30年間停滞していると言われる日本外交。
つまり、未だに何も解決できていないのがその実情なのです。
10年ぶりの中国国家主席の来日。
特に重要な隣国との経済・外交問題の議論は、具体的な成果に向かっているのでしょ
うか?
ビデオコラムよりテキスト化・一部抜粋
今年度になってから、この「どうなる日本、どうする日本」というのを放送しておりますが、今回がその3回目でございます。今回は特に外交の問題、何も解決できない日本の外交、ということについてお話したいと思います。
つい、この5月の初め、ゴールデンウィークが明けた5月6日から中国の胡錦濤首席が来日されました。10年ぶり、前に江沢民首席が来日されてから10年ぶりの中国の首席の来日でございます。福田総理大臣、さらには天皇陛下とご面会になり、いろいろとお話をされました。前回、江沢民首席がお見えになったときは私も閣僚でございまして、会談にも晩餐会にも参加したんでございますけれども、当時にくらべるとはるかに日本と中国の関係は進んでいる。つまり、経済関係や外交関係で問題はかなり進んでいます。
ところが、その間に、胡錦濤さんがお見えになる前、江沢民さんと胡錦濤さんの間の10年間、この間には小泉総理大臣が靖国神社にご参拝になった。まあ、そんなことがありまして、日中の間は非常に政治は冷めきっていました。その反面、中国の大経済成長で日中の経済関係は非常に進んだ。だから政治は冷たいけれども経済は熱い、「政冷経熱」なんて言われたんですね。ところが今回はむしろ逆でございまして、安倍さんになり、そして福田さんになったことで中国との政治関係は改善されましたけれども、経済のほうはこのところ、去年の暮れぐらいからですね、ずーっと中国の経済が冷めてきた。日本のほうも停滞ぎみだ。そこへギョーザの問題、ギョーザに毒が入っていたというような問題がありまして、いろいろと経済のほうは冷めた関係になっている。まあ、そんな状態なんです。
そこで、福田総理大臣と胡錦濤首席との会談はたいへん期待されたんですが、結果から言いますと、こういう(ビデオ参照・資料のP3)抽象的には成功したことがたくさんあります。ところが、現実的には非常に停滞をしていると、こういう状態なんですね。まず、評価できたことは、まず戦後の日本のあり方を中国側は平和国家として経済で世界に貢献する国家として評価した、これが第一点です。
それから、環境問題でこれから技術的に協力していこう、とこういうような合意もできました。特に今年は北海道でサミットが行われます。そこで中国と日本、双方が環境問題で協力をする。こういうふうな同意ができたことは、たいへん重要なことだろうと思いますね。それから毎年、首脳が相互に交流をしよう、と。中国から日本に首脳がお見えになったのは10年ぶりなんですが、これからは毎年1回日本から行く、次の年には中国から来る、そういうような交流をしよう、というようなことが言われました。そんなことはあったんですが、成功だったんですが、いずれも抽象的で、これで「何が変わった」ということは、まったくないんです。
日中間に具体的な問題はなかったか、現実的な問題はなかったかというと、とんでもありません。たいへんたくさんあります。そのひとつは、まず東シナ海のガス田。これが、ちょうど領海の真ん中にあると。双方が「わが方の領海内にある」というのを主張しておりまして、中国がこれの開発を始めている。これについて双方が共同で開発しようという話があるんですけれども、これは「積極的に協議する」というていどで、具体的に解決するには至りませんでした。
それから、例のギョーザですね。ギョーザに限らず食の安全の問題。このギョーザの問題というのは日本も中国も、これは衛生の問題ではなくて犯罪である、「誰かけしからん人が毒を入れたのだ」と、こういう結論になりました。この点では両国とも非常に意見が一致しています。したがって、犯罪であるから、これが継続して起こることはないと、こういう認識では一致したんですね。問題はこのギョーザに入っている毒薬が日本側で入ったのか。日本に輸入してきてそこからお店へ運ばれます、この間に入ったのか。あるいは中国で生産をして日本に輸出するまでの間に入ったのか。これはどちらとも分かりません。
日本側は、日本の港に着いてから消費者の手にわたるまで、倉庫から出して運送して店舗に並べて販売する、その間で入った可能性は極めて少ない。つまり、中国で入った可能性のほうが高いと言っているんですね。ところが、中国のほうは自分たちの生産行程は完全に管理されていて、そこで入った可能性はほとんどないと、まったく意見が逆です。この問題については合同捜査を今後も続けようという話になりましたけれども、具体的な解決策はまったく見出されませんでした。このギョーザに限らず、食品の安全性という問題、これについては日本は韓国とも、あるいは米国、アメリカともいろいろ問題があります。
特に中国では、毒が入った事のほかに残留農薬とか、衛生上の管理が甘いのではないかという−−−まあ、証拠はないんです。多少まあ、そういう残留農薬が残っていたという例はありますが、人間の健康に影響するほど烈しいのは毒入りギョーザ以外はないんですけれども、なんとなくそういう雰囲気が日本側にはあります。そういう問題が十分解決されなかったという点では、これも抽象的な問題で具体化はしなかったということです。
3番目の問題として観光ビザの問題があります。これは、あまり大きく報道されておりませんけれども、中国から日本に観光に来る人がどんどん増えてまいりました。特に西日本、九州などでは中国の観光客を非常に誘致したいという意識があるんですけれども、中国側は観光ビザの発行を非常に厳しく制限している。まあ、いろんな問題があります。たとえば、観光と称して行って、もう帰って来ないで労働者になった、というような人もおりますから、そういう意味では中国の事情だけではなしに、入れる側もどんどんとそういう、勤労者で留まられては困るという事情がありますから、これは一概に言えないんですけれども。もっと中国の人たちに日本への観光を増やしてもらいたい、という意識があるんですが、この点についてはほとんど今回は議論にならなかった。日本の官僚も、あまり観光振興よりも面倒が起こらんほうがよいと思っている人が多いものですからね、(議論が)起こらなかったという点では進展がありませんでした。
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