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堺屋太一のビデオコラム Vol.103 3月政局の焦点(2)

編集部2008/03/17
前々から叫ばれ続けている『公務員制度改革』。 日本の公務員(官僚)は一流、いや、もはや二流でさえないのでしょうか? 公務員自身の幸せが優先される独自の組織は、終戦時期の軍組織と全く変わりませ ん。 日本にとって、国家公務員の官僚共同体化は早々に解決しなければならない問題なの です。
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ビデオコラムよりテキスト化・一部抜粋
 戦争をやってみると、軍人さんは全然賢くなかった。なぜかというと、軍人共同体のために、軍人を良くするために、軍部の力を強くするためだけに働いていたんですね。そして最後になると「一億玉砕」と言い出しました。全国民を死に至らしめるほど悪いことはありません。それを悪人でも阿呆でもない軍人が真剣に言ってたんです。「陸軍が滅ぶぐらいなら日本人は皆、死んだほうがいい」。ほんとにそう思ったんですね。今、日本の官僚もそうなってきています。それを「変えなきゃいかん」というのが、この公務員制度の改革の問題なんですね。

 そこで登場したのが3つ、改革をしろということです。第一は議員内閣制にしよう。今までは官僚が優先していたけれども、やっぱり内閣がリードをして、大臣がほんとうに役人を使うようにしようではないか、ということです。それはどういうことかといいますと、ここにその図(ビデオ参照)があるんですけれども、日本もイギリスも同じように議員内閣制です。議会で選ばれた総理大臣が、主として議員――まあ、私もそうでしたけど例外的に民間で議員でない人もいますけれども過半数が議員。そういう内閣を作ろうという制度なんですね。

 ところが、日本とイギリスとでは全く違います。イギリスの場合は、ここにございますように、内閣が真中に、総理大臣とか大臣が真中におりまして、それが国会に対しても官僚に対しても命令をし、答弁をする。国会から問題が提起されたら全部内閣が受ける。そして内閣が、つまり大臣や政務官がこれに答弁をする。それで、官僚に命令をして、「こういうのにはどう答えたらいいか、おまえ案を持って来い」と、こう言うわけなんですね。

 国会の議員と官僚、これは直接接触できません。間に必ず内閣が入って、今どんな問題がどういう回答をされているか、全部この大臣、総理が把握する仕掛けなんです。ところが日本は逆でございまして、真中に官僚がいます。で、国会からも官僚にいろいろと注文をつけ、官僚が国会に根回しをする。で、内閣にも官僚が根回しをする。だから何がどうなっているのか分かるのは官僚であって大臣は分からないんですね。この制度をイギリス型にしなければならない。日本型の制度をイギリス型にしなければいけない。これが第一の問題なんです。

 第二の問題は、このキャリア制度です。日本の官庁にはキャリア制度というのがありまして、この第一種公務員試験で合格すると、ずーっと出世しちゃう。だいたいまあ、各省20人ぐらい入るわけですが、20年経つと全員が同じ年に課長になるんです。そこから先はだんだんとポストが減ります。局長になるのは約半分、次官になるのは一人ですが、その間は何で決まるかというと役所のなかの評判で決まるんです。これがキャリア制度です。このキャリア制度を変えなきゃいかん。それで考えられたのがこれ(ビデオ参照)なんです。

 今のキャリア制度は合格したらズドンと、どこまでもキャリアで行くわけですけれども、今度の職種ではそうはさせない。この総合職――これが今の第一種試験に合格した方々ですが、これで入ってもどんどんと減らして、そしてこの専門職や一般職、あるいは民間から入った人を付け加えて、生え抜きで課長になる人は全体の半分ぐらいにする。他は、途中から、一般職で入ったけれどもよくできる、あるいは専門職で入ったけれども総合職な知識がある、あるいは民間企業に勤めていたけれども優秀だ、公務員になりたい、そういう人をこちらに付け加える。そうすると、のほほんとしていたらどんどん脱落しますから、ほんとうに優秀な人、やる気のある人がいいんです。これが第二の改革です。

 第三の改革というのは、そうするためには人事を一元管理しなければいけない。この人事庁、内閣人事庁を使うというので一元管理をするのだ。今は、財務省に入った人は財務省ばっかり、経産省に入った人は経産省ばっかり、外務省に入った人は外務省ばっかり。だから他所の官庁でどんなに評判が悪くても外務省のなかで、財務省のなかで、経産省のなかでの評判さえ良ければいい。だからもう自分の周囲の共同体ばっかり見てる。国民からどんなに非難されてもそんなことは全く関係ない。いろいろ失敗した人でもどんどん出世しているんですね、現実に。それはよろしくないから一元管理をして、あの人はここでこんな評判だ、この人は海外に出た時こんな評判だ、この人は地方自治体ではこんな評判だ、そういうことを積み上げて、その中で優秀な人を大臣の地位につける。こういう制度にしようというわけです。

 こういう提案に対して今、官僚たちが猛抵抗をしているんですね。その官僚の言い分を聞いてみましょう。まず、官僚が議員をまわってはいけない、官僚が議員をまわるときには大臣の許可を取れ、こういうことにすると、「議員は情報不足だ」「知恵があるのは我々だから我々が行ってやらないと議員はダメになる」というわけですね。これに対して今の改革制度はちゃんと答弁を用意しておりまして、それは「大臣の許可で統一的に方針を打ち出せる」ということです。大臣が役人に「じゃあ、こういう問題なら、この先生のところへこういう資料を持って行っていいよ」という時は行っていい。だから、大臣の意向に反する物は持って行ってはいかん、ということがきちんとできる。そうすると情報不足にならないで内閣・大臣の方針が貫けるのではないか。これが第一点です。

 二番目は「キャリア制度でないといい人が来ない」というわけです。入った時に「20年経ったら課長にする」「30年経ったら局長に」「70歳までに必ず天下りして高給を与える、だから優秀な奴が来るんだ」と、役人たちはそう言うんですね。これに対して、この改革案では逆に考えています。つまり、競争をして途中で脱落するようなら怖くて行かない。そんなのはいい人材ではないんだ。自信を持って、競争があっても俺は生き残るように頑張る。天下りしなくても優秀な人材として選挙にも出るか、弁護士になるか、民間で働くか、コンサルタントになるか、そういう能力があるから、だから生き残ったという人がほしい。そんな「70歳まで天下りを保証してくれないと嫌だ」というような人は人材じゃないんじゃないか、という議論ですね。

 そして三番目には人事庁の管理。これは、「人事庁という、直接勤めているところと違う人が評価するのでは人事ができなくなるのではないか?」「知らない人が人事をするようになっている」というのですが、これはまた誤解でございまして、大臣は内閣の一員として内閣が管理するのは当然で、それは成績は、その時、この2年間財務省でどうだった、この2年間地方自治体に出向してどうだった、この1年間国連に勤めてどうだったか、それは国連の人、地方自治体の人、財務省の人が記録をしてこの人事庁に登録をして、それを見て大臣が決めるのだ。けっして遠くから知らない人が評価するのではありません。

 こういうことになっているわけですが、とにかく役人は大反対ですね。まさに今、あらゆる国会議員のところに、役人たちがいろんな書いたものを持って走りまわっているんですよ。まさにここですね、根回しを自分でやると。これがどうなるか、日本の命運がかかった大問題だと思います。ぜひ、皆さま方もこの問題に注目していただきたいと思います。
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