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堺屋太一のビデオコラム Vol.110 〜どうなる日本、どうする日本〜 第6回

編集部2008/06/23
国家公務員制度改革の基本法成立。公務員共同体へ、やっとメスが入りかけています。仲間内の評判が良いと出世してしまう官僚世界。表面上では目立たなかった改革を、さらに前進させたいものです。
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堺屋太一ビデオコラム Vol.110 〜どうなる日本、どうする日本〜 第6回(17分57秒 )

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ビデオコラムよりテキスト化・一部抜粋

 「どうなる日本、どうする日本」、今日はちょっといい話をいたします。公務員制度の改革という話なんですね。私の背景に官庁の写真が並んでおりますけれども、この官庁、ここ数年、21世紀になってから急速に高層化しました。たくさんの官庁が建てられたんですね。たとえば、ここに写っておりますのは大蔵省、現在の財務省ですが、その後ろにあるのが文部科学省のビルですけれども、ここも超高層化いたしました。たくさんの官庁がいま営繕をして新しいビルになっています。その費用は1兆円ぐらいになると言われているほどです。

 この官庁をどうするか、公務員制度をどうするか。この公務員制度の改革というのは、たいへん大きな問題、かつ困難な問題だと言われておりました。公務員制度を改革するとなると、公務員の反対が予想されたからなんですね。それで去年の夏ぐらいですか、公務員制度の改革に関する懇談会、公務員制度の総合的な改革に対する懇談会というのができました。出来た時はまだ安倍内閣だったんですね。私もその懇談会の委員でございまして、座長代理というのを務め、原案作成委員長もいたしました。

 それで、この公務員をどうするかということなんですが、いったいどこに日本の公務員の問題があったのかということなんですが、その第1の問題は、この公務員の共同体化、これにメスを入れなければいけない。

 公務員は当然のことながら国の行政目的を達成するために作られた、そういう機関でございますが、実は国の行政目的を達成するよりも自分たち、官僚仲間の利益を追求する、これを共同体化と言うんですね。会社とか軍隊とか官庁とか、そういうのはある目的、会社なら利益を上げる、軍隊なら国を守る、官庁なら行政目的を達成して国民の幸せを目指す、そういう目的を持った機能組織、ある機能のために作られた組織なんです。ところが組織というものは、できると同時にその作られた目的とは違う自分の目的を持ちます。その自分の目的というのは、その組織に入っている人達がみんな幸せになる、これが目的になるんですね。

 だから、例えば会社でございますと、会社が利益を上げて株主に配当するよりも会社の社員がみんな気楽に暮らして、いい月給を貰えたらいいな、と思うのは当然ですね。軍隊ですと、国を守るという目的よりも軍人同士が大いに威張って終身雇用で気楽にいられるようにしたらいい。そのために軍人たちは国を守る目的よりも自分たちが目立つような武器を持ちたがるとか、あるいは施設を作りたがるとか、あるいは組織を大きくして師団を増やすとか艦隊を増やすとか、そういうことをして、みんな中将、大将になりたい。こういうビヘイビア(behavior=行動)が働きます。

 日本の官庁はそれが著しいものがあって、官庁の作られた目的、例えば国民の福祉であるとか公共事業であるとか財政の安定とか教育とか医療とか、そういうことよりも、その官庁の人たちがどうやったらいい所へ天下りに行けるか、いつまで高い給料が貰えるか、なるべく内部の競争がなくて気楽に暮らせるか、そういうことを考える。これはどこの組織でも起こるんですけれども、日本の場合は特にこれが著しかった。ここにどういうメスを入れたらよいかというのが大きな問題でした。

 それで、この総理大臣、安倍さんがお作りになったのですが、次の福田さん、現在の総理大臣もこれを懇談会に諮られた。懇談会の委員が私を含めて9人いたわけですけれども、だいたい懇談会とか審議会というのは、その舞台回しをする事務局の役人がいるんですね。この事務局の役人が原案を出してくる。そうすると、もうそこで役人の意見が入っているからなかなか改革はできない、重要なことではなしに端のことばっかり考えるようになる。

 それで、この懇談会の方針は全文を私が原案起草委員としてこの1月、正月休み返上で全文書きました。そして官僚の事務局には一字も入れさせない、これを皆さんの審議に諮っていろいろと修正して答申をいたしました。

 この答申が、したがって非常にラジカルな大きな急改革を書いたものだったんです。それを委員会で通して総理大臣に上げました。そこで、とてもこれは実現しないだろう、皆様方も新聞でご覧になったかと思いますが、とても実現しないだろう、審議未了で国会で流れるだろう、と言われました。また、官僚の皆さんも盛んに反対運動で根回しをいたしまして、各議員の先生方に「これだけは通さないでください、ここはこう変えなければ困りますよ、これになったら先生のところへ私たち来れなくなりますから…」と、まあいろんなことを言いまわってですね、止めにかかった。それで自民党でも民主党でも意見が割れました。

 ところが、最終的には福田総理大臣が「これはやろう」と決断をし、そして担当大臣が渡辺喜美という行政改革担当大臣なんですが、この人が一生懸命根回しをした。ようやく自由民主党、公明党の原案ができ、それに民主党、野党の方も対案を出しました。この段階では与野党の意見が一致しない、今のねじれ国会ではできないだろうと言われたのですが、究極的には5月26日ぐらいになりまして、バタバタと妥協が成立して実現した。

 つまり自民・公明と民主党が対立していたんでは、日銀の人事も道路財源の税金、ガソリン税の話もできなかった、だから今度もできないだろうと言っていたのが、妥協が成立して出来たんです。だから、妥協した点ではいろいろと不十分なところもありますけれども全体としては飛躍的な進歩であります。

 じゃあ、いったい何を改革したか、ということを申し上げたいと思うんですが、まず第1には議会制民主主義、この日本の国の体制、憲法で決められている体制は議員内閣制、つまり衆議院・参議院ですね、国会から内閣を作るという形になっています。そして国会で作った内閣が国を指導するということになっているのですが、実際には官僚が主導している。国会議員は手続きだけで、本当に法案を作ったり政治をしたり税制を決めたりするのは官僚である。この官僚主導性を止めて本当に議員内閣制にしよう、これが第1のポイントであります。

 第2番目には、官僚共同体になっている、大学を卒業して公務員試験を受けてキャリアになる、そうすると、ずーっと持ち上がって行く。その人たちだけで外から人材は入れない。そういう官僚共同体をやめて途中入社を含める、いろんな人材を採るようにしよう、とこれが第2であります。

 第3番目には官民の交流人事をする。排他的な人事を止める。つまり、役所に入ったら財務省なら財務省、経済産業省なら経済産業省、厚生労働省なら厚生労働省、そこがずーっと同じ人がやっている。例えば今、厚生労働省というのは大きな官庁になりました。福祉もやらなければいけない、年金もやらなければいけない、医療もやらなければいけない、雇用問題もある…。非常に大きな役所になったんです。ところが、いま厚生労働省のトップになっている人は1970年代に入社した人です。70年代にはまだ福祉年金も小さかったし、失業問題もたいして重要ではなかったし、老人が少ないから医療も簡単でした。だから小さな2流官庁だったんですね。

 したがって、1年間に採用される人数も厚生省で7、8人、労働省は6、7人。当時の大蔵省、今の財務省なんかは25人ぐらい採用する。農林省も20数人、当時の通産省、今の経産省も24、5人。まあ大きな官庁は1年間にキャリアを24、5人採用するのに厚生労働省は5、6人ないし7、8人しか採用しない。それぐらいの官庁だったのですが、それがそれから30年経った今、大きくなっています。

 ところが、よそから入れないものですから、厚生労働省では誰でも局長になれる。一方、業務の縮小をした農林(水産)省では、なかなか部長にもなれない。じゃあ、こっちに余っている農林水産省の人を厚生労働省の局長にしたらと(いうと)、絶対にそれはできないという制度になっているんですね。そういう排他的人事を解放して官民の流動性を高める、これが3番目であります。

 その次に4番目、これが重要なことですが、国民全体の奉仕者にする。国民全体に奉仕する人でないと、出世させない。今は国民全体に奉仕などしてたら絶対に出世しません。仲間内の評判で出世するわけですから、仲間内の評判さえ考えればいい。国民のことなど考えていたら、とても出世しません。いわゆる「国益よりも省益」、各省の益を先に考えなければいけない。これがだんだんと高じて、いろんな所で不便を起こしています。
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