救急救命士の業務拡大で議論開始―厚労省検討会
厚生労働省の「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」は3月25日、初会合を開き、救急救命士の業務拡大をめぐる議論を開始した。具体的には、「心肺機能停止前の静脈路確保と輸液の実施」など3つの処置の有効性や安全性、業務を拡大する場合に必要な教育体制などについて議論する。
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座長に選ばれた杏林大の島崎修次救急医学教授は、「従来、救急救命士の医行為は主に心肺停止の患者に対して行っていたが、(検討会の議論の行方によっては)心肺停止していない患者に対していろいろなことを行うことになり、一つ大きな転換期に成り得る可能性がある」と述べた。
救急救命士の業務として追加する処置としては、「心肺機能停止前の静脈路確保と輸液の実施」のほか、「重症ぜん息患者に対する吸入β刺激薬の使用」「血糖測定と低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与」が挙がっており、初会合では、救命処置としての必要性や現場で救急救命士が実施する意義などについてヒアリングが行われた。
日本医科大救急医学講座の松本尚准教授は、「心肺機能停止前の静脈路確保と輸液の実施」について、出血性ショックの傷病者に対し、病院に到着するまでに輸液を実施することで、循環動態の維持や心停止の回避が可能になると指摘。医師によるこうした体制が担保されないなら、救急救命士が医師に代わって処置を実施する以外にないと述べた。
「重症ぜん息患者に対する吸入β刺激薬の使用」の必要性に関して松本氏は、重症ぜん息の大発作時には、処方された「吸入β刺激薬」を自力で吸入できるだけの十分な体力や思考能力はなく、救急救命士が患者に吸入を行うことができれば、プレホスピタルケアでのぜん息による死亡を減らすことができるとの見解を示した。
また、「血糖測定と低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与」については、低血糖状態で長時間継続すると、神経学的予後を悪化させる恐れがあると指摘。医師が患者に接触できるまでの間に救急救命士が低血糖を認識し、ブドウ糖投与で是正できれば、患者にとって利点があると述べた。
続いて、厚生労働科学研究班「救急救命士の業務拡大に関する研究」に参加する愛知医科大病院救命救急科の中川隆教授が研究内容を報告した。中川氏は3つの処置について、おおむね業務拡大の有用性が示唆されたと指摘。ただ、「重症ぜん息患者に対する吸入β刺激薬の使用」については、救急救命士が患者に吸入を行うことについて、「医学的観点から必ずしも有用性が高くない」として慎重な検討を求めた。
次回会合では、同研究班がまとめる中間報告について、意見交換が行われる予定。検討会では年末までに一定の見解をまとめる見通しだ。
更新:2009/03/25 23:33 キャリアブレイン
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