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堺屋太一のビデオコラム Vol.126 〜不況への処方箋〜

編集部2009/02/23
不況回復へのきっかけ。我々は今、この暗く長いトンネルから抜ける道を探さねばなりません。その為のいくつかの原因とその対策を、今回はお話したいと思います。今の日本に大事なのは、何よりも「信頼」だということがきっと分かると思います。
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不況への処方箋(18分48秒)

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ビデオコラムよりテキスト化・一部抜粋
 今はこの世界大不況についてお話をしています。前回、世界大不況の状況、どんな状況が今起こっているのか、その事についてお話をいたしました。今度はこの世界大不況から回復するにはどういうきっかけがあるか、回復のきっかけについてお話したいと思います。

 この1月20日にアメリカのオバマ新大統領が就任されまして、いよいよアメリカもこれから景気対策に全力を挙げるということになりました。また、ヨーロッパの諸国もそれぞれに景気回復の手を打っておりますし、日本もようやく第二次補正予算、平成20年度の第二次補正予算が通りまして、これから本予算が可決され、更にその後に21年度の補正予算が出るのではないかと、こういう状況になっております。

 世界中がこの不況と闘うために全力を挙げるという状態になっておりますが、これがどういう具合にうまくいくか、どうすればうまくいくか、その事についてお話したいと思っています。

 今、日本は大変な不況で多くの企業が赤字になっております。特に自動車であるとか、電気製品であるとか、そういった輸出産業が非常に厳しくなっております。この輸出産業が厳しくなっている背景には、円高ということがあります。この円高の事情を見てみますと、去年の2月と今年の2月3日この2つ、1年間の間の為替の動きを見てみますと、このようになっています。(図1参照)


(図1.ドル為替レート)
 日本は1年前には、1ドルが106円50銭でありました。それが今年の2月3日には89円49銭。19%ドルに対して円は値上がりしています。これよりもう1年前は更に120円ぐらいしていましたから、そこから入れますと約3割円高になっているんですね。

 世界大不況でアメリカが不況だからアメリカのドルは値下がりしているんだろう、日本ではそう思かも知れませんが、実はドルに対して値上がりをしているのは、この日本の円とそれからこの中国の元、この2つだけなんですね。中国の元が4.8%、日本が19%ですから日本がダントツ値上がりをしている。

 それに比べてヨーロッパのユーロ、これは12.8%1年間にドルよりも値下がりをいたしました。また、イギリスのポンドにいたっては27.3%値下がりしている。一時ブリックスといわれてロシアあるいはブラジルなどと言われたんですが、ブラジルも26.3%、ロシアにいたっては32.3%、大暴落をしているんです。だからドルに対してロシアのルーブルは32.3%ですから、円と比べますと19%上がっているのと32%下がっているのですからもう半分になっているんですね。それぐらい各国は金融でダメージを受けました。

 なぜ各国はアメリカからのサブプライムローンから始まった不況でアメリカ以上に下がったか、これはアメリカのお金、有り余ったお金が世界中に流れてたんですね。ヨーロッパにもイギリスにもロシアにもブラジルにも流れていました。ところがアメリカ本国が不況になってお金が足りなくなったもんですから、世界中に投資していたアメリカの銀行がドッとこれを引き上げた。世界中、外国の通貨で持っていた財産を売って、その売り上げのお金をドルに換えた。つまり、例えばヨーロッパで言いますと、ユーロで売って、そのユーロのお金を売ってドルを買う。従ってユーロ売りのドル買い、ドルが上がるんですね。

 そういう形でどんどんとドルへの資金シフトが始まりました。日本だけはですね、そもそも日本は金利が安い、金利が安かったからアメリカの投資家もアメリカでドルを買うよりは、日本で円を借りてそれを資源国、例えばロシアであるとかブラジルであるとか、あるいは中国や東南アジアに投資した方が徳だというので、日本でどんどん借金をしてそれで貸していたんですが、今度はその余裕が無くなったもんですから円スワップという、日本で円を借りて外国へ投資していたのを止めて、外国から引き上げてきた。

 例えば韓国から引き上げてきた。そうするとその円を買わなければいけない、ウォンを売って円を買わなければいけない、そういう形でこの日本の円はどんどんと値上がりした。円が値上がりしていることは日本の経済力がそれだけ高くなったことを意味します。私たちはみんな金持ちになった、ということを意味しますから日本にとっては目出度いんですけれども、輸出産業にとってはこれは大痛手です。

 大体まあ1ドルで売ったら今までだったら110円、日本円が入ったところが、今は90円しか入らないわけですから、輸出産業にとっては大変痛い。トヨタ自動車なんかは1円円高になっただけで40億円の利益が飛ぶ。だから10円なら400億円、一昨年から比べると30円くらい上がっていますから、もうそれだけで1200億円飛んでしまうと、こういう様な構造になっているんですね。

 一方、輸入産業はウハウハです。同じ1ドルで買っても90円で済むわけですから、日本の商店で外国用品を売りますと、非常に利益が大きい。これはそういう製品だけではなしに特に石油であるとか石炭であるとか、そういった原材料で効いてきますから、かなり日本の企業にはプラスに働いているはずです。そういったこの不況でございますが、いわゆるデフレスパイラル、デフレの渦巻きというのがあります。(図2参照)


(図2.デフレスパイラル)
 これはどう具合に始まったか。まず最初は先ほど申し上げました様に金融危機だったんですね。金融が危険である。銀行が、証券会社が、損をした。そうすると当然この貸し渋りになります。この貸し渋りというと、企業はお金が入らなくなりますから、下手をすると黒字倒産になる。少なくとも投資を減らしていかなけれいけない。それで投資減になりますと、需要が減る。あるいは物が値下がりいたしますから、利益が減る。それで生産を減らす。つまり、金融危機から貸し渋りになって生産減になる。実物経済に効いてくる。実物経済に効いてきますと、当然雇用を減らすということになりますし、また物を買わないことになりますから需要が減ってくる。

 そして需要が減ると物価が下がる、あるいは株式や債券が下がる。そうするとこの評価損というのが出てまいります。評価損が出てくると、企業は赤字になります。今、多くの企業が赤字決算を出しておりますが、その中にはこの評価損というのが随分沢山あります。

 そうすると経営が危険になる。経営が危険になると、不安心理でうちの会社も危ないんじゃないかというので、みなさんお金を使わなくなるので益々金詰りになってくる。その結果、ただでさえ危ない金融機関が不良債権を余計抱える。こういう循環がぐるぐる回るわけです。こういう循環が現在回って、どんどん不況になっているときに、どうやればいいか。これが問題です。
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