オバマ氏大統領選圧勝の背景にあった世界経済の大不況。現在のアメリカは、財政や国際収支において大幅な赤字を計上しています。オバマ新政権が掲げようとしている『閉鎖主義』。それは赤字を増やさないため、輸入量を削減するという大改革なのです。その影響によって世界の経済バランスは、この先大きく変わってくるかもしれません。
ビデオコラムよりテキスト化・一部抜粋
(図1・日経平均株価)
アメリカで初めての黒人大統領が誕生することになった。これは先週お話いたしました。この民主党のオバマ候補が圧勝した背景には経済の不況という問題がありました。アメリカの選挙戦は昨年の正月くらいからずーっと丸々2年近い歳月をかけて選挙戦をするんですが、その最初の間は一番の問題はやはりイラク・アフガニスタン外交問題・国防問題ではないかと言われていたんですね。
その点では、マケインさんというのはお父さんもお爺さんも海軍提督であり、本人もベトナム戦争に参加して海軍大佐で退役された。そういう国防問題に非常に強い人だったんですね。だから適任だと思われたんですが、それが今年の夏になりまして、急に経済問題に中心が移ってまいりました。経済が悪化した、これが現政権・ブッシュ政権の失敗だろうということでオバマさんにぐっと有利に働いたと、こういうことがあります。じゃあ経済はいったいどうなっているのか、これは今日のテーマです。
この経済の問題。これは今大変なことでございますが、これはまず「日経平均」です。(図1参照)日本の日経225の値段でございますけれども、大体今年の初めですね、大体16,000円くらいいったんです。大体日経平均というのはこういう16,000円というような値段だったんですが、段々に下がりだしました。そしてまだそれほど大きく下がってなかったんですが、この9月・10月になってドドドドッと下がったんですね。そして一番安い時には、瞬間的に7,000円を割ったこともありますけれども、大体今8,000円代、9,000円代その辺を往復しています。
一番高い時に比べると半値に近いというくらいの値下がりをいたしました。これは日本だけではありません。世界中の株式がこういう値下がりをしています。例えばアメリカの株式の代表的な指数である「ダウ平均」(ダウ工業株30種平均というものですが)これを見ますと、やはり13,000ドルくらいしてた。それが徐々に下がりまして、大体11,000ドルくらいでもみ合いをしていたんですね。ところがこの10月になりますと、ズドッと下がって今や9.000ドル代。大きく下落をいたしました。この部分、9月・10月になっての下落が大統領選挙にも重大な影響を与えたところなんです。
もっと端的に表しているのは、東洋の新興国「上海」の株であります。中国の株には一般に売買される「B株」と、されない「A株」があるんですが、これはその上海で取引されている「B株」の平均値です。これは今年の初めからずーっと値下がりをしてますね。そして値段でいいますと、5,500元から何と今は1,500元くらいになっている。大体3分の1くらい、3分の1以下になっている。これで中国で経済が成長して、小金を貯めて、株を買って、「あぁ、よかった。よかった」と言ってた勤労者が非常にたくさん失望しているという、そういう状態なんですね。
なぜ、こんなに株が下がったのか?これはもちろん、その会社の業績が悪くなった。今は利益をあげて、これこれ配当している、1株につき15円配当している、だけども来年はこれが悪化して5円になる、3円になる、そういうように見られているからなんですね。初めのうち、初めのうちというのは今年の前半です、今年の前半、経済が悪化していると言ったのは主として物価が上がっているから、特にこの石油が上がっていることが経済の問題点だと言われたんですね。
(図2・石油の値動き)
それでその石油の動き、石油の値動きについて見てみましょう。これが石油の値段のグラフなんですね。(図2参照)石油はここ去年の6月、大体60ドルでした。その前、2年ほど前は、実は20ドルだったんです。1バーレル20ドルだった。それがだんだん上がってきて去年の夏に60ドルになりました。このことがアメリカの経済を悪化させて、そして住宅の値段が値上がりしなくなった。ここからサブプライムローンの問題が始まるんですが、それからどんどん、どんどん値上がりいたします。あれよあれよという間に、元々20ドルだった、やっと60ドルになったと思ったら、今年の夏ですね、何と147ドルの天井までいきます。140ドル代。
だから数年の間に、2003年くらいから、20ドルから140ドルまで7倍に上がったんですね。石油のような大きな商品がこんなに値上がりするというのは非常に珍しい。石油危機のとき、第二次石油危機のとき、2回あったんですけれども、そういう値上がりをした。これで原材料が値上がりをする、輸送費が値上がりをする、だから会社が儲からない。このインフレによって儲からないんだと思ってた訳ですね。ところがここに来て、この秋になりますと石油の値段が大暴落をいたしまして、今や60ドルであります。
この大暴落をしたことによって、じゃあ経済は良くなったか。石油が上がったから悪くなっていたなら、値下がりしたら原材料・燃料が下がるから良くなったかというと、実はこれと調子を合わせて株が下がっているんですね。この物価の問題、これは実は今年の初めから大体3月くらいに各物価が天井をうっています。そのことを例えば小麦で見てみますと、小麦では今年の3月、これが天井でした。ここですね、今年の3月に一番高くなっている。そしてずーっとその後値下がりしてきて、今や小麦相場としては安い方になっています。
(図3・海運バルティック指数)
あるいはこういった物を運ぶものの荷動きを示す、これは世界経済の非常に基礎的な指数になっているのに「海運指数」というのがあります。(図3参照)これが海運の指数を示すのがこの「バルチック指数」と言うんですが、これはバルチック海(ヨーロッパの北のほう)から北アメリカに行く船の運賃、これを船その物を借りる運賃が指標になっているんですが、大体まあこれが世界の運賃の標準だと。
このバルチック指数が物凄い勢いで値上がりしました。そして1回調整が入るのですが、非常に高い値段、今年の5月ですねこれは。今年の5月くらいには非常に高くなったのです。だから船会社は大儲け。で、船の値段がどんどん上がりまして、今すぐ使える中古船は、これから造る新造船よりも高いというような、中古の方が新造船よりも高いという値段がついた。ところがこの5月を天井にして、瞬く間に値下がりをいたしまして、うんと安くなりました。今は海運大不況に陥っているんですね。この石油といい、食料品といい、あるいはこういう船の代金、あっという間に値下がりした。これは明らかにデフレがきたということなんですね。世界中が今デフレの危機に見舞われている、そういう状態であります。
その原因になったのが何かというと、アメリカのサブプライムローンなんです。サブプライムローンというのは、所得の低い人に住宅ローンを貸す、お金を貸して住宅を買わす。だから所得が低いわけですから、そこから月給とかボーナスからは返せない。じゃあどうするかというと、住宅の値段が上がるから、それを売ったら貸した金が返せる。10年なら10年立派なお宅にお住みなさい、そしたらむしろ利子以上に値上がりしますよ。そんなええ加減な事で貸してたんですね。そういうものが破綻した事が原因なんです。それで世界中が金融が詰まって、あっという間にふくれあがった。架空の上に積み上げられていた需要が下がりだしたのです。