国民投票阻止にメディアがんばれ 長谷川・元「朝日」大阪本社編集局長の講演
平和・民主主義
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国民投票阻止にメディアがんばれ 長谷川・元「朝日」大阪本社編集局長の講演
14日、京都市内で行われた「京都ジャーナリスト9条の会」結成集会での、長谷川千秋・元朝日新聞大阪本社編集局長の記念講演「選挙報道は国民の『知る権利』にこたえているか」の一部は次の通りです(要旨、文責・見出し・京都民報編集部)=「週刊しんぶん京都民報」3月22日付掲載分=
■ 国民投票阻止にメディアがんばれ
マスコミ幹部取り込む
2度にわたり小選挙区制の導入に失敗した日本の支配層は、改めてメディアを何とかしなければいけないと思ったんです。海部内閣当時の1990年、選挙制度審議会へメディアを取り込みました。同審議会は、現在の選挙制度の基になった衆院選挙の小選挙区比例代表並立制の導入を中心とした答申を出しました。
委員メンバー27人のうちマスコミ評論家が11人です。各社の最高幹部がずらり顔をそろえ、異常です。メデイアからの大量の参加は、あらゆる権力から独立して存在するという、近世ジャーナリズムの自殺行為であったんではないかと思います。
みなさんは、「新しい日本をつくる国民会議」(略称・21世紀臨調)という組織をご存知でしょうか。2003年に、長いこと政治献金のあっせんを自粛していた日本経団連は、新しい形での政治献金手法を打ち出します。財界が露骨に政治関与を進言した年に、まさにあうんの呼吸で装い新たに立ち上げられたのです。共同代表には佐々木毅・東京大学元総長らが、顧問会議議長には御手洗冨士夫・経団連会長が名を連ねるこの団体は、一言でいえば、2大政党政治の実現をめざす運動体です。
深刻だったのはこの21世紀臨調に、日本のメディアが巻き込まれてこぞって参加したことです。経済界、労働界、学識者、自治体関係者、報道関係者、NPO関係者、各界の有志約150人のうちメディアは、全国紙、主要在京テレビの大半が顔をそろえて、なんと66人も参加しているわけです。
もちろん政治状況について個々には独自の見識を持つ人もいらっしゃると思いますが、2大政党政治をめざす運動体へのなだれをうってのメディアの参画が、明けても暮れても自民党と民主党の党首しか大きく扱われない今日の政治報道と密接な関係があることは間違いないと感じています。
あらゆる権力からの独立を
その行き着く先を象徴的に表したのが、07年の参院選公示直前に21世紀臨調が主催して開いた、「政権公約(マニフェスト)検証大会」の報道でした。自民、民主両党だけの党首討論をテレビ放映し、新聞も同じ扱いでした。
各社の社説に共通していたのは、少数政党を無視することになんの疑問も持たないこと、そしてこの討論会を主催した21世紀臨調に自分たちメディアが参画している事実をいっさい伏せていることでした。その内容は、国民の知る権利に奉仕するジャーナリズムの責任放棄以外の何ものでもありません。
1970年代のメディアはまだ、小選挙区制がいかに民意をゆがめて自民党に有利な結果をもたらすか、小選挙区制導入のたくらみを阻止する上で、ジャーナリズムらしい役割を発揮していました。それに比べて今日のメディア状況は、権力の側がおぜん立てした舞台にのぼってひたすら2大政党論を合唱する。新聞は、御用報道、垂れ流し報道をやめて、せめて自分の頭で考えて事実報道にあたってほしいと思います。そのためにも私は、21世紀臨調に参加しているメディアの幹部、ジャーナリストはこの運動体から即刻退会すべきだ、と呼びかけます。
日本のメディアにとって今、私は、「あらゆる権力からの独立」という立場と「正確で公正な報道」が大事だと繰り返し訴えています。それは選挙報道での重要性はもちろんのことですが、将来、日本国憲法をめぐる国民投票の施行阻止の課題に直面した時に、メディアがどこまでがんばれるかと考えるからです。改憲の手続きを定める国民投票法の施行は、2010年5月18日です。国民投票の発動を許さないために、ジャーナリストの間でこの問題をもっと議論する必要があると思います。
益川氏 科学者の社会的責任
最後に、1月30日付の朝日新聞夕刊1面に掲載された、ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英教授のインタビュー記事を紹介します。
「益川氏覚悟の反戦 『9条危機なら運動に軸足』 ノーベル賞講演 触れた戦争体験」という見出しがついていて、益川さんの平和に対する並々ならぬ思いを聞き出した優れたインタビューだと思います。私は、益川さんについてのメディアの取り上げ方は、英語がしゃべれないとかひょうきんなおじさんというイメージが強くて、これでいいのかなと疑問に思っていました。
取材した記者に、なぜ、インタビューを思い立ったかを聞いてみました。記者は昨年12月のノーベル賞授賞式の受賞講演で、益川さんが自身の空襲体験に触れたことを他紙で知ったのが発端で、直接本人に会って聞いてみたいと取材を申し込んだと言っていました。益川さんの話で印象に残ったのは、科学者の社会的責任の自覚だったと言います。これまでのメディアを通しての益川さんのイメージとの落差の大きさに衝撃を受けて、この驚きを率直に伝えたいという気になったそうです。
京都は世界への平和発信源
このインタビューは京都のジャーナリストからこそ、発信してほしかった。京都は、湯川秀樹博士以来、社会的責任を自覚した科学者の間で脈々と受け継がれてきた、国際社会に向けた平和へのアピールの発信源です。京都のジャーナリストのみなさんが自分たちこそ、平和憲法の実践と核兵器廃絶への道の担い手なんだという気概を持って、力強い報道を展開していただきたいと願っています。
京都ジャーナリスト9条の会が、日本と国際社会の平和と進歩のために、ジャーナリストの人たちが伸び伸びと仕事ができるように、強力な応援団になっていくことを心からお願いします。
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