建国史上初の黒人大統領誕生で沸くアメリカ合衆国。8年ぶりの政権奪還に成功した民主党。市場主義であった米経済は、より保護主義的な政策に進んでいくと言われています。
「CHANGE(変革)」を掲げたオバマ政権は、日本経済にどのような影響を与えるのでしょうか?私たちにも他人事ではありません。今後もしっかりとした対応で構える必要があるのです。
ビデオコラムよりテキスト化・一部抜粋
(図1・開票状況)
ご存知の通り11月4日に投票の行われましたアメリカ大統領選挙で民主党のオバマ上院議員が次期大統領に選ばれました。今日はこの「オバマ大統領のアメリカと世界」これはどのようになるだろうか、ということを考えて見たいと思っています。
選挙の結果は(図1参照)これは6日の午前1時現在でございますけれども、オバマ民主党の候補が27州と首都ワシントンを制しまして、349人の選挙人(これは大統領を選ぶために投票するだけの選挙人の数でございます)これを獲得されました。対する共和党のマケイン候補は163人、過半数が270人でございますからオバマさんの当選は間違いは無いと、こういう状態です。
得票数を見ますとオバマさんが52%、マケインさんが42%ということで大体投票率は62%ぐらい。前回よりも少し、前回は60%ぐらいでしたから少し高まっているというような状態です。これによってアメリカは8年ぶりに民主党の政権になりました。民主党の政権になったということは、世の中が大きな流れで変わったことを意味しています。同時に行われました上院議員の3分の1、それから下院議員全員、議会の方(立法部の方)の選挙も同時に行われました。(図2参照)
(図2)
その結果を見ますと、民主党オバマ候補の民主党上院議員で17人、下院議員で252人、上院議員は3分の1ですから従来から残っている3分の2を足しますと、民主党が100人の中で56人を占めた。それに対しまして共和党は40人である。あと4人未定があるのですが、この4人を民主党が総取りいたしますと民主党が60人になります。で、60人になりますと議事運営を手続き上合意を単独で進めることが出来る。
例えば法案を提出して議論をする。このアメリカの上院では、議員が発言している間は中断出来ないという条項があるんですね。議員が延々と丸一日ぐらい長い長い演説をいたしまして投票を阻止するとか、そういうような議事運営上の問題があるのですが、60人以上になりますとこれを中断して投票できると。民主党が非常に有利に議会を操れるというとこなんですが、そこにいくかどうかというのが1つの問題でございました。そのぐらい優勢になったということです。下院の方も252人、すでに過半数を大幅に上回っています。従って大統領も上下院議員も行政府も立法府も民主党が占めたということになります。
ところで、この民主党がこうゆう多数になってきたというのは21世紀になってからの特徴なんです。大体アメリカの歴史を見ますと民主党の時代・共和党の時代・民主党の時代、大統領選挙はいろいろ変わりますけれども、大きな流れとしてそういうものがあります。あの大恐慌、1932年の大恐慌でルーズベルト大統領が当選して以来、ずーっと大体民主党の天下が続いておりました。そしてあのケネディ・ジョンソン時代、これに至るまで大体40年間ほど民主党の時代が続いた。間に共和党のアイゼンハワー大統領が8年やりますけれども、議会の勢力・その他をしめると、大体この大恐慌から第二次世界大戦、そして戦後の時代、この時代はまさに民主党の時代だったんですね。
ところが70年代に入る頃、あのベトナム戦争が起こり、石油ショックが起こった。あの頃から民主党の人気が悪くなった。いわゆるリベラルというのは良くない。保守派の復活が行われた。そしてニクソン・フォードの時代、それからレーガン大統領の時代、そしてブッシュのお父さんの方、それからブッシュの息子さん方、この40年間大体共和党の時代で、間にカーター大統領の4年間とクリントン大統領の8年間が入りますけれども、40年間のうちで28年間がこの共和党が占める。そして議会でも共和党が多数を占める時代が続きました。
ようやくと言いますか、ここへきて前回の選挙くらいから民主党が議会で盛り返して、大統領はブッシュさんが2回やったんですけれども、だんだんと議会の方は民主党多数になってきました。で今回このように議会の方もあるいは大統領の方も全部民主党の世の中になった。ということです。
(図3)
ではこの選挙の結果、アメリカはどのように変わるだろうか、2つの問題があります。一つは初めてアフリカ系黒人の大統領がなったという問題ですね。(図3参照)初の黒人大統領が誕生した。このアメリカの歴史を見ますと、初めはずーっとワスプ(WASP)といわれる―――ワスプというのはホワイト(White)、白人であってアングロサクソン系(Anglo‐Saxon)であって、そしてプロテスタント(Protestant)である。これをワスプと言うんですが―――そういう英国系といいますかそういう方がずーっと占めてきました。
それがやがてドイツ系が入るようになった。それからその次にはアイルランド系、これはケネディ大統領ですね、そういうカトリックの人が入るようになった。そして今この黒人が入るようになった。そういう具合にアメリカの構成要素がだんだん広がってきている。この、初の黒人大統領ということで、非常にオバマさんの唱えるこの「CHANGE」、変革ということが言われています。この変革とは一体何か、これが重要な問題なんですね。
具体的に何を言っているのか。この黒人大統領が登場したことによって、白人保守派との対立が激しくなるじゃないか、一部には暗殺の危険があるというような話もございます。アメリカはそういう点では物騒な国でございまして、ケネディ大統領が暗殺されましたし、またレーガン大統領も銃弾を胸に浴びて緊急入院して一命は取り留めましたが、補佐官報道官は腰に受けてずーっと車椅子になる、というようなこともございます。そういうかなり物騒な国でございまして、そういう問題もありますけれども、暗殺でなくてもやはり保守派との対立というのが激しくなるんじゃないか。この問題が一つあります。
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