民主党の小沢一郎代表は、西松建設の巨額献金事件で逮捕された公設第一秘書が起訴されたことを受けて自らの進退に決断を下した。「続投」である。民主党もこの決断を支持した。小沢氏のみならず、民主党にとっても政権交代の命運を握る選択といえよう。
公設第一秘書の大久保隆規被告は、西松建設から違法な企業献金を受領しながら、政治資金収支報告書には虚偽の記載をするなどしたとして、政治資金規正法違反の罪で起訴された。
民主党内では小沢氏の進退をめぐって辞任を求める声の一方、政治資金規正法違反という「形式犯」の罪だけの起訴なら代表を辞任する必要なしとの続投容認論が広がっていた。
会見した小沢氏は「自分自身が収賄罪など犯罪に手を染めていたという事実はない」として「私の主張してきたことが明らかになったのではないか」と述べた。
進退を判断するための大きな基準は、次期衆院選に与える影響だった。小沢氏は今月十日の記者会見で「衆院選に物差しを置いて判断したい」と発言。党内の情勢や世論の風向きをみながら、衆院選への影響を最大限考慮する方向で最終判断する構えをみせていた。
続投の裏には、秘書の起訴以上に事件が広がらなければ有権者の間で検察批判の声が上がり、衆院選への影響も抑えられるとの判断があったろう。
内部にはなお異論もあるが、民主党は当面混乱を避け、党の結束維持を優先する観点から小沢体制で総選挙に臨み、政権交代を目指すことになる。
だが、国民の側からすればどうしても割り切れないものが残る。秘書逮捕後の世論調査では、小沢氏は「代表を辞めたほうがよい」の回答が六割を超え、八割近くが小沢氏の説明に「納得できない」とした。小沢氏はその後、企業・団体献金を全面禁止にすべきだとの踏み込んだ見解を示したが、これで不信感がぬぐえたとも思えない。
今後、捜査が進展する可能性がないとも言いきれない。新たな事件が浮上すれば再び辞任論が起きるだろう。
今回の捜査に関しては、検察側の強制捜査着手やその後の手順が安直だという声もある。だが、小沢氏側にゼネコンによる不明朗で巨額な資金提供があったことは事実だ。
小沢氏と民主党執行部は、国民が不信感を招いていることへの説明責任を果たす努力を忘れてはならない。
世界一を決めるのにふさわしい好勝負だった。ロサンゼルスで行われた野球の第二回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の決勝で、日本が韓国を延長にもつれ込む接戦の末に破って連覇を果たした。
日本も世界的な不況にあえぐ中、「侍ジャパン」の快挙は久々に爽快(そうかい)感と元気を与えてくれた。心から優勝を祝福するとともに、チーム関係者の労をねぎらいたい。
大会前、アジアの二チームが決勝で戦うと予想した人は少ないだろう。それだけ両国のレベルが上がったことを物語っている。大会を盛り上げた両チームの活躍は評価できよう。
日本は全員野球で優勝をもぎ取ったが、やはりチームリーダーのイチロー選手の存在は大きかった。大会に入って不振が続いていたものの、最後の最後で勝利を決めるヒットを放った。さすがというべきか。ゲーム終了後、チームメートと肩を抱き合って喜ぶ笑顔は野球少年のようで印象的だった。
今回の代表チームは監督選考が手間取り、準備の遅れが懸念された。既定路線は昨夏の北京五輪で監督を務めた星野仙一氏だった。だが、五輪でメダルなしの惨敗に終わり、急きょ巨人の原辰徳監督に決まった。
連覇の期待が懸かる大会で、原監督が受けた重圧は大変なものだったろう。短期間でチームをまとめた手腕が光る。ただ、教訓として四年後の次回大会は、少なくとも一年ぐらい前には監督やスタッフを決めておくべきだろう。
世界的にみると、野球の人気はサッカーに比べ低調だ。WBCの狙いは野球の国際化である。徐々に注目度は高まっている。次回の大会に向けて、関係者は地道に普及活動を強めていってもらいたい。
(2009年3月25日掲載)