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堺屋太一のビデオコラム Vol.122 〜世界金融危機から世界大不況へ〜 第2回

編集部2008/12/22
米自動車大手が一同に破産の危機に瀕している。アメリカの住宅価格下落、そして金融機関の破綻。世界に蔓延る、この大不況の連鎖に終わりはあるのでしょうか。他の国々に比べ、安定していると思われている日本『円』。諸外国のお金が日本に流れている現在、日本はチャンスを握っています。皆さんも、日本の将来に対して自信を持って頂きたいのです。
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世界金融危機から世界大不況へ2(12分57秒)

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ビデオコラムよりテキスト化・一部抜粋

(図1.アメリカの住宅着工件数)
先週に引き続いて、この世界金融危機から世界大不況へ、という話を続けていきたいと思います。
先週お話いたしましたように、アメリカの住宅価格が値下がりした。それから始まって世界中は大不況になった。サブプライムローン―――低所得者に住宅ローンを貸して、住宅を買わして、それを値上がりするから売ればローンは返せるんだ、こういう思想で始めたんですが、住宅価格が下がったもんですからそうはいかなくなった。これがそもそもの原因です。

その結果、アメリカの金融機関が破綻に瀕する、そのために貸し出しができなくなる、これが実態経済に大きな影響を与えるようになりました。このアメリカの株価、世界の株価がどんどんとこの夏ぐらいから、6月くらいから値下がりをしてまいりした。そういうようなことも金融機関の資産を圧迫し、貸し渋りになった。これが大きな原因なんですが、その結果世界中のいろんなものが売れなくなりました。例えばアメリカの住宅着工件数をご覧下さい。(図1参照)

(図2.アメリカの自動車生産台数)
このように急激にずーっとアメリカの住宅は2006年ぐらいまでは増え続けてきたんですね。ところが2006年ぐらいから下がりだして、今や大変な低いところへ来ています。最近はこれが更に下がりまして、1960年以来最低の水準に落ちています。また、アメリカのこの自動車の販売、これも大変な勢いで減りだしました。(図2参照)2007年ぐらいには大体380万台くらい3ヶ月で380万台くらい売れてたんですね。それが今ではもう半減という、それくらいに大きく下がりました。この結果、自動車産業は大不況になった。アメリカのビッグ3(ジェネラルモータース、フォード、そしてクライスラー)このアメリカの3つの大きな自動車メーカー、3つしか無いんですが、その3社がことごとく破産の危機に瀕する、政府に支援を求めている、現金繰りがつかないというような状態に追い込まれる、それくらい急激に悪くなってるんですね。

(図3.公的資金の投入)
日本の方も御多分に漏れません。日本の住宅着工件数も、ここのところに来て非常な勢いで下がりだしています。大体まあ日本では去年、建築基準法の改正以来、ガクッと下がっているわけなんですが、ようやく回復してきていると思ったら、またドカッと日本も下がってしまいました。さらに日本の自動車、これを見ていただいても、アメリカと同様でございまして、かなりこの平成15年をピークにして下がりだしていたんですが、特にこの去年あたりから非常な勢いで下がって、今や大変な自動車不況になった。トヨタ自動車などは1兆5千億円も利益をあげていたんですが、今年は売り上げが減少したのと、そして為替が上がって外国に輸出するのが儲からなくなったというので、利益が7割減る、ひょっとしたら8割減りかもしれない、と言われるくらい自動車が不況になってます。

こういう住宅とか自動車とかいうような大きな買い物がされなくなった、これが今の非常に大きな、経済に打撃を与えているところであります。これに対して世界中はどんな対策を取ったかということなんですが、これちょっと見難いですけれど、よくご覧いただきたいと思うのですが(図3参照)、これは主要な国々がどんな対策を取ったか、これを絵で示したものなんです。この丸の大きさは使ったお金、あるいはこれから使う予定のお金ですね。いわゆる枠組みというやつですが、その大きさを表しております。

まずアメリカですね。アメリカは7千億ドル、日本円に直しますと70兆円くらいですね。これくらいのお金を用意して、これで銀行が倒れないように資金を供給するとか、あるいは住宅公社、アメリカの住宅公社の不良債権を買い上げるとか、いうような事をしています。「シティバンク」これはアメリカで1、2を争う大きな会社・銀行・金融グループですが、これにも1450億ドルという、14兆円くらいですね。資金を注入している。あるいは「AIG」これは日本でも営業している保険会社でございますが、この保険会社にも巨額のお金をつぎ込んでいる。その他、地方銀行にもお金をつぎ込んで倒産をしないようにする。アメリカは「リーマンブラザーズ」という4番目に大きな証券会社は倒産させました。政府は救助しないで見殺しにしたんですけれども、すぐその次のこの保険会社「AIG」は救済いたしました。AIG保険会社はいろんな所から損害保険、特にこの金融保険、金融が破綻したときにそれを保証するという保険をかける、そういうような絡みが多すぎて潰せない。

またシティグループはアメリカで1、2を争う大銀行ですからそんな大きな銀行は潰せない。潰すには大きすぎる、潰すには絡みすぎている。「Too big to fall」潰すには大きすぎる、あるいは「to tangled」絡みすぎている、いろんなところに影響が出すぎる、そこで潰せないというのでこういう救済をいたしました。また今、自動車産業、さっきビッグ3の話をいたしましたが、この自動車産業に公的資金を入れるかどうか、まだこれは議会で揉めております。自動車産業の経営者は、えらい高い賃金、年に数十億円の賃金を取っている、それを助ける必要がある。あるいは自動車産業の賃金が高い、他の職場よりも労働組合の協定で高い。そういうのを助ける必要は無い、一回潰してしまえ、という意見もあるんですね。そういう事も含めて今議論になっているのですが、アメリカはそういう大変大きな枠組みで救済に走っています。

ヨーロッパの方。これはヨーロッパでございますが、ヨーロッパはドイツとかオランダ・フランスそれからオーストリア、この辺はベルギーですね、この辺はユーロ圏です。ユーロというお金を使っている圏、ここでもそれぞれ相当の金額での救済を始めました。特に金融機関は潰さない、ということで金融機関への資本注入は巨大な額で進められています。

そして日本も金融機関についてはこういう法律を定めて10兆円の枠をつくりました。その他、ユーロ圏でないこのスウェーデンであるとか、デンマークであるとか、スイスであるとか、あるいはイギリスですね、これはユーロを使っていない、独自のお金、通貨を持っているんですが、それぞれ救済に走るようになりました。こういった事を全部合わせますと、なんと140兆円の枠組みで銀行は潰さないというような対策がとられています。これで一応、金融恐慌・金融危機というのは止まるんじゃないか、そういう期待がされています。ところが、この金融危機から実態経済へ進んでいった不況の方はどうなるのか、これはこれからの問題です。
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