【社説】田舎者といわれた盧前大統領の兄の真の姿
盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領は2004年3月にテレビ出演し、ポンハ村に住む兄の盧建平(ノ・ゴンピョン)被告(67)について、全国民の前で語ったことがある。それによると、盧被告は「特にやることのない田舎者」「何も知らない老人」ということだった。同時に盧前大統領は数百万人の国民がテレビの生中継を見守る中、大宇建設の南相国(ナム・サングク)元社長が(盧前大統領の)兄に3000万ウォン(現在のレートで約215万円、以下同じ)を手渡し、人事面での配慮を求めてきたと明らかにした。盧前大統領によるこの発言の隠された意図は、「ソウルでいい大学を出たエリート」が自分の兄のように「田舎に住む純朴な老人」を堕落させた、と主張したかったのだ。大統領のこの容赦ない言葉の攻撃は、結果的に南元社長の背中を押して漢江へと向かわせ、自ら命を絶つように仕向けてしまった。
朴淵次(パク・ヨンチャ)泰光実業会長(64)=起訴済み=に対する検察の取り調べが順調に進み、「特にやることもない純朴な老人」であるはずの盧被告の真の姿が徐々に明らかになりつつある。盧被告は2004年、朴被告に対して慶尚南道知事補欠選挙に出馬したヨルリン・ウリ党候補を全面的に支援するよう要請し、8億ウォン(約5700万円)を出させた。また翌05年の4・30補欠選挙では、ヨルリン・ウリ党から金海市の選挙区に出馬した候補を支援するよう頼むと同時に、5億ウォン(約3600万円)を同じように出させた。その一方で04年の総選挙と05年の補欠選挙を前に、同じ選挙区のハンナラ党候補に対してはハンナラ党からの離党を迫ったという。
このように盧被告が朴被告から数億ウォン(1億ウォン=約720万円)を受け取ったのは、盧前大統領兄弟に侮辱された大宇の南元社長が自らの命を絶ってから3カ月も過ぎていないころだった。「何も知らない田舎の老人」ではなく、「ソウルの人間を足げにする」非常にずる賢い老人だったのだ。また06年1月には農協による世宗証券の買収にも介入し、30億ウォン(約2億2000万円)近い裏金を自らの懐に入れたことも分かっている。
検察によると、慶尚南道に赴任する政府関係者は誰でも、「ポンハ大君」「大先生」「慶南大統領」と呼ばれていた盧被告に必ずあいさつに出向いたという。盧被告は盧前政権発足直後から公然と国税庁幹部を名指しし、国税庁長をはじめとする要職の人事に影響力を行使していた。また国税庁長に直接電話をかけ、釜山地方国税庁長の人事にも口出ししていた。利権や人事、さらには選挙にまで、弟の盧武鉉前大統領が政権を握っていた時期に盧被告が「口出ししなかった分野はない」という話が、実は本当だったということが、徐々に明らかになりつつあるのだ。
大統領の兄がこのような人物だったのは当時から誰もが知っていたことだ。ところが弟である大統領だけが知らなかった。これが権力というものだろう。
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