妊婦がさまざまな画像診断を受ける件数は増加しているが、特にCTスキャンを受ける数が10年間で2倍以上になっているとの知見が、医学誌「Radiology(放射線医学)」オンライン版に3月17日掲載された。妊婦のCT検査は日常的に行われるものではないが、脳出血、肺血栓または虫垂炎など、生命にかかわる症状を診断する場合はやむを得ず実施されることがある。CTスキャンでは胎児が比較的高い線量の放射線に曝露するため、発達に悪影響が及ぶ可能性が懸念される。
研究を率いた米ブラウン大学(ロードアイランド州)医学部画像診断学助教授のElizabeth Lazarus博士は、多くの人が放射線による胎児への影響に不安を感じていることを認める一方、過剰に心配する必要はないと述べている。今回の研究のポイントは、妊婦の画像診断の利用が増えていることへの認識を高め、放射線曝露を最小限にするためのプロトコル(治療法などの正確かつ詳細な計画)の開発を促すことだという。例えば、MRI(磁気共鳴画像診断)や超音波を利用すれば患者および胎児が電離放射線に曝露することはない。
今回の研究では、1997〜2006年にロードアイランド病院およびWomen and Infants(女性・乳児)病院でCT、蛍光透視法(fluoroscopy)およびX線単純撮影(いずれも他の画像診断に比べて高線量の放射線を使用するもの)を受けた妊婦を調べた。その結果、期間中に妊婦がこれらの検査を受けた件数は1年につき10.1%増加し、CT検査は1年につき25.3%増加していた。3,285人の患者に実施された5,270件の検査ついて検討した結果、1年間に画像診断を受けた患者数は237人から449人に(89%増)、検査の件数は331件から732件に(121%増)増加していた。しかし、同期間の分娩数は7%しか増加していなかったという。
妊婦の画像診断が増えている特異的な理由については、今回の研究では特に検討していないが、別の研究から一般集団でも画像診断、特にMRIおよびCTの件数が増加していることがわかっており、妊婦にみられる傾向もこれに付随するものと考えられるという。
米マイアミ大学ミラーMiller医学部のJorge Guerra博士は、他の画像診断同様、CTスキャンの件数が増加していることを認めているが、胎児へ放射線曝露はごくわずかなもので、妊婦がCT検査を受けた場合、放射線曝露によって子どもが致死性の小児癌(がん)を発症する確率は2,000人に1人であると述べている。被曝量を抑えることは重要な目標とされており、現在用いられている放射線量は、研究が実施された期間よりもさらに大幅に低くなっているとGuerra氏は指摘している。
原文
[2009年3月17日/HealthDay News]
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