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堺屋太一のビデオコラム Vol.109 〜どうなる日本、どうする日本〜 第5回

編集部2008/06/09
世界を脅かす『超石油高』。今回は、それに伴う国際問題についてお話していきます。振興工業国の経済発展や新規油田発見の減少、そしてアメリカ経済のドル安問題等が、『第三次オイルショック』を発生させてしまうのでしょうか?石油危機は、世界経済を不安定にする現象に他なりません。
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堺屋太一ビデオコラム Vol.109 〜どうなる日本、どうする日本〜 第5回(18分08秒)

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ビデオコラムよりテキスト化・一部抜粋

 今年度になりまして、「どうなる日本、どうする日本」というテーマでお話をしております。今回は、今一番問題になっている石油の値上がり、そしてそれに伴う様々な国際問題についてお話をしたいと思います。

 今、世界を脅かしているものにこの「超石油高」、石油が驚くほど値上がりしているという事件があります。どれくらい値上がりしているか、ちょっとこのグラフをよく見ていただきたいと思うのですが、これは過去50年間くらいの石油の値段をあらわした表です。まず、この初めの方を見ていただきますとほとんど2ドル以下、戦後石油は大変値下がりしてたんです。大体1920年代と同じくらいの値段。その間に第二次世界大戦がありまして、諸物価は7倍になりました。それにも係らず、石油の値段は上がっていない。逆に言うと他の物価に比べて7分の1に下がっていたのです。だから世界中で石油がたくさん使われるようになって、発電にも使われる、自動車にも使われる、化学原料としてナイロンや合成ゴムが作られる。あるいは化学肥料がどんどん作られる。これによってあらゆる一次産品が過剰になりました。

 ところが、ご存知ご記憶の方もおられると思いますが、1973年にあの「石油危機」がきまして、ドーンと値上がりをした。2ドル以下のものが14ドルになった。これで世界中が大騒ぎになりました。石油が上がったから諸物価が値上がりする。そして諸物価が値上がりするから不景気になる。そういうことがあって大騒ぎになったんですが、ややそれが落ち着いた1978年末から、今度はイラン革命があり、イラク・イラン戦争が起こり、そんなことで第二次石油危機というのがやってまいりました。

 これが79年から80年の値上がりで今度は32ドルまで値上がりしました。それからだんだんと値下がりをいたしまして、一時は10ドル代、14ドルくらいまで下がったことがありますが、だいたい20ドルを割って10ドル代という時代が長く続いた。この間に他の物価は値上がりしましたから、石油は値下がりしていたことになります。それでどんどんと石油の需要がまた増えました。一方、値段が下がると引き合わないから、石油を掘る人、探す人が減りました。その結果、だいぶ需給が窮屈になってきた。そこへもってきて最近、新興国の需要増大で石油が値上がりしだした訳です。そして、100ドルを超え、とうとう130ドルという線まできました。

 特にこの最近のところを見ていただきますと、これはごく最近の今年になってからの動きでございますけれど、90ドルくらいからメキメキと値上がりしている。ここへきてメキメキ値上がりしているんですね。その結果、皆様方のお買いになるガソリンも高くなりました。昔、今年の初めくらいまでは、まだ140円、130円というような値段でした。一時ガソリン税が4月一杯だけかからなくなった。半分だけ、ガソリン税は今52円ですが、その内の26円の暫定税率だけ下がったので、一時値下がりいたしましたけれども、5月になってこれが復活して、道路財源その他に使われるようになったものですから、税金が元に戻った。それとこの原油の値上がりと重なりまして今、石油・ガソリンは大変高い。レギュラーガソリンで、高いところでは170円、安いところでも150円、そのくらいの値段になっております。

 こういう石油の急騰、国際的な急騰というのは、石油に限らず一次産品全体に見られる大変重要な現象です。こういうことが一体どうして起こったのか。まずこの石油を初めとして穀物でありますとか、小麦とかお米とかトウモロコシですね。それから鉄鉱石・石炭、それからレアメタルといわれる、マンガンとかそういうものですね、こういうものが今、急騰しております。一体どうして、こういう資源・農産物が値上がりしているのか、この原因はいろいろあります。

 まず第一に指摘されるのは、中国など新興工業国、これが経済がどんどんと成長して、それによって需要が急増している。これが大きな理由です。たとえば中国などは経済が10%以上、毎年成長します。それに伴って、自動車の需要も増えますし、電力の需要も増える。もちろん工業用原材料にもたくさんの物が使われる。所得が高くなるものですから、食生活も向上してだんだんと肉食が増えて、そういう事が需要を高めている。中国を初めアジア諸国、あるいは東ヨーロッパの国々、そういうところの需要が増えたことが第一の原因です。

 次には、石油の新しい発見。これが減少しているというのがあるのです。ご存知のように、世界中にはたくさんの油田があって、しょっちゅういろんなところで、石油・油田が発見されたという報告があります。だいたい今、油田と名の付くものが4万5千箇所、世界中で4万5千箇所あるんですね。しょっちゅう世界中いろんなところで石油が発見されていますが、その発見される油田がだんだん小さくなってきている。大油田というのは、大体1940年代・50年代・60年代までに主として中東で発見された。これが非常に大きな油田でした。その後、メキシコであるとか、北海油田であるとか、アラスカであるとか、いろんなとこで発見されていますが、その石油油田の規模が中東に比べるとずっと小さいんですね。

 現在、4万5千も油田があるんですが、その内の埋蔵量、大体どれくらい地下に石油があるかというと、この推定埋蔵量の53%が上位100、4万5千あるうちで上位100の油田で占められているんです。その上位100の油田の中で、1980年以後に発見されたものは2つしかありません。98はそれより以前。特に1940年・50年・60年代。主として中東で発見されている。これが大きい油田でございまして、それから発見される量は減ってきた。そういう新規に発見されるものが減ってきたものですから、皆じゃんじゃん掘るよりも大切に使おうというので、生産量を増やさない。そういうような事があります。

 3番目にこういう石油の高騰の裏には、ドルの不安―――今、申し上げたのは1バーレル130ドルというドルなんですが、ドル不安というのがありましてドルの値段が下がっている。要するにドルで換算した他の物価が上がっている。それからドルとユーロ、ヨーロッパのお金、あるいはイギリスのポンド、オーストラリアのドル、そういうものとアメリカのドル、この間がだんだんアメリカドルが下がって外国の通貨が上がっている。こういう、ドルが不安だから石油も値上がりする。こういうこともあります。

 そうなりますと、投機資金が流れ込むという現象があるんですね。投機資金の流入というのは、ご存知のサブプライム。アメリカで所得の低い人に、信用度の低い人に住宅ローンを貸した。したがって住宅が値上がりしていればうまく行くけれども、値上がりしなくなるとこれを返せない。そういうようなローンをたくさん組んでいた。それが、去年から貸し倒れが続出して危ないと言われた。そうすると、そういうところへ貸していたお金は、もう住宅ローンは懲り懲りだ、というので他所へ貸し出す。じゃあ何が値上がりするか・・・、このサブプライムローンで銀行株も下がった、不景気でメーカーの株も下がった、もう株は危ない。そうなると、どうしても商品の先物に買いに入る。そして商品の値上がりを待とう、という投機資金が入ってくる。そうすると、こういう資金が入ってまいりますとますます値上がりをする。そういうような循環がある。まあ、こういう理由があります。
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