国内最大のポータルサイト「ヤフー!ジャパン」。1日平均19億のアクセス数を誇るサイトのトップページに、8本の注目ニュースを掲載した「トピックス」と呼ばれるコーナーがある。トピックスに取り上げられると、関連サイトが急激なアクセス増でパンクすることも少なくない。経済記事の取り上げられ方次第では株価にも影響を与える、わが国最強のネットニュースだ。いったい誰がどうやって作っているのか。
[フォト]なつかしい…過去のヤフートップページギャラリー
刻一刻と入れ替わる8本のトピックスは、コンピューターが自動で更新しているのではない。窓の外に東京タワーを望む六本木の超高層ビル、東京ミッドタウンタワー17階にあるヤフーのトピックス編集部で、生身の人間たちが選んでいるのだ。
「よく『世の中を動かす男』とか言われるが、そんなことは考えてもいないし、実際に動かしてもいない。われわれは全国のメディアから記事の配信を受け、全国の読者へ届ける中継係。いわば東京タワーです」
トピックス編集チームを率いて10年になる奥村倫弘(みちひろ、40)は淡々と話す。
インターネットの普及により、新聞やテレビの代わりにネットでニュースを知る人が増えた。新聞各紙が生き残りをかけてニュースサイトの充実にしのぎを削る中、ヤフーによれば、ヤフーニュースは月間37億6000万アクセスとけた違い。各新聞社系サイトの10倍に上る。紙媒体に換算すると、1分間で約8万7000ページがめくられていることになるという。
トピックス編集部は自ら取材はしない。代わりに新聞社や通信社、テレビ局など約150媒体と契約し、記事の配信を受ける。その数、1日約3500本。これら膨大な記事から世の中の関心を呼びそうなニュースを1日に50〜60本選び出し、理解を深める関連サイトを紹介するリンクを張り、見出しをつけてトップページへ掲載する。
見出しの文字数は全角相当で13文字までと決まっている。人間工学の観点から、人間がひと目で認識できる文字数の限界とされている。クリックしなくても記事の概要が分かるような見出しを考えるのが、編集部員の腕の見せどころだ。
部員たちは「メッセンジャー」と呼ばれるチャットソフトを使ってオンライン上でやり取りしながら、トピックスを作り上げていく。例えば3月16日夕、野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に関する記事をトピックスに選んだ際は、次のようなやりとりがあった。
男性部員(32)がスポーツニュースサイトで「韓国がメキシコ撃破 日本の次戦は韓国と対戦」というニュースを見つけた。「こんな結果が速報であがってますよ」と口頭で同僚へ話しかけ、このページのアドレスをメッセンジャーにはりつけた。
男性部員が最初に考えた見出しは「WBC 日本は韓国と3度対戦へ」というものだった。それを見た同僚は「これから、あと3回?」とメッセンジャーで返した。男性部員は「今回が3度目です、わかりにくい?」と意見を求めた。
同僚は「あまり詳しくないひと、次から初めてみるひとには、ちょっとわかりにくいかも」と意見。そこで男性部員は「『目』をいれます」と書き込み、次の見出しへ変えた。
「WBC日本、韓国と3度目対戦へ」
同僚が返した。「はい。クリアとおもいます」
見出しは情報を誤解なく凝縮したものでなければならない。記事の読解力はもちろん、豊富な語彙、単語の省略、言い換えを駆使して見出しが練り上げられていく。豊富な経験が要求される約20人の編集部員は、ほぼ全員が全国紙や地方紙、テレビ局で記者や、紙面のレイアウトと見出しを担当する整理記者だった経験を持つ。
リーダーの奥村は、どんなキャリアをへてきたのか。(敬称略)
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