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NIKKEI NET

社説1 小沢氏続投は有権者の理解得られるか(3/25)

 公設第1秘書が政治資金規正法違反で起訴された民主党の小沢一郎代表が続投する意向を表明した。涙ながらに検察との認識の違いを強調したが、次期衆院選で政権交代をめざす民主党のトップの決断は有権者の理解を得られるのだろうか。民主党にとって手負いの小沢氏の下で衆院選を戦うのは大きな賭けになる。

 小沢氏と民主党は公設秘書の起訴によって大きなダメージを受けた。特に秘書の逮捕以降、公共事業をめぐって小沢事務所側と西松建設など建設業者との間に献金を通じて密接な関係があり、小沢事務所の資金集めの構造の一端がしきりに報道された。こうした疑惑に小沢氏はきちんと説明責任を果たすべきである。

 政治資金規正法に反する虚偽記載という「形式犯」であっても、民主党トップの公設秘書が逮捕・起訴された事態は重大である。政治不信を増幅させた点で小沢氏の政治的、道義的責任も問われている。

 民主党内では小沢氏続投を受け入れる声が大勢だ。代表辞任なら党内結束や野党協力に陰りが出る恐れがあるからだ。小沢氏はある程度のダメージは覚悟してでも代表の座にとどまり、党内結束、野党協力の維持を最優先させたとみられる。こうした判断が有権者に受け入れられるかどうかは別問題だ。各種世論調査では小沢氏の責任を問う声が多い。

 秘書の起訴事実の核心は、会社から政治家個人への献金禁止規定をくぐりぬけるために、西松建設からのカネを同社関連の政治団体からの寄付として扱ったことにある。

 同規定は度重なる改正の1つで政治腐敗防止の目的から加えられた経緯がある。カネの出所を故意に隠した秘書の行為は、起訴事実どおりなら、法の趣旨をないがしろにするもので単なる形式犯といえなくなる。

 検察も違反の悪質さに着目して立件したと説明している。西松建設からの“隠れ献金”は、小沢氏側が東北地方の公共事業の施工業者選定に影響力を持つと見込んで出した、特定の見返りを期待するカネだった、という見方のようだ。

 それならば検察は、当然、東北以外の地域で西松建設が政治献金をした底意を突き止める捜査を遂げる必要がある。さらに西松建設以外のゼネコンも公共事業の受注を狙った“隠れ献金”を、各地で影響力を持つ政治家相手にしていた疑いはないのか。そこまで捜査の対象を広げなければなるまい。

 でなければ小沢氏側への献金が際だって悪質だったとの説明は根拠を失う。捜査の進展を注視したい。

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