「自前主義」捨て、新聞業界は合従連衡を
「会社支給の取材手帳が廃止になった」「ノートを5冊請求しても、1冊しか届かない」「社がGPS搭載のタクシー会社と契約したため、タクシーで異動しづらくなった」。マスコミ各社は経費節減の大号令を掛け、取材現場からは悲鳴が聞こえてくる。在京新聞各社申し合わせの朝刊締め切り時刻(降版協定)を終電前まで早め、記者が深夜帰宅で使うハイヤー・タクシー代を節約しようという案も浮上している。
しかし、小手先の節約では氷河期を乗り切れない。日本新聞協会によると、日本の日刊紙発行部数は6843万部、人口1000人当たりで624部に達し、いずれも世界3位。一方、発行紙数は109にとどまり、インドの2337や米国の1422、中国の984に遠く及ばない。日本の新聞業界は、海外に比べて1社当たりの発行部数が多く、寡占化が進んでいるわけだ。
日本の新聞業界は、数百万部単位で売らないと採算が取れない、巨大な装置産業なのだ。米欧では通信社が国内外にネットワークを張り巡らし、新聞社はそれに依存する。ところが、日本国内では全国紙が共同、時事の両通信社を凌駕する拠点を持ち、記者を大量に配備。政治や経済、事件・事故、高校野球の予選に至るまで、「自前主義」でカバーしている。
しかし、人口減少時代を迎え、若者の新聞離れには歯止めが掛からない。小さくなる一方のパイをめぐり、過当競争を続けていれば、新聞各社は共倒れになるだろう。このままでは日本のジャーナリズム自体が、危機に直面する。インターネット上のメディアはまだまだ発展途上であり、これからも新聞業界にはジャーナリズムを牽引してもらわなくてはならない。
新聞各社は「供給過剰」の現実を直視してほしい。氷河期を乗り切るには「自前主義」を捨てて通信社を有効に活用し、「合従連衡」すなわちライバルとの合併・統合も躊躇すべきではない。プライドにこだわって時機を失すれば、日本の新聞社は恐竜と並んで未来のウィキペディア(Wikipedia)に掲載されるだろう。
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