イチロー「リーダーは必要なかった」 (2/2)
WBC日本代表 各選手総括(野手編)
■中軸の重責果たした青木
<福留孝介>
韓国との決勝ではスタメンを外れ、優勝はベンチで迎えた。大会を通じて20打数4安打。長打、打点ともにゼロと本人にとっては不本意な結果に終わった。ただ、岩村と並んでチームトップタイの7四球。何としてでも出塁するという執念で、つなぐ野球を体現した。
「このチームがプレーに集中するために手伝ってくれた方たちに感謝したい。2連覇できたメンバーに入れたことに感謝したいと思う」
<青木宣親>
準決勝・米国戦は5打数0安打、決勝・韓国戦では4打数1安打とやや精彩を欠いたが、3番打者として侍ジャパン打線の中軸を担った。「イチローさんだけに負担をかけるわけにはいかない」という意識で、37打数12安打、7打点。文句なく大会ベストナインに選出された。前回大会は控えだったものの、今大会は中心選手として見事に存在感を見せた。
「中身の充実したときを過ごせた。一人一人の存在感がチームにいい雰囲気を持ってきたと感じた。本当に結束力のあるいいチームだと思った。このメンバーの一員になれたことを誇りに思う。世界の人々に野球の素晴らしさを伝えられた、と思う」
<内川聖一>
今大会、左腕キラーとして名前を大いに売った。原監督に求められていることを常に考え、それを実行した。韓国との決勝戦では延長10回に「ムードを変えたかった」と意地のライト前ポテンヒットを放ち、イチローのタイムリーで勝ち越しのホームを踏んだ。それでも「次回はレギュラーを取って世界一を目指したい」と向上心を忘れていなかった。
「これだけ緊張感のある試合の中で自分のパフォーマンスを出せたことを自信にして、これからの野球人生に生かしていきたい。また、イチローさんの決勝打で決勝点のホームを踏んだことでたくさんにテレビに映ったことをうれしく思う(笑)。イチローさんありがとうございました」
<亀井義行>
終盤の守備固めとして3試合出場し、打撃では1打数1安打。強肩を披露することはできなかったが、チームのためにベンチで声を出し続けた。
「出番は少なかったですが、ベンチで一生懸命声を出した。金メダルごちそうさまでした」
<稲葉篤紀>
相手先発が左投手の場合は、スタメンを外れることが多かったが、気持ちを切らすことなくベンチのムードを盛り上げた。それでも、準決勝の米国戦では4番としてオズワルト攻略に貢献。決勝では延長10回に勝ち越し点につながる送りバントをきっちりと決めた。チーム最年長らしくベテランの味を発揮した。
「僕は最年長ということでこのチームをどうやってまとめるかということを考えた。メジャーリーグで活躍する5人の選手がそれぞれのポジションでうまくまとめてくれた。僕も正直言ってすごく楽だった。とにかく僕に気を使わせずに、選手を気持ち良くやらせてあげようと考えて、試合中でも常に声を出した。凡打した選手にも声をかけた。そういうことを自分からやっていこうと思った。宮崎合宿から32人いたけど、全員が侍ジャパンとして、全員で勝ち取った大会なのでうれしい。今後もこの経験を生かして日本のプロ野球を盛り上げていきたい」
<イチロー>
日本にWBCフィーバーを巻き起こした。試合ではもがき苦しんだ。中々ヒットが出ず、送りバントも失敗した。それでも決勝の延長10回に勝ち越し2点タイムリー。漫画でもないような壮絶な結末だった。
「侍ジャパンというネーミングに始まり、そこが僕としてはいきなり大きなハードルだった。『私、アイドル』と言いながらかわいくないのは最低で、侍と言いながら負けては格好つかない。自らハードルを上げていったこのスタートの中で、最終的に優勝し、最終的に侍になれたことは大変喜んでいる。ホッとしている。
個人的には最後まで足を引っ張った。韓国のユニホームを着て、キューバのユニホームを着ていろいろなチームのユニホームを着た。でも最後に日本のユニホームを着ておいしいところだけいただいた。本当にごごちそうさまでした。
(質疑応答:今回のチームで感じたことは)
向上心。これが集まったチームは強い。よくチームにはリーダーが必要だという安易な発想があるが、今回のチームにはまったく必要なかった。それぞれが向上心を持って、何かをやろうとする気持ちがあれば、そういう形はいらない。むしろないほうがいいと思った。僕は外からリーダーのような存在だと言われたけど、実際、中では何にもなかった。向上心があればチームはいくらでも可能性が見出せる」
<了>
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