政治  
トップ > 政治 > 堺屋太一のビデオコラム Vol.101 スタグフレーションの黒い影(3)

堺屋太一のビデオコラム Vol.101 スタグフレーションの黒い影(3)

編集部2008/03/03
今、日本ほど株価が下がっている国は他にありません。経済財政担当大臣の「日本経済はもはや、一流とは言えない」宣言。“東京土地ブーム”にもかかわらず続く、『超低金利・賃金所得減少』時代。今回は、歪な日本の経済状況を3つの視点からお話します。
NA NA NA


ビデオコラムよりテキスト化・一部抜粋
 日本では、「不況の始まりはアメリカである」「サブプライムローンの影響で日本が不況になったんだ」と言っていますけれども、実は日本の株がいちばん値下がりしているんです。これが大問題です。アメリカもドイツも中国も最近悪くなっているけれども、日本ほど株価が下がっている国、これは実はないんですね。日本の株価もずいぶん前と同じくらいに、この何年間に値上がりしたものを全部吐き出してしまいました。ではいったい、日本の不況(の原因)はどこにあるのか。このことを今日は研究してみたいと思います。

 まず、日本のこの9年間(ビデオ参照)は長い好況だと言われました。「イザナギ景気を抜いて史上最長の景気回復、景気上昇だ」などと政府は言っています。ところが今年の1月18日、大田経済財政担当大臣は「日本経済はもはや一流とは言えない」と宣言いたしました。政府の高官が「日本経済は一流とは言えない」「もう二流国になった」と告白したのは誠に情けないことですけれども、率直な表現に違いありません。

 なぜ、そうなったのか。まず、ここ数年間、「日本は景気が良くなってきた」と言っていたのは何かといいますと、まず輸出の好調です。アメリカ向け、そして中国・アジア向けの輸出がかなり好調だったことが大きな理由です。

 そして、もうひとつは東京の都心部です。東京のなかで特に東京の都心部、千代田区とか港区とか渋谷区とか中央区とか、そういったところの土地が値上がりした。この土地の値上がり。ずーっと土地が下がってきたんですが、21世紀になりまして土地が値上がりをした。ただ、値上がりをした地域が非常に狭いんです。あの田中角栄さんが「列島改造」というのを言いました。このときも土地が値上がりしました。このときは日本列島の十分の一。日本列島は37万平方キロありますが、そのうちの3万7千平方キロぐらいの土地が値上がりしたというのです。

 それから(もう一度値上がりしたのが)バブルの時。この時はずっと狭くなって、日本全体の百分の一、だいたい3千7百平方キロぐらいが値上がりした。山林とか農地とか工業用地は、あのときはあまり値上がりしなかった。値上がりしたのは住宅用地とビル用地、これが値上がりしたんです。

 ところが今回の値上がりはさらに小さくなって千分の一、370平方キロぐらい。東京のなかでも値上がりしている所というのは、都心部のいい所、商業地域、そして高級住宅地、それから名古屋市の一部と大阪市の一部。地方はずーっと値下がりしているんですね。だから本来の土地ブームではなしに、「東京土地ブーム」である。これで東京の不動産に投資したリート(REIT)、不動産投資ファンドのことですね。これはかなり上がりました。この輸出の好調と「東京土地ブーム」で、企業の利益は大いに上がったんです。だから株価も先ほど見ていただきましたように徐々に上がっていました。

 ところがですね、この企業利益が上がっているにもかかわらず日本はまず第一に超低金利です。ご存知のように預金金利はほとんどゼロに等しいですよね。0.3%とか0.35%というような、百万円預けておいても年に3,500円ぐらいしか利子が付かない、そういう超低金利です。したがって、個人の所得はいっこうに増えません。もうひとつは、賃金、所得。これがぜんぜん増えないんです。もちろん、一部の人は非常に賃金が上がっています。けれども全体として見ますと、賃金を貰う人の中で、派遣とかあるいは日当で貰う人、アルバイトの人、そういうような非正規社員の比率が増えていることで、全体としての賃金所得は停滞からむしろ減少しています。したがって、消費はぜんぜん伸びません。消費が伸び悩んでいる。企業は利益が上がっているけれども個人の消費は伸び悩んでいるんですね。
FSSTREAM 映像の配信には富士ソフト(株)の【FSStream】を使用しています。
・映像配信(ストリーミング)は、Windows用「Internet Explorer 5.5以上」に対応します。ほかのブラウザ、OSには対応していません。
・初めてご覧になるときはプラグインをインストールします。「セキュリティ警告」のダイアログボックスが表示されますが、「はい(y)」を選びます。自動的にプレーヤーがインストールされ、ストリーミングがスタートします。
>>初めてストリーミングをご利用になる際の注意点

>>堺屋太一ビデオコラム

シリーズ一覧:

記者会員メニューにログイン

記者ID

パスワード


ネットニュース JanJan

JanJanとはQ&A報奨制度個人情報保護方針編集局へのメッセージ会社概要

JanJanに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。全ての内容は著作権法並びに国際条約により保護されています。
Copyright © 2002-2009 JAN JAN. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.