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堺屋太一のビデオコラム Vol.106 〜どうなる日本、どうする日本〜 第2回

編集部2008/04/21
'90年代のバブル崩壊後から続く、日本の国際的地位下落。 誰が信用出来て、誰が信用出来ないのか? 失われつつある、日本全体の『信用度』。 主に政治家と官僚が招いた、社会的な『不信と不安』を取り除く方策とは?
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Vol.106 〜どうなる日本、どうする日本〜 第2回(16分56秒)

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ビデオコラムよりテキスト化・一部抜粋

図@1人当たりGDP国際順位
 新しい年度になって長期的な問題、つまり「どうなる日本、どうする日本」というテーマでこの番組を構成しております。
日本はいまどうなっているのか、そしてこれからどうすればいいのか、ということなんですね。まず、いまの日本はどうなっているのか、このことを前回は経済の問題を中心にお話をいたしました。経済的に見ると日本は国際的な地位がどんどん低下している。

 それは、前回もお持ちしましたこの図がいちばんわかりやすいと思うんですけれども。(図1参照)一人あたりのGDP、国内総生産で見ると日本は世界で第何位であるか。これで見ますと1980年には17位でした。それが、どんどんと上がって86年には5位になり89年には2位になります。そして1993年、このときは1ドルが80円を下回ったこともあるという時でございますけれども、この時になりますと人口45万人のルクセンブルクという国を除いて日本が世界一になりました。ルクセンブルクは人口45万人ですから東京の世田谷区より小さい。そういうところでございますと高い水準も出るんですけれども、それを例外にすると日本が1位であった。

 ところがこの後、バブルが崩壊してどんどん下がって、21世紀になりますと急激に低下いたします。まだ、2000年には3位に回復してたんですが、あっという間にこれがどんどん下がって18位。1980年より低くなって「もはや日本経済は一流とは言えない」という状態になったんですね。これが経済状態の大づかみなところでございますが、今日はそれに対して社会的にどうなのか、日本の社会はどうなっているのか。このことを見ていただきたいと思います。

 そこで、まず生じてくるのがこの不信と不安の日本ということです。なかなか信用されていない。とくに信用されていないのが政治家と官僚である。これが重要な問題です。
この数字をまず新聞の最近の世論調査から見てみますと、こういうような数字になっています。誰が信用できるか、誰が信用できないか。いちばん信用できるのは圧倒的に家族でありまして、家族が信用できるという人は合計で、信用できる、まずまず信用できる、と合わせて97%の人が家族は信用できると言っているわけです。

 これに続きまして天気予報。天気予報は当たるだろうと思う人はやはり94%います。天気予報というのは実は短期天気予報。明日の天気とか今週の天気というのはよく当たるんですね。けれども、ほんとうは中期天気予報、長期天気予報。たとえば、今年の夏は暑いだろうとか、雨が多いだろうとか、あるいは今年の冬は寒いだろうとか、中長期の予報はじつは当たっていません。じつに当たる率が低いんです。だいたいまあ5割か6割ぐらい。5割というと当たるも八卦、当たらぬも八卦、ぐらい(のもの)ですよね。だけど短期的な明日の天気とか今週の天気はじつによく当たります。したがって、これの信頼度は高いんです。

 続いて新聞が信頼度が高いんですね。新聞が信用できるという人も9割以上います。この新聞に比べまして、テレビはかなり信用度が落ちます。7割以下ということになるわけですが、やはりテレビで放送されたものよりも新聞に書かれたものを信用する。まあ今だにこういう漢字に対する信頼度が高い。また、新聞のほうが丁寧に構成されているだろうと思われているわけです。

 そのへんは、まずまずいいことなんですけれども、困ったのはこの下の方。信用できないという人。いちばん信用できないというのは、じつは官僚です。そして政治家です。なんと官僚は「信用できる」という人、「まあまあ信用できる」という人を合わせて18%。そして、「あまり信用できない」という人が45%。「まったく信用できない」という人がなんと35%。3人に1人以上の人が官僚の言うことは、官僚のすることは全く信用できない、官僚まかせにはできない、
と言っているんですね。

 その次が政治家で、これも「信用できる」、「まあまあ信用できる」という人が18%。信用できないという人が80%なんですけれども、こちらは役人よりもいくらか「まあまあ信用できない」のほうが少し多い。まあ似たようなものです。つまり国の政治行政をあずかる政治家と官僚がもっとも信用できないと言われているんですね。これは日本にとってたいへん困ったことです。

 国の方向を決める、国の政治を行う。これはやはり政治家なんですね。そしてその政治家というのは民主主義ですから国民から選挙で選ばれてる。そういう人たちが、もっとも権限を持っているはずの人たちが「信用できない」と言われている。同時に今までは、まあ20年ぐらい前まで、あるいは10年前でもそうだったと思いますが、「日本は政治は信用できない、政治は下手だけれども、官僚は信用できる」という人は多かったんです。だから「日本の政治は揉めていても官
僚がしっかりしているからこの国は安心だ」とそういう人がけっこう多かったんですが、この世論調査で見ると官僚はそれ以上に信用できない。こういうことになっているわけですね。

 これは最近、とくに去年ですね、去年も官僚の失敗がいろいろ出ました。たとえば年金記録を喪失している。誰が年金を払ったかちゃんと記録をしてない。これは田舎の郵便局でも銀行でもぜんぶ記録を残しているのに官僚だけは(記録を)残してないのが5千万通もあった。これは大いに驚くべきことでした。これで官僚の信用が失墜したのも当然でしょう。

 あるいは建築基準法を変えた。去年の6月に建築基準法を変えたんですが、その新しい建築基準法による建築許可のマニュアルが出来てなかった。そのために去年の7月、8月、9月、10月ぐらいまで、建築許可がガックリ落ちちゃうんですね。そのおかげで建築着工できない人がたくさん出て、仕事をできない建築会社がたくさん倒産しました。450社ぐらい倒産したんですね。そのおかげで何十万人の人が職場を失って生活に窮するというような状態が生まれた。こういう
ことは官僚でなくても、普通に仕事をしている人では信じられないようなことが起こったわけです。

 さらには、あの防衛省の事務次官をしていた守屋さんという人が、じつはたいへん汚職をしていた。ところが、そのことを内部の人は誰も言わなかった。大臣も知らなかった。そんなことが現実に起こった。そして、守屋さんという人は大物次官だといって、ふつう1年か長くとも2年で終わる事務次官を4年も続けていたんですね。こういうことは、役所の組織というのはいったいどうなっているのかと、非常に信用を失いました。その他ですね、いろいろな点で、役所の失敗というのが現われてまいりました。だから国民は公務員を信用しない、官僚を信用できない、というような事態になったわけです。

 もうひとつ、この表で特徴的なのは、昔信用していたけれども信用度が落ちたというのに、この警官と教員があります。警察は昔、非常に信用されていました。ところが最近は警察官も信用が落ちました。90年代の後半になりますと警察官の不祥事がどんどん出てまいります。たとえば、警察官に「こういう人につきまとわれているから保護してくれ」と訴えた娘さんが殺されてしまった。それまで警察はほっといた、というような事件もありました。また、最近では冤罪事件。
事実、犯人でない人を逮捕して長期間勾留をして、それで自白を求めたというようなこともありました。なかには判決まで間違っていたというのも発覚しています。別に真犯人が出てきて始めて、この人が犯人でないことが分かったということですね。

 あるいは、選挙違反の疑いで大勢の人を逮捕し、それが長い間、なかには一年近くも拘置所に入れられていた。これがまったくの嘘であった。というようなことも、わかってまいりました。いろんな面で警察は信頼を失っている。とくに犯罪の逮捕率が落ちているんですね。ひったくり事件のような、いわば小さな事件ですね。ひったくり事件のような逮捕率が5割以下になった。はなはだしい府県では2割しかない、というようなところもあります。そのために今度はひったくりを受けても、もう警察に届けないという人まで増えている。これはたいへん深刻な問題です。
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