「当たるわけはない」の政治筋は誰?
 また「政府筋発言」が物議を醸している。

 23日、この「政治筋」は北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合に備える日本のミサイル防衛(MD)システムについて、こんな否定的発言をした。

 「(事前予告がなければ、ミサイル発射から)7、8分たったら、浜田靖一防衛相から麻生太郎首相の所に報告に行ったら終わってる」

 「鉄砲をバーンと撃った時にこっちからも鉄砲でバーンと撃って(弾と弾が)当たるか? 当たらないと思う。口開けて見ているしかない」

 「実験したときは成功したと言うが、それは『ハイこれから撃ちますよ。ハイ、どーん』と撃ったやつだった。いきなりドーンと撃ってきたら、なかなか当たらない」

 「『鉄砲の弾で鉄砲の弾を撃つようなもんだ。当たると思うか』と、石破(農水相)と昔、話したことがある。すると(石破氏は)『当たると思う』と答えた」

 「『実験で今から撃ちますよと言って、ぴゅーっと来るから当たるんで、いきなり撃たれたら当たらないよ』と言ったら、石破氏は『それは信じようよ』と語った」

 ・・・どれもこれも率直な意見ではないか? 迎撃手続きに時間がかかり、撃ち落とすチャンスがなくなる、というのは「本音」だろう。いま国民の大多数が疑問に思っていることを「政府筋」が正直に話したと僕は思う。

 この「政府筋発言」に対して、24日開かれた自民党国防関係3部会では「発言が報道で流れること自体が極めてマイナスだ」「緊張感が足りない」と批判が相次いだ。それもまた、国防議員としては「本音」だろう。中谷元・元防衛庁長官は「釈明なり事実の打ち消しなどを求めたい」と記者団に述べた。

 ここで、問題になるのは、この政府筋は誰か? である。釈明を求められるのは誰か?

 しかし、メディアはそれを明かすことが出来ない。「オフレコ記者懇談」では、取材源が話した内容は報道できるが、情報発信源は明らかに出来ない「掟」がある。

 取材源を隠しても権力者が「何を考えているか?」「本当のところ」を報道したい。あるいは「報道すべきだ」という信念で新聞は書く。これが「新聞の論理」だ。

 しかし、誰が話したのか? が問題になると新聞は困る。取材発信源を明らかにすべきか? そのまま伏せるべきか? 悩む。

 今回の「当たらないよ」発言はその典型的な悩みが表面化した。誰が「政府筋」なのか? 明かしたい。そんな衝動に駆られる。でも約束がある。「約束」は取材する人間にとって「命」である。

 しかし、政治家、官僚の大多数は「××が言った」と知っている。だとすれば、読者に「当たらないよ」と言ったの××だ、と報道すべきではないか?

 「今回も例の漆間官房副長官ではないか?」と思っている読者もいるようだが、これは間違いである。彼のタメに書いておく。

 「政府筋」を明らかに出来ないので、一般的に新聞が使う「匿名」のルールを書いておく。

 「政府首脳」とは内閣官房長官。(時に内閣総理大臣ということもあるが、これは稀)

 「政府筋」というのは内閣官房副長官。内閣総理大臣秘書官 。

 「政府高官」は「政府筋」の言い換え。各省庁の局長級以上を指すこともある。

 「自民党首脳」は自由民主党幹事長。

 「与党首脳」は公明党代表(首相を出していない与党の代表)。

 「自民党幹部」は自民党三役(幹事長、政調会長、総務会長)。

 大体、これで分かるだろう。「当たらないよ」発言をしたのは内閣官房副長官で「漆間」さんではない人。ヒント、今年初め、週刊誌に「不倫」を報じられた「あの人」だ。

 それにしても「政府筋」報道はネットの世の中では「時代遅れ」ではあるまいか?

<何だか分からない今日の名文句>

ミサイルは(こうの)池に落ちる?


| 牧太郎 | 08:45 | comments (x) | trackback (x) | 編集長ヘッドライン日記 |
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