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時評コラム

猪瀬直樹の「眼からウロコ」

1床あたり年間700万円以上も赤字では…

霞が関と医療機関は透明性を高め、データを提示してほしい

 舛添厚労相とは、次のような話もした。

猪瀬 大事なことは、役人ではない舛添さんや僕のような人間が、経営の透明性をきちんと考えていくということだと思います。とくに厚労省は、透明性がないという伝統を持つ省庁だから、こういう問題を契機に、透明性を高める体質を作り上げていかなければいけない。もちろん予算の絶対量が足りないという面はあるけれど、限られた範囲内でも解決していく方法があるだろうということです。透明性を高めて収支モデルを明らかにすれば、おのずと問題も見えてきます。

舛添厚労相 私たちも、そのための努力をずっと続けてきています。やっぱり、普通の市民、普通の都民、普通の国民が見て、「あっ、それなら納得できるな」という形でやっていくというのが大事です。そのために情報の透明性を高めていくことには、もちろん大賛成ですよ。

猪瀬 国がこれだけ「NICUを揃えろ揃えろ」と言ったって、実際には設置していけばいくほど赤字になってしまいます。だから、NICUを増やす気が各病院に起きてこない。そういうところを考えて、墨東病院はじめ2つの事件のようなことが、これから起きないようにしたいと思います。

舛添厚労相 周産期医療だけでなくて、医療体制全体の抜本的な見直しが必要だと考えています。そのなかで、東京都では猪瀬さんが副知事として問題に対処していただけるのは、非常にありがたいと思います。

猪瀬 旧知の仲だけど、まさかこういう形で舛添さんのところに来ることになるとは思わなかったよ(笑)。

舛添厚労相 私も、猪瀬さんがこういうところまで乗り込んで来るとは思わなかった(笑)。猪瀬さんとは気心の知れた仲なので、今後ともひとつよろしくお願いします。こちらから出せる情報はいくらも出しますよ。

 厚労省も東京都も、これまでNICU増床の必要性を認識しながら、経営体である病院に対して、必要な財政負担の分析と議論がなされてこなかった。これは、役所だけにデータがしまい込まれていたからである。

 霞が関と医療機関は、必要なデータを公開し、分析して、提示してほしい。今回の提案が、その第一歩になればと考える。国もこれをNICUの整備促進に向けて必要不可欠な提案と受け止め、新たな整備目標の実現に向け取り組んでもらいたい。

猪瀬直樹(いのせ・なおき)
作家。1946年、長野県生まれ。1987年『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『日本国の研究』で1996年度文藝春秋読者賞受賞。以降、特殊法人などの廃止・民営化に取り組み、2002年6月末、小泉首相より道路関係四公団民営化推進委員会委員に任命される。政府税制調査会委員、東京工業大学特任教授、テレビ・ラジオ番組のコメンテーターなど幅広い領域で活躍中。東京都副知事。最新刊に『霞が関「解体」戦争』(草思社)がある。
オフィシャルホームページ:http://inose.gr.jp/
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