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堺屋太一のビデオコラム Vol.121 〜世界金融危機から世界大不況へ〜 第1回

編集部2008/12/08
現在、世界は大不況に陥っています。米国の金融大混乱が招いた世界経済の大混迷。見通しがつかないこの現状を、どのように解決していくのか?長く、暗いトンネルを抜けるためのヒントを、皆さんと一緒に探っていきます。
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世界金融危機から世界大不況へ 1(13分53秒)

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ビデオコラムよりテキスト化・一部抜粋

(図1.過去1年間の各国平均株価)
今日はこの話、世界の金融危機がどのようにして起こったか、そしてそれが大不況にどうつながってきたか、これから世界の経済はどうなるか、そういうお話をしたいと思っています。

今、目下の最大の問題だろうと思います。まず、簡単に現在どういう状況になっているか、これは一番わかりやすい株価(図1参照)でございますけれども、世界の主要な株式取引所の平均価格を表しています。大体この真ん中くらいですね、この頃まではそんなに株価は下がっていませんでした。大体この7月くらいですね、6月7月くらいまではそれほど世界中下がっていません。

そこからずーっとすべての世界市場で株価が下がりだします。これが日経平均ですね、日本の株価が一番下がり率が大きいんです。それからこれがドイツでございますね。それからニューヨークダウ、そして上海。上海の株も中国の株も最高値に比べますと3分の1くらいになりました。すべてそういう具合に急激な値下がりをしています。こういうことが一体どうして起こったかということですが、そのそもそもの始まりはアメリカのサブプライムローンというものが始まりです。

このサブプライムローンとはどういうものかといいますと、所得の低い人に住宅ローンを貸して住宅を買わせるということなんですね。この根源には考え方が大変違った・・・がらりと考え方が変わったんです。そもそも住宅というものは、自動車や電気製品などの耐久消費材の大きな物だと、今まではそう考えられていた。だから耐久消費材だからだんだんと住宅は減る物だ、値打ちは下がる物だ、したがってお金を借りて住宅を建てた人は、自分の所得、ボーナスとか給与からどんどんとローンを返していくべき物だ、こう考えられていたんですね。

だから、住宅ローンを借りられる人は、その借りたお金を返せるだけの所得が無ければいけない。所得の高い人でないと住宅ローンは借りられない、自分の家は持てない。これが世界の常識でした。ところがこの21世紀の始め、今から7、8年前ですね、アメリカでまったく新しいことを考えついたんです。住宅ローンは、住宅という物はこれは財産である、投資である、だから住宅ローンを借りた人は、その元本は自分の住宅をもって返せばいい、所得から毎月、月給からボーナスから、返す必要は無い。それは金利くらい払っていればいいんで、住宅のローンの本体はそれを売って返す。だからその時に値上がりをしていれば、何もしないで住宅に住んでいられる。こういうことで、住宅ローンを借りなさいと言って、返すほどの所得の無い人、低所得者に貸した、これがサブプライムローンというものなんですね。

このサブプライムローンがうまくいくためには、住宅の値段が上がっていればいいわけです。上がっていれば中古になっても買った時より高く売れますから、売った時に物が返せる、借りたものが返せる。実際、アメリカの住宅の価格がどうなっていたか、これを見ていただきますと、一目瞭然でございます。(図2参照)

(図2.アメリカ住宅価格の推移)
ずーっと、この1992年からずーっと住宅は上がってまいりました。この赤い方は民間の調べている、本当に取引されている(数値)。こちら(青線)は政府といいいますか公的な、マイルドになっていますが、大体これが世間一般に感じられるところですから。そうしますとこの92年からずーっと値上がりが続いてきた、毎年毎年こう値上がりしている、したがって住宅ローンを借りた人は労せずしてそれを売ればいつでも儲かる、という仕掛けだったんですね。

ところがこの今年ですね、ここに来てガクッと下がりだしました。これは何故そうなったか、ちょうどこれは2005年から6年ですが、2005年から6年に下がりだした。これは石油が値上がりしたんです。石油が値上がりするとアメリカの需要が減ったもんですから、住宅を買う人が減った。それで猛烈な勢いで下がりました。そうなると住宅ローンを貸している会社は(お金が)返って来なくなる、その心配があるものですから差し押さえをしてどんどん売る、そうしますと益々下がる、こういう悪循環でこの住宅ローンが破綻をしだした。

(図3.金融危機の構図)
ところがそれで留まらないのが問題です。それで留まればよかったんですが、実はそこにこういう仕掛けが出来ていたんです。(図3参照)まずサブプライムローン、この低所得者に住宅ローンを貸す、それを集めて証券化したんですね。それぞれの人に住宅ローンを貸す、それを銀行なり金融会社が貸しているだけではなしに、その貸した債券をばさっと10万件くらいを集めて、これを1億口に分ける、そういう証券にしたんです。この証券を保険を付けた。そうすると、この格付け会社が、いま非常にはやっておりますが、これはA資格があるよ、絶対大丈夫だよ、こういう保証をしたものですから、これが世界中に売り出されたんです。

この証券化したサブプライムローンの証券、これが下がりだしたんですね。これが値下がりしだした。そうすると値下がりしたりこれが破綻したりしますと、これを買っていた金融会社、日本でも買っていた会社がありますし、世界中で沢山買っていた会社があります。その会社は自己資本が減るんですね。銀行というものは、皆さんの預金を集めてそれを他人様にお貸しする、預かった預金と貸し出した預金の差額で利益をあげる。これが銀行・金融機関という商売なんですが、その金融機関がそれをするためには、他所様からお預かりしたお金だけではなしに自分のお金も無いと信用がなりません。もし貸し倒れ、あるいは銀行が投資している証券が下がったときに自分のお金が無いんならすぐ預金が減ってしまいますから誰も信用しない。それで自分のお金を全体の8%以上持て、これが国際的な基準なんです。

ところが、このサブプライムローンが下がって金融機関が損失を出した、そしたらそこから自分が損失を出したらこの8%の自己資本が減ってしまう。そうなりますと、この8%を保つためには貸し出しを減らさなければいけない。貸し渋り・貸しはがし、という事件が起こるわけですね。

例えば仮に80億円の自己資本を持っているという会社なら、8%ですから1000億円お金が貸せるわけですね。ところがその80億円が10億円減ったら、今度はいっぺんに125億円減らさなければいけない。これでどんどんと貸しているお金を回収しだした。そしたら、そういうところから借りている会社は資金が無くなりますから、今度は各国の会社が不景気になってしまう。

もう一つは自分の国、アメリカのお金が足りなくなる、自己資本が足りなくなる、そうすると外国に投資していたものを売り払って自分の国へ持ち帰る。例えば日本でも外資系の会社が沢山(日本の)株を持っています。そういう日本の株を売って、そしてアメリカに持って帰る。そうしたら日本の株価が下がる、日本が今度は不況になる、こういう循環があったんですね。そのお陰でこのアメリカでサブプライムが崩壊する、そうしますと世界中が次々と下がりだした。で、実体経済も悪くなったというわけですね。このことは日本は10年前に経験済みです。それは1998年、あのバブルが弾けてそれが溜まりに溜まってやがて銀行が行き詰ったことです。日本のバブルが何故起こったかというと、ご存知の土地ブームです。

この、土地の値段を示したものでございまして(グラフ・ビデオ参照)、黒いのは全国平均でございますけれども、赤いのは東京圏。まず、平成元年、猛烈に上がりました。平成元年といいますと89年ですね。その頃から猛烈に土地が上がりました。そして、今度はズドンと下がった。このときに土地を買っていた不動産会社はたくさん倒産しました。そして、その不動産会社に貸していた銀行が赤字になった。これで銀行は貸し渋りを始めたので、後に日本はたいへんな不況になる。ちょうど、この平成10年頃に溜まりに溜まった不良債権が爆発をして銀行が貸し渋りになった。

ちょうどそのとき、私は経済企画庁長官として入閣をしてこの処理にあたったわけですが、それが今回の世界の危機と非常によく似ています。それで日本は何をしたか―――。この日本の経験が今、世界中で非常に学ばれているところなんですね。
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3月16日〜22日 

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