落ち込み続ける麻生内閣の支持率。就任時に高い支持率を持っていた歴代総理が、退任時に支持率が低下する本当の原因は何でしょうか?麻生内閣のみの問題ではなく、日本の政治構造に深く根付く『官僚主導』というキーワードを、皆さんと一緒に見つめ直したいものです。
ビデオコラムよりテキスト化・一部抜粋
図1.重点化枠
今月は「麻生内閣の命運」ということでお話しています。麻生内閣は発足して5ヶ月ぐらいでございますけれども、既にいつ解散をするのか、いつ内閣総辞職をするのか、辞めることを前提とした議論が盛んになっています。その大きな理由は、この麻生内閣の支持率の低下であります。
ご覧のように発足当時は48%の支持率がありましたけれども、すぐ支持率と不支持率が同じぐらいになり、特にこの最近11月以降となりますと不支持率がどんどんと増えてきている、支持率がどんどん下がってる、こういう状態になっています。これを歴代の内閣の支持率・不支持率そしてお辞めになったときの支持率と、こういうものと比べて見ましても既に危険水域、各内閣がお辞めになるときの水準に近くなっているんじゃないか、ここですね、こういうような数字になっている。
森内閣の終末以外はこれほど低くなったことは無いと、これは森さんがお辞めになるときの支持率ですから、そういう危険水域だということが出来ます。ではどうしてこの麻生内閣はこんなに支持率が下がったのかと、これは前回申し上げましたけど、いくつかの理由があります。第一は総理大臣のミス。漢字の読み間違いであるとか、「交付金」と「交付税」との違いが間違えたであるとか、いうようなことがあります。
二番目には発言。主張の内容がぶれる。例えば「定額給付金」は全員に早急に出すよと言いながら、実際には高所得者に制限をする。これだけで大変な手間ですから、それをやるとそう簡単に出来ない、そんな事も十分ご存じじゃあなかったんじゃないか。挙句の果てには市町村に任せんるんだ、というような嘗て無い国政放棄が出てきたりいたしました。
あるいは道路財源の一般財源化、この問題でも発言がよく変わりました。そういったとこから、第三番目に指導力が欠如しているんじゃないか、麻生内閣の特色が出せないんじゃないか、という問題があります。それを象徴しているのがこの度、去年の暮れに出来ましたこの予算なんですね。麻生内閣は予算編成に当たってこの重点枠というのを作りました。総理大臣が重点と考える枠を3330億円とった。これはかつて小渕内閣のときにも3000億円、5000億円、一番多いときには7000億円まで総理が自分で決められるお金をとった。それは大変な総理大臣のイニシアティブをとるという大事なトーンなんですけども、結果としてこれをどう分けたかと言うと、この円の通りでございます。(図1参照)
これを一見みていただくと、似たような大きさのものが並んでおります。「社会保障」あるいは「地域活性化」そしてこの「食料自給力の向上」農業農山村向け、それから「教育・研究開発費」、こういったものがそれぞれに並んでて、まあ等分に分けてるなという気がいたしますね。どれかに重点を置いていない、結局せっかく総理枠として「重点枠だと」言ったにもかかわらず、出てきているのは役人のやまどりだと、こういう印象が非常にあるわけです。そこで麻生総理大臣が本当にやりたがっている事は何なんだ、いや本当にやりたがっている事があるのか、という議論になってしまいました。このそれぞれについてまたいろいろ事情があり、苦情があり問題点があるんですけれども、官僚のバランスをとったんじゃないか、そういう疑いが持たれております。
それでは麻生内閣というのは官僚丸投げ内閣ではないか、これではいかんというのが自民党の中、あるいは世論の一部にも出てきています。そこで麻生内閣にそろそろ反省をしてもらうというか、早く言えば辞めてもらった方がいいんじゃないかと、そういう勢力がこの自民党の中にどんどん増えてきているんですね。それがここにありますこの図なんですけれども(図2参照)、これは麻生内閣に必ずしも賛成しない、麻生内閣に反対だというような人々、批判的な人々の会合です。
図2.批判が目立つ議連
まず、名前は面倒なんですが「速やかな政策実現を求める有志議員の会」これは50人入っておられます。それから二番目には「生活安心保障研究会」これには57人が入っておられます。それから「道路特定財源一般財源化を抜本的に進める会」これに29人の方が入っておられます。これを足しますと大変な数、大体140人近くになるわけですが、この中には1人で3つの会に入っておられる方が6人おられるとか、2つ入っている方がおられますから単純に足すことは出来ませんけれども、大体これで100人ぐらいのメンバーがいます。このメンバーは、そろそろ麻生さんに早く選挙をしてくれ、麻生さんの手で早く選挙をやってくれ、というと同時に麻生さんで選挙が勝てるのか、という疑問も呈しています。
世論の調査で麻生内閣の支持率が下がっているだけでは無くして、最近は自民党の支持率も下がっています。また実際にやった選挙、例えば北海道でありますとか静岡県でありますとか、これは余り大きな市ではありませんけれども、人口10万人ぐらいの市でやった選挙、これで自民党推薦の現職や県会議員が落選するという事が多くなりました。従来はこの地方選挙では、大体自民党が推薦する、そうすると相手の民主党は立てにくいというような事がありまして、特に現職、今の市長さんが出たときには楽勝でした。ところが今回はそうはなってない。
例えば北海道の北見市なんてのは、あの元幹事長の武部さんが事務局長になってやられたんですが、これは惨敗でした。そういうような事を見ると、自民党の人気が衰えている、また選挙の基盤も衰えている、こういう事があるんですね。それでこの人達はそれぞれ名前は違いますけれども、麻生さんではやっていけないんじゃないかというメンバーが出来ております。
その中で特に注目されますのは、「生活安心保障研究会」これは小池百合子さんと中川秀直さんが世話役になっています。小池さん中川さんは、先の選挙で麻生さんと対立をして、小池さんが出られたわけですけれども、そういう革新のどんどん改革をしていこう、という一派であります。このメンバーが57人おります。あの公務員改革法を推進したので有名になりました渡辺喜美さんなどもこれに加わっております。このメンバーは小泉内閣の改革、小渕・小泉内閣とやってまいりました自由改革を更に進めなきゃいけない。今、官僚指導で停滞している、これを進めなきゃいけないという主張が大事であります。
もう一つ、この上の方にあります「速やかな政策実現を求める有志議員の会」50人。これは茂木大臣、暫くの間あの公務員改革の担当、行政改革担当にもなりました若手の当選5回の茂木さんが会長になっている団体。これも50人ぐらいおります。それからもう一つこの「道路特定財源一般財源化を抜本的に進める会」これは棚橋さんとか鈴木さんとか1年生議員が多いんですね。そういうような会があります。
こういうように公然と麻生内閣の政策を非難する議員グループが出来ている。ここで注目すべきことは、この議員グループは従来の派閥ではありません。いろんな派閥の人が入っております。今や派閥はほとんど意味をなさなくなってまいりました。それに変わってこういう政策研究会の固まり、これは政治としては正しい道であり、いい事なんですけれども、そういうような集団が登場し、これを党首である麻生さんが抑える事も受け入れる事も出来ない、という事になりますね。じゃあ麻生さんはこういう党内の声に対して何で動けないのか、これが一番大きな問題です。そして恐らくその最大の理由は、この官僚の言いなり、これなんですね。