県が救命率向上の切り札と位置付けるドクターヘリは25日朝、暫定配備先の八戸市立市民病院(八戸市)で運航をスタートした。同日は、午後1時からの運航開始式を待たず、出動要請を受けた専用ヘリが医師と看護師を乗せ大間町に急行。搬送中の機内で重篤患者に治療を施しながら短時間で同病院に到着し、式典前の関係者に有効性を見せつけた。

 ドクターヘリは機内に人工呼吸器や心電図モニターなど救急処置に必要な機材を設置。消防からの要請に応じて現場に近い臨時離着陸場に出動し、同乗した医師らが患者を引き継いで初期治療に当たるほか、最適な救急病院に搬送して救命率アップを図る。東北での導入は福島県に次いで二番目となる。
 初出動は同病院から百キロ以上離れた大間町。同病院救急救命センター(今明秀所長)などによると、風間浦村の70歳代の男性が24日、村内で伐採作業中に足が倒木の下敷きになって身動きできず、一夜明けた25日に発見された。大間病院で手当てを受けたがショック状態だったため、高度な処置ができる医療機関への移送を求めたもの。
 ヘリは大間病院の隣接離発着場まで約35分で到着。救急車ならば片道約3時間を要する距離だった。男性は、足が長時間木に圧迫されたことに起因する挫滅症候群と診断され、今所長と看護師が機内でブドウ糖と鎮静剤の注射など治療に当たった。市民病院までの復路は向かい風の影響で所要時間が約45分。男性は同病院に入院し、命に別条はないという。
 今所長は初めての本番を「機内で看護師と向かい合って治療ができ効率が良かった」と振り返った。また「基地病院を決めるのに(適地をめぐる論議があり)苦労したが、重要なのはまず一歩を踏み出すこと」と述べ、離発着場増設など今後の課題も挙げた。
 ヘリ格納庫で関係者約70人が出席して行われた運航開始式で、三村申吾知事は「早速成果を発揮でき、導入を決断したかいがあった。ヘリをいかに降ろすかも重要だ」と述べ、受け入れ医療機関のネットワーク充実に期待した。
【写真説明】運航開始式を待たず重篤患者を搬送し、有効性を発揮したドクターヘリ(25日午後0時37分、八戸市民病院ヘリポート)