一方、〇六年に近藤正晃ジェームス東京大学特任准教授(日本医療政策機構副代表理事兼事務局長)らが、医療に対する患者の要望を集約しようと、がん患者一一八六人に対してアンケート調査を行った。 同調査によると、いわゆる「がん難民」を「治療説明時に不満、または治療方針決定時に不納得を感じたがん患者」と定義した場合、全国のがん患者の五三%を占めると推計できるという。 近藤准教授は、〈これは、日本のがん患者一二八万人に当てはめると六八万人に相当する。このうち、治療方針決定時に納得しなかった患者のみを抜き出すと、がん患者の二七%の三三万人に相当することもわかった。がん難民は、特定の性別や年齢層に集中しているわけではなく、また、がんの種類や進行度(病状)にもよらないことも確認された。つまり、こうした属性とは関係なく、あらゆるがん患者が、がん難民化する危険がある。がん難民は進行度の進んだ患者だけの問題であるという認識は誤りである〉(「週刊東洋経済」〇七年一月二七日号)と指摘。 「患者本位」という美辞麗句の裏で、依然として「医者上位」「説明不足」という悪弊がはびこるわが国のがん医療に対し、一石を投じる形となった。 同調査によれば、がん難民の九一%が、日本のがん医療に対して「不満がある」。不満は、上から順に、「行政による治療薬承認(九五%)」、「病院や医師の質についての情報開示(八七%)、「心のケア(八一%)」だった。
|