内閣改造後の、突然の福田首相辞任劇。総裁選への鼓動は、ますます高まるばかりです。揺れる日本政界と争われる議席数。そもそも『政策』ではなく『人脈』で分かれている日本の政治派閥。皆さんも今後の政治情勢から目を離さずにはいられないのです。
ビデオコラムよりテキスト化・一部抜粋
※この放送は、8月29日に収録したものです。
8月1日に福田内閣の改造が終わりまして、お盆が過ぎて北京オリンピックが終わりました。9月早々には民主党のほうの党首選挙が行われますけれども、こちらはどうやら小沢代表が無投票で再選される雲行きになっています。これで政治日程が次々に終わりまして、福田改造内閣と小沢党首の民主党、これがいよいよ選挙態勢になってきた。70日間の臨時国会があるわけですが、そこで一応の懸案を通して、そしていよいよ選挙モードになるのではないか。この年末から来年にかけてそういうような動きが感じられます。各党ともそれに備えて万般準備怠り無いという状態でしょう。今日はこの「選挙への鼓動」ということでお話をさせていただきたいと思っています。
図1.衆参・政党別議席数
さて、現在の衆参両議院、国会における勢力でございますが、これを見ていただくとわかりますように(図1参照)、衆議院においては自民党が圧倒的に優勢でありまして、全議員480人の定員の中で304人を占めています。それに与党になっております公明党の31人を加えますと、3分の2の多数。従って参議院で否決されたものも、この両党が一致いたしますと衆議院では再議決できる、3分の2の議決によって参議院の否決を上回って法案・予算・何でも通せると、こういう仕掛けになっている訳ですね。ここで問題なのは、今度臨時国会で延長しなければいけない「テロ特別処置法」、インド洋でアメリカ等の連合軍の船に給油をしているという活動ですね。これをする法案を延長するわけですが、そのためには衆議院はまず通りますが、参議院では否決される。そうすると衆議院で再可決をすればいい、3分の2の再可決をすればいいのですが、その時には公明党が賛成しないととても通りません。ところがその公明党が、この法案に対してかなり懐疑的というか、自民党と結びついているからしょうがないけれども、あまり公明党の支持者の方々からは、評判がいい法案ではないんですね。この辺が一つの問題点です。
そういったことを乗り越えて選挙になる、そうなるとどうなるか。今度は参議院の方、これは選挙はございません。去年、半分の議席が改正になったとこなんですね。その結果現在は、圧倒的に民主党が第一党です。ところがこの民主党には、ここに書いてありますように新緑風会とか国民新党とか新党日本とか、そういうのが連合して一つの団体を作って115人でございます。ところがですね、ついこの8月の末に「渡辺新党」、革新クラブとか名前は言われていますが、この民主党の中にいた渡辺秀央さんなど3人の方と、それから無所属にいた2人の方、これがくっついて5名の団体が出来ました。このミニ政党、小さな政党ですが、これが民主党のグループから外れた。そして無所属議員というのは5人います。これを合わせますと、自由民主党と公明党とこの渡辺新党の5人と無所属を合わせますと、ちょうどこれが115人になるのです。つまり民主党と同じなんですね。そうすると残りのキャスティング・ボートをこの社会民主党、それから共産党というようなところが左右される。どちらの方も多数を取れない、というような状況になる可能性が大いに出てきているわけですね。なかなか理屈通りに行かないとしても、ここは参議院は民主党が政権をとっても共産党や社会民主党が同調するとしなければ、ここで多数はとれない。自民党系、自民・公明党もこういうのを集めても多数はとれない。こういうような状態になる可能性があります。
図2.衆議院総選挙による政党別議席割合
それでこの衆議院の選挙ですが、今度衆議院の選挙をすると、この自民党は大幅に減少するだろうと思われています。これまでの自民党の得票率を見てみますと、こういう形になっておりまして、(図2参照)これは与党は赤印、野党は青印という形で公明党が途中から野党から与党に変わっているなどの問題がありますが、大体この傾向として見ますと、なかなか入ったり来たり、自民党の得票率はやや減少気味に推移しています。そういう傾向がありますが、その中でこの前の選挙、2005年の選挙、この時は小泉総理大臣の個人的な人気、歯切れのよさ、それに対する民主党側の選挙戦術の下手さ、政策の定義の不味さ等が加わりまして、自民党が大変な大勝をした。その結果今、480人の内で304人の議席をもっているわけですが、そういうような選挙だったんですね。
図3.内閣最低支持率と自民の得票率
さて、そういう大勝の後の選挙ですから、今度選挙をすれば自民党が減少することは間違いがありません。どこまで減少するか、それがいろいろ問われるところであります。これは内閣の支持率とその自由民主党の得票率を組み合わせたものなんですが、(図3参照)ご覧のように内閣の支持率が低いときは、やはり得票率が落ち込んでいます。特にこの大不況であった98年、それから2000年、この辺りでは得票率が相当落ち込んでおります。内閣支持率も落ちてますね。そういう内閣支持率との関係も見られます。で今、福田康夫内閣は決して支持率は高くありません。従ってこの次の選挙では、自由民主党がかなり票を減らすだろう。一部では、だいたい政治評論家なんかの話では、自由民主党が220から230くらい。そして民主党も同じくらい。そういうような2大政党が、いずれも過半数に届かない2大政党が出来るんじゃないか。そうなりますと公明党や社会民主党、それから日本新党とかいうような小さな政党をどう抱き込むか。こういったことが問題になると思われています。また一部には、今度は民主党が大勝するんだというような説もあります。そうなりますと政界の色が変わってくる、という問題もあります。
それから更に注目すべき問題としては、自由民主党も民主党の方も分裂するんではないか。既に先ほど申し上げましたように、参議院から民主党の参議院議員3人が渡辺秀央さんなど3人が飛び出して、無所属でいた2人と組んで、そして自民党の方に近づくだろうというような動きがあります。勿論、自民党の方にもやはり考え方の違うグループがいます。いわゆる現実的な増税派、財政均衡派と言われる人達。これは今の改造福田内閣の主流になっている方々です。それに対して中川秀直さんなど、いわゆる上げ潮派、これはどんどんと経済を発展させ、上げ潮にもっていけば増税しなくても税収は増えるんだと。そのためには、歳出をカットすべきだ。とこういう意見の人がいます。そういった中でこの選挙はどういう具合に進むか、非常に注目されるところです。
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