週刊・上杉隆

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【第71回】 2009年03月26日

小沢代表から記者クラブ開放の言質をとった記者会見での質問

〈ジャーナリストの上杉隆と申します。3月4日以来の記者会見で代表が説明責任を果たそうと私のようなフリーランス、雑誌記者、海外メディアに開放し(続け)たことについて敬意を表したい。(一方で)自民党、首相官邸、全官公庁、警察(検察)を含め私のような記者が質問する権利はない。(説明責任を果たそうとしたことは過去一度もない。そこで質問です。)政権交代が実現したら記者クラブを開放し(続け)て首相官邸に入るのか。(それともこれまでの自民党政権のように、記者クラブをクローズにしたままにするのか)〉

 「私は政治も行政も経済社会も日本はもっとオープンな社会にならなくてはいけない。ディスクロージャー。横文字、カタカナを使えばそういうことですが、それが大事だと思っております。これは自民党の幹事長をしていたとき以来、どなたとでもお話をしますということを言ってきた思いもございます。そしてまた、それ以降も特に制限は全くしておりません。どなたでも会見にはおいでくださいということを申し上げております。この考えは変わりません」
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090324/stt0903242350013-n1.htm

 これによって、民主党は、正式に記者クラブの開放を宣言したことになる。少なくとも、小沢代表の言質は取った。民主党が2002年に記者会見を開放して7年、ようやく世間にも周知されたことだろう。

 とはいえ、産経新聞のウェブ版以外は、全記者クラブメディアがこの日の筆者の質問と小沢代表の回答を黙殺している。それは想定内だが、政治ジャーナリズムに不可逆の変化が訪れたことは、間違いないのである。

 では、仮に、民主党政権が誕生すれば、記者クラブはどう変わるのだろうか。それには次のようなことが考えられる。

 たとえば、「週刊ダイヤモンド」などの雑誌記者が、政府専用機に乗って首脳会談の取材を行なうことができ、海外メディアの記者が、官邸で行なわれる首相の会見に自由に参加することができ、筆者のようなフリーランスが連日、官房長官会見に出席し、あらゆることを質問することができる環境が整う可能性があるのだ。

 会見後に話をした海外メディアの記者や特派員からは、「ありがとう」「素晴らしい質問だった」という言葉が異口同音に届けられた。雑誌記者からも「画期的なことだ」と興奮した感想が述べられた。

 だが、これは画期的なことでもなんでもない。これが世界のジャーナリズムの標準なのだ。いまようやく当然のスタートラインに立とうとしているに過ぎない。

 30年以上の長きにわたって、世界中のジャーナリストたちから批判されてきた日本の「記者クラブ」は、いよいよ「崩壊」目前となった。

関連キーワード:メディア 政治

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執筆者プロフィル

写真:上杉隆

上杉隆
(ジャーナリスト)

1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。「ジャーナリズム崩壊」「官邸崩壊 安倍政権迷走の一年」「小泉の勝利 メディアの敗北」など著書多数。最新刊は「宰相不在 崩壊する政治とメディアを読み解く」(ダイヤモンド社)。

この連載について

永田町を震撼させる気鋭の政治ジャーナリスト・上杉隆が政界に鋭く斬りこむ週刊コラム。週刊誌よりもホットで早いスクープ情報は、目が離せない。