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きょうの社説 2009年3月26日
◎Uターン就職促進 近隣中心にアピール強化を
富山県は、学生のUターン就職促進に向けて、従来、大都市圏中心だった大学訪問を北
信越や北海道にも広げるなど、新年度から、よりきめ細かい県出身者の取り込みを図る。石川県も近隣県への進学が多いだけに、郷土意識を出身者にアピールする意味でも、参考にしたい取り組みであろう。富山県ではこれまで、父母向けのセミナーの開催や県内の高校同窓会を通じた情報提供 に取り組んでおり、県のUターン登録制度の周知が進んだこともあって、同制度を利用して県内企業に就職した人数は、〇五年度は十一人、〇六年度は三十三人、〇七年度は七十三人に増え、今年度は二月末現在で百十七人と年々増加している。 取り組みの柱でもある大学訪問はこれまで、県出身者が十人以上在籍する東京、大阪、 名古屋の七十一大学への訪問を実施してきたが、新年度から金大や金沢工大、新潟大、信州大などにも活動地域を広げ、県内企業の魅力や就職関連イベントの周知を図る。 富山県の調査では、たとえば石川県内の大学に進学した学生の最近三年間のUターン就 職率は、他の大都市圏に進学した学生に比べて高く、六割以上の水準で推移している。昨年度はさらにアップを図るために金沢でセミナーを開催しているが、より多くの網を張る意味で、新年度は北信越の大学訪問を強化するという。裏を返せば、こうした試みは、富大や福井大に多くの学生が進んでいる石川県にとっても、実行すれば手応えのある実績につながる可能性が高いと言えるだろう。 これまで県としてもUターンに力を入れ、東京などにUIターンサポートステーション を設け、情報提供に当たっている。もちろん、北陸も深刻な不況の影響を受け、地場の企業が、現状の雇用も守りきれない状況もあって、Uターンを受け入れる環境は、厳しさを増している。 とはいえ不況下でも新卒者の需要は底堅いと言われるだけに、少しでも脈のある隣県へ アプローチを強める富山県のように、「打てる手はすべて打つ」積極的な戦略を練ることも必要ではないか。
◎成田で貨物機事故 「片翼空港」のもろさ露呈
成田空港で起きた貨物機の炎上事故は、空港機能を終日マヒさせ、ジャンボ機の離発着
可能な主滑走路が一本しかない「片翼」の国際空港のもろさを図らずも露呈する形になった。中距離機用のもう一本の平行滑走路は来年三月までに延長され、ジャンボ機の離発着が 可能になるが、東アジアの国際ハブ空港化を競う韓国の仁川国際空港などに比べると、機能面で大きく遅れをとっている。成田空港では初めての航空機死亡事故は、事故原因の徹底究明と同時に、方向の定まらない日本の国際空港政策の再考を促しているとも言える。 昨年、開港から三十年を迎えた成田空港は日本の国際線の基幹空港であり、国際線旅客 数の約六割を占める。しかし、激しい反対闘争で足踏みを余儀なくされ、予定の三本の滑走路のうち、完成しているのは四千メートルの主滑走路だけで、平行滑走路は二千百八十メートルという中途半端な長さで、暫定的に供用している状況である。 暫定平行滑走路はようやく二千五百メートルに延長されることになったものの、不安定 な気象に備える横風用滑走路の建設は見通しが立っていない。これに対して、競争相手の一つである韓国仁川空港は昨年、三千七百五十メートルの二本の滑走路に加えて、四千メートルの第三滑走路も完成し、二十四時間のハブ空港機能を強化している。 成田空港は平行滑走路の延長に伴って、航空機の年間発着回数を現行の一・五倍の三十 万回に増やす計画を立てているが、仁川空港などと比べると、基幹国際空港として貧弱と言わざるを得ない。 こうした成田空港の現状から、国土交通省は羽田空港の再国際化に動いており、来年秋 完成の第四滑走路を使って国際定期便を大幅に増やす方針を決めている。 深夜と早朝の利用が制限されている成田空港を補完する意味もあるとされるが、地元千 葉県などは成田空港の地位の低下を心配しているようだ。また、景気対策として羽田空港への公共投資拡充を求める声もあり、この面からも成田空港はいま一度、将来像を考える必要に迫られている。
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