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堺屋太一のビデオコラム Vol.112 〜どうなる日本、どうする日本〜 第8回

編集部2008/07/21
改めて日本外交の無力さが浮き彫りとなった洞爺湖サミット。『日本には外交官がおらず、外務省職員がいるだけだ』という皮肉な声も聞こえています。本当の意味で『国際化』するには、人材の問題にまでさかのぼる必要があるでしょう。今後外国に後れを取らないよう、その最善策を熟考すべきなのです。
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堺屋太一ビデオコラム Vol.112 〜どうなる日本、どうする日本〜 第8回(16分30秒)

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ビデオコラムよりテキスト化・一部抜粋

 今、この「JanJan」で、「どうなる日本、どうする日本」というテーマでいろいろとお話をしていますが、今回は外交の問題、サミットが終わりましたので、この外交の問題を主として取り上げています。

 その中でやはり気になるのは、「惨敗、日本外交」。日本の外交はこのところ成功してないじゃないか、北朝鮮の問題も日本の頭越しにアメリカと北朝鮮が手を結んで、テロ支援国家を解除しちゃった、日本の主張していた拉致問題にはそれほどの進展は無かったのではないか。そういうような意味合いのことが言われています。問題はこの終わりましたサミットですけれども、このサミットに出席している8カ国、これが世界を本当にリードしている国なのか、それだけで話が決まるのか、これが大きな問題になりました。そしてフランスなどからは、8カ国ではなしに中国とブラジルとインドを加えた11カ国にしたらどうかというような提案も出ているようです。そうなりますと、あまり人数が大きくなると国連と同じようになりまして、肝心の話が内容が薄まってしまう。特に日本の地位が下がってくるのではないか。そんな心配もあるんです。しかし、そういう意見が出るのには、それなりの反映があること。これは前回もお話したとおりです。

 例えばもう1つ、今回新しいデータを加えますと、この世界の国々の輸出であります(資料参照)。1990年、今から18年前ですね。このときには、世界の輸出の多い順でいいますと、ドイツ、アメリカ、日本、そしてフランス、イギリス。それからこの間にオランダが入っているのですけれども、大体この上位の国々が全部サミットに入っていました。だから世界貿易を考えるときでも、確かにこの国々の意見を聞くというのは、合理性のあったことなんですね。ところが、今2007年、去年の順位を見ますと、ドイツの1位は変わりません。ところが何と2番目は中国なんですね。以前90年には13位だった中国は、今や2位になっている。で、この中国をはずして議論して、はたしていいのか。その他にもロシアはサミットに入っておりますけれども、ロシアも冷戦であまり輸出が無かったのが、今や非常に大きな資源輸出国になってきた。あるいはブラジルというような国も重要な順位になってきましたし、インドも30番目から22番目になってきた。こういうような変化を考えると、やはりこれをもう少し枠を増やした方がいいのではないか。そんな意見が出てくるわけですね。

 その次にもう1つ、「日本にとっては国際的な比重が下がっている」とよくあげられるものにODA、発展途上国に対する経済援助という数字があります。これを見ますと、昔は日本はずーっと1位でした。20世紀の間はずーっと日本が1位で、2番目がアメリカと、こういう数字が定着していたんですが、21世紀になりましてからはアメリカがぐんと伸びて、日本は伸びない。これは日本が円安になったことも1つの理由ですし、財政が厳しくなって外国援助どころかということが起こったのも1つです。

 最近少し増やしたのですけれども、それに対してヨーロッパの国々はずーっと増えてきた。今や日本の地位は1位から2位、そしてさらに下がるじゃないかというようなところにきてるわけですね。つまり、日本の国際的地位が下がる。それに伴ってそれに反比例して、中国の地位が上がる。そういったことが絡み合って、今や日本の外交的な地位がかなり軽んじられるようになってきているんではないか。北朝鮮の問題、あるいはサミットでの発言の中にもそういうところが反映しているのかもしれませんね。

 ところで日本の外交というのをもう一度検証して見ましょう。日本が外交する目的、日本の外交の目的とは何かというと大きく言われると、日本が世界の国々に好かれる国になりたい。これが漠然とした願いでしょうね。けれど具体的に1つずついうと、まず日本の国際的地位が向上すること。外務省の官僚達は、その象徴として国連の安全保障理事会の常任理事国になること。これが1番地位が向上する証であり、またそこで情報も非常に入ってくるんだ、盛んにそう言うんですね。今、国連の安全保障理事会の常任理事国は、アメリカとロシアと中国とフランスとイギリス、この5カ国。5カ国とも核保有国でもあります。そういう国々がなっているのですけども、そこに日本やドイツあるいはインドやブラジルなども入れたらどうか、という意見があります。特に日本はこれに熱心でございまして、盛んにそう主張しているわけです。

 しかし、今まで何度か挑戦いたしましたけれども、決議案を出すまでには至りませんでした。これにはアメリカがあまり好意的で無い、そして中国は反対だ。こういう2つの障壁があるんですね。このサミットの前、今年の初めにアフリカから、アフリカには53国があるのですけれども、40カ国の首脳を集めて、アフリカ会議・アフリカ開発会議というのをやって、その1つの目標にこの日本が常任理事国になるのに賛成してくれと、いうような運動でもあったわけですけれども、中々多くの国の首脳達はいろよい返事をしなかった。十数カ国は日本の加盟に積極的に賛成すると言ったのですけれども、他の国々は日本のご意向はわかりましたと言うだけで、自分が運動するとか、投票しようとか、明言はしなかったようですね。こういうことが何度も試みて成功していません。

 そもそも、国連の安全保障理事会の常任理事国に日本がなることが、それほど重要なのかどうか。外務省の職員、外交官が言うほど大事なのかどうか。これは実はそれほど認識されておりません。と言うのは、国連の常任理事国と思っている人が結構多いんですね。国連に日本はたくさんお金を出しています。国連の拠出金、国連を支える費用は、各国のGDP割り、各国生産割りですから日本は世界の1割以上もっているわけですね。だから常任理事国にしろ、というのは日本の論理なんですけれども、この常任理事国というのは国連の常任理事国では無しに、安全保障(安全保障というのは、要するに軍事紛争とか、そういう問題ですね。)それの常任理事国になるというところに、1つ論理の飛躍があります。

 例えばPKO、国連の平和維持軍というのがありますが、これにどれだけ兵隊さんを出して、どれだけその犠牲を払っているか。こういう数字を見ますと、パキスタンやバングラデシュ、イタリア、カナダなんてのは、相当大勢出しているのですが、日本はごくごくわずかなんですね。だからお金を出しているというのなら、経済社会理事会ならいいけれども、なぜ安全保障理事会かという疑問が各国から出てくるのも当然です。つまり日本の狙い目が世界中に納得できるような方向にいってないんじゃないかという疑問がやっぱりあるんですね。
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