2009年3月24日
映画「イリウ」からのシーン=ボナ・ファハルドさん提供
「これまでのフィリピン映画では、日本人は残酷な悪人で、アメリカ人とフィリピン人は善人として描かれてきた。私たちはそういうステレオタイプとは違う映画を作ろうと思った」
ルソン島北部の都市ビガンはスペイン風の美しい街並みで知られ、ユネスコの世界遺産にも登録されている。第2次大戦でフィリピンは日本の侵攻を受け、甚大な犠牲を出したが、ビガンでは、フィリピン人女性と愛し合った1人の日本人将校が街を破壊から救ったという話が伝えられている。映画監督のボナ・ファハルドさん(38)とプロデューサーのリン・ファハルドさん(37)夫妻はこの実話を映画化した。「イリウ」(現地のイロカノ語で「郷愁」の意味)と題した映画は現在、編集の最終段階にあり、来月中の公開を目指している。
フィリピンでは昨年も、戦時中の日本兵とフィリピン民間人の音楽を通じた交流を描いた映画「コンシェルト」が公開された。ポール・モラレス監督(39)の祖父母の実話に基づくという。
「戦後60年が過ぎ、ようやく若い世代の監督たちが日本占領期の別の面を取り上げることができる時代になってきたのではないか」。フィリピン映画に詳しい国際交流基金マニラ事務所の鈴木勉さんは話す。
「日比友好の映画。いつか日本でも上映してほしい」とファハルド夫妻は願っている。(松井健)
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【ガイド】フィリピンでは映画は庶民の娯楽。複数のスクリーンを持つシネマコンプレックスがショッピングセンターなどに併設されており、値段は130ペソ(約270円)程度。常夏の国で冷房の利いた映画館が快適なこともあり、大勢の客でにぎわっている。公開されているのは主にハリウッド映画。