WBCで連覇を達成して凱旋帰国した日本代表は、激闘と長旅の疲れをにじませながらも、偉業の余韻に浸った。難敵を次々に打ち破った侍ジャパンの中心は、やはりイチローだった。チーム最年長(36歳)で、4番も任された稲葉(日本ハム)は、改めてイチローの存在の大きさに感心した。
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「イチローはあんな調子が悪い中でみんなに声をかけたり、いろいろなことをしていた。調子が悪いと試合中に自分の失敗を考えたりするけど、ああいう姿を見て本当に充実した期間だった。イチローとは『チームが1日1日強くなったし、団結したし、連覇なんてすごいことを達成したよね』としみじみ話した」。
稲葉はイチローより1学年上で、中学時代は愛知県の空港バッティングセンターでよく鉢合わせになったのは有名な話。「すごいやつがいる」が当時の稲葉の記憶だ。高校はイチローが愛工大名電高、稲葉は中京高に進んだ。およそ20年のときを経て同じチームで世界一を目指すことになった。稲葉は合宿中からイチローとの距離をはかっていたが、試合を重ねるにつれ、信頼関係が深まったという。
「凡退した後に声をかけられるのがいやなバッターもいるから、最初はどうやって声をかけたらいいのかわからなかったけど、『次、次』とか声をかけると、イチローはぼくの目を見てちゃんとうなずいてくれた。それからはどんどん声をかけられるようになった」
こんな小さなコミュニケーションの積み重ねが、韓国との決勝戦の最後の最後に放った決勝打につながったのかもしれない。
一方で、複雑な表情を浮かべて帰国した選手もいる。大会中に調子が上がらず、胴上げ投手をダルビッシュ(日本ハム)に譲った藤川(阪神)だ。代表からの引退を示唆したとの報道もあった。「疲れた。引退するとかではなく、(代表には)もう選ばれないでしょう」。心に傷を負ったことは想像に難くない。自虐的な笑みが痛々しかった。(佐藤正弘)
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