で局長クラスまで行きますと、だいたい55、56歳から次官まで行って60(歳)前。それぐらいでドンと天下ると、そこに独立行政法人であるとか財団法人であるとか、あるいは事業団、そういうようなものがありまして、たいへん高い給与、だいたい年3千万円ぐらいで雇われる。そして自動車が付いて、秘書が付いて、自分の個室が付いている。そういうところへ行く。それで、ほとんど仕事はしないで、そこを4年か6年で退職するときにはガボッと数千万円の退職金を貰う。多い人は1億円以上貰います。そしてまた次のところへ、「渡り」といいまして次のところへ天下る。そしてそこでも4年か6年かいるうちに高い給料を貰ってまた天下る。
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