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堺屋太一のビデオコラム Vol.104 3月政局の焦点(3)

編集部2008/03/24
白熱するアメリカ大統領選挙。勝者は世界経済をどうコントロールして行くのか?そして超大国ロシア・中国の動向も、今後予断を許さない状況なのです。目が離せない近未来・2010年。日本には厳しい情勢が訪れているかもしれません。
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3月政局の焦点(3)(14分38秒)

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ビデオコラムよりテキスト化・一部抜粋
 今月は3月の政局ということで、「3月政局の焦点」を続けてまいりました。今日は第3回目として、アメリカの大統領選挙を取り上げてみたいと思います。アメリカの大統領選挙というのは、今年の11月に投票が行われて、それで当選した人が来年の1月に就任する。まだ、だいぶ先の話なんですけど、ひとつの山場をいま迎えています。

 その山場というのは、共和党と民主党、アメリカの2大政党の候補者が決まるということなんですね。アメリカの選挙制度は直接選挙、国民が直接、大統領を選ぶ、これが大きな特徴なんですが、アメリカほどの国、人口が2億5千万人、面積が900万平方キロという大きな国、しかも世界を動かす超大国、この大統領を決めるわけですから、なかなか簡単ではありません。

 まず、どういうような仕組みで行われているかといいますと、2年前、現在の大統領が4年ですが、その真ん中の2年前に中間選挙というのがあります。これは大統領選挙を伴わないで下院を全部解散する。それから上院議員と知事さんの3分の1を替える選挙があった。

 この中間選挙が終わると、すぐ次の大統領選挙が始まるんですね。そのときにまず始まるのが共和党と民主党、そのそれぞれの候補者を誰にするか、これを決定するわけです。それでいろんな人が出ます。だいたいどちらの政党からも10人ぐらい、「我こそは次の大統領だ」と、名乗りを挙げる人が出てくるんですが、それがまったくの自由競争なんです。この段階ではまったく自由競争であります。まったく自由競争ということは、お金は使い放題、相手の悪口は言いたい放題という感じなんですね。

 で、それぞれの候補者がお金集めをします。献金を集めてテレビで広告をする、新聞に出す、全国行脚をする、飛行機を借りて、楽隊を使って、というような、もう派手な選挙をするもんですから猛烈にお金がかかるんです。この猛烈なお金がかかったあいだに、「とてもやっていけない」というのでどんどん脱落する人が出てくるんですね。それで、初め10人ぐらいいたのが5人になり4人になり、というかたちで絞られて、年が明けていよいよ大統領選挙の年になる頃には、だいたいまあ泡沫候補というのが落っこちて2人か3人に絞られる。これが現在の状況ですね。で、現在のところ、両党の候補者はそれぞれ2人に絞られました。

 民主党の方、これはご存知の黒人のオバマ氏。この方はお父さんがケニアからの移民でしたから、これは純粋な黒人でしょう。お母さんはハワイ生まれの白人です。だから、2分の1黒人ということになるんでしょうか、この人が1人。それからもう1人は、ビル・クリントン前大統領の奥さん、ヒラリー・クリントンさんです。こういう2人の候補に絞られてきました。

 当初は、このオバマ氏、上院議員なんですが、上院議員を1期務めただけ。したがっていま、上院議員3年目なんですね。非常に経験が乏しいということで、まあ候補までは行かないんじゃないか、という人が多かったんですが、どんどん人気が出てきました。その人気が出てくる背景には、ものすごいお金があるんです。

 この人の献金がですね、たいへんな金額――日本円で言いますと300億円ぐらいの献金が集まっているんですね。それでコマーシャルは打つは、非常に派手な選挙運動をした。ちょっと、黒人候補という感じからすると、日本ではそう思われませんが、じつはものすごい金権なんですね。それは、極めて零細な2ドルから10ドルぐらいの献金が集まる。これが今のインターネット社会の特徴なんですね。インターネットを通じて振り込み手数料が要らないようなかたちで、非常に少額の献金を集めたらドッと集まってるんです。これがオバマさんの強みなんですね。

 クリントンさんもお金は相当集めています。なにしろ夫のビル・クリントンさんは8年間大統領をやったわけですから、人脈はたいへん厚いものがあります。知名度も圧倒的です。したがって、お金がずいぶん集まったんですが、途中からこのオバマ氏に追い抜かれる、資金的にややショート(不足)する、というような状態なんですね。

 このお金の使い方が日本とはケタ違い。日本の衆議院議員選挙の何倍もお金を使う。それで、お金が集まることが自慢なんです。「私にはこれだけ献金してくれる支持者が多いんです」。これを毎週、「なんぼ集まりました」「何日間で何円集まりました」「ほら、また集まりました」と、これをどんどん放送するんですね。そうすると、「ああ、そんなに信者がいるのか」と。お金をもらって運動する人は不確かですけれども、お金を献金する人はほんとの支持者だ、ということで、ほんとにまあ、お金が集まったというんですね。そういう関係でいまオバマ氏というのが非常に優勢になってきている、そういう状態です。

 いっぽう共和党のほうは、マケイン氏とハッカビー前アーカンソー州知事が残っています。票数からいうとマケイン氏が圧倒的優勢でございまして、たぶんこの人になるだろうと言われています。この、前アーカンソー知事のハッカビー氏というのは超保守派、牧師さんで非常に厳格なキリスト教を守ろうというキリスト教原理主義のような感じの人なんですね。だから、「妊娠の途中で中絶するなどけしからん」というような思想の持ち主です。

 これに対しましてマケイン氏というのは共和党のなかでは、ややリベラルのほう、現在のブッシュ大統領から見るとややリベラルのほうですが、ブッシュ政権を支持しまして、あのイラク戦争、イラクへの出兵なんかも支持しています。そういう意味では、経験豊かな国際派でございまして、長らく20年以上、上院議員を務めています。

 もともとは海軍の軍人さんです。海軍の、日本でいう兵学校ですね、海軍の士官学校を卒業されましてベトナム戦争に行って、それで戦闘機に乗って撃墜されて捕虜になって6年間捕虜生活をしたという苦労人なんですが、それでベトナムが停戦になって戻ってきて政治家になった。現在は71歳、かなり高齢ですね。アメリカの大統領としては、初めて就任する大統領にしてはいちばん高齢だと思います。2度目に就任したのでは、前のレーガンさんが75歳で就任した例がありますけれども(1度目では)かなり高齢です。

 そういう意味で、このマケインさんというのは非常に伝統的な政治家タイプですね。それに対してオバマ氏というのは経験も上院議員の経験がやっと3年。したがって、未知数のところが非常に多いわけです。このどちらが、誰が当選するか今のところ予断を許しません。しかし、これが誰になったら日本にどういう影響があるのか、このことをそろそろ議論しなくちゃいけないですね。
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