ニュース: 経済・IT RSS feed
住友化学、世界最大級のプラント稼働へ 国内再編機運高まる
住友化学がサウジアラビアの国営企業サウジ・アラムコと合弁で進める世界最大級の石油化学コンビナートが3月末にも本格稼働する。総投資額が1兆円にのぼる巨大事業で、住化では現地で生産した石油化学製品をアジア地域で4月から販売する計画だ。ただ、世界的な景気低迷下での新規の設備稼働となるため、赤字操業が続く日本の化学メーカーにとって市況面で打撃となる事態も予想される。すでに化学業界では競争激化に備え、一部製品の生産から撤退する動きも出ており、新たな再編の引き金になる可能性もある。
同社の米倉弘昌社長は、今回のサウジ合弁事業の意義について「当社が石油化学事業を始めて以来の大きな存在になる」と期待をかける。産油国で石化製品を現地生産するため、原料となるナフサ(粗製ガソリン)を輸入品の10分の1から20分の1という低価格で調達でき、コスト競争力が飛躍的に高まるからだ。
また、このプラントは生産規模でも世界最大級であり、石化製品の基礎原料であるエチレンについては国内工場の約3・5倍となる年130万トン、プロピレンも年90万トンそれぞれ生産する計画で、生産拡大に伴うコスト削減も見込める。
住化では「早期の高稼働率の確保が可能」(野崎邦夫執行役員)とみており、本格稼働に合わせて中国をはじめとするアジア諸国に製品を供給する。
ただ、昨年後半からの世界的な景気悪化を受け、ナフサ原料となる原油価格は急落している。。住化関係者は「原油価格が1バレル=25ドルになっても採算は取れる」と強気の構えだが、この石化合弁は、中東地域で今後相次いで誕生する大型コンビナートとの競争にもさらされる。
一方、国内の化学各社に与える影響も大きい。旧式のエチレン設備を使用する国内各社の生産能力は平均年50万トン規模に過ぎない。需要減に伴って減産も続いており、各社とも赤字操業を強いられているのが現状だ。
このため、三井化学では中東産の石化製品の流入を懸念し、ポリエステル繊維原料の生産を今年11月に一部停止する。三菱化学も「日本のエチレン生産能力の3分の1が過剰になる可能性がある」とみており、茨城県の鹿島、岡山県の水島にあるエチレンプラントをめぐり、石油元売り各社も巻き込んだ形で統廃合を模索している。(飯田耕司)