「特殊映像ラボラトリー」
第3回 2008年特殊映像総決算!(4)
【2008年の洋画アニメ&特撮映画】
斉藤守彦
[目標を大きく下回った「カンフー・パンダ」]
まずアニメ映画では、ディズニー・アニメの新作「ルイスと未来泥棒」が正月に公開され、興収9.33億円をあげた。ドリームワークス・アニメーションの新作2本は、「ビー・ムービー」が興収2.4億円、全米のみならず海外マーケットで大ヒットした「カンフー・パンダ」は20億円と、公開前の「70億円目標!!」とのかけ声には届かなかった。また「スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ」も興収2.9億円と、あの大ヒット・シリーズとは思えない成績。実写映像とCGアニメのギャップは、特にキャラクター面において埋めがたいミゾが存在している。
「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」(興収57.1億円)、「アイ・アム・レジェンド」(43億円)、「ライラの冒険・黄金の羅針盤」(34億円)など、“特撮・VFX技術を使ったSF・ファンタジー・アドベンチャー映画”は数々公開されたが、あえて“特撮映画”という日本的ニュアンスにこだわるとすれば、それに相応しいのは6本の外国映画だ。
まず正月映画として公開された「AVP2/エイリアンズVSプレデター」は、興収10.7億円と大台を突破したが、その内容は前作より相当落ちる。例のラストのくだりに関しては「まだやるんかいっ!!」とツッコミを入れておこう。
4月に公開された、J.J.エイブラハムズの「クローバーフィールド/HAKAISHA」。エイブラハムズ自身が「日本の怪獣映画からヒントを得た」というだけあって、そのテイストといい、ジャパニーズ特撮映画を彷彿とさせる。興行収入12億円は立派。
「ショーシャンクの空に」「グリーン・マイル」のフランク・タラボン監督の新作。感動作をイメージさせるアドバタイジングから、女性客を集めたものの、画面を覆い尽くした霧の中ではレギオンとメガギラスが戦っていた!!…とまで言われた、“隠れ怪獣映画”「ミスト」。あまりのイメージ・ギャップに映画館へは苦情殺到。配給会社の話では、「ムーブオーバーが多かったので、興行収入は5億円上がりました」とのこと。
「キューティーハニー」がコケた庵野秀明監督が試写を見て大絶賛したのが、7月に公開された「スピードレーサー」。そもそも庵野監督がハニーで試みた“ハニメーション”と同様のビジュアルメイクを、全編に採用しているのだから。日本のアニメが豪華な映画になって、帰ってきました…とは言っても、「マッハGo! Go! Go!」の現在での知名度は低く、初日の映画館では40代以上と見られる男性観客の姿が目立ったとか。興収4億円に関係者は真っ青。
ブーム現象が期待されるというか、カッツェンバーグたちが、意地でもブームにしようと企んでいる3D映画。「とりあえず」といった感じで10月に公開されたのが、H・G・ウェルズの「地底探検」を映画化した「センター・オブ・ジ・アース」。内容云々よりも、3Dメガネの重みで顔面が硬直してくるのと、試写会ではやけに映像が暗いプリントが上映されたことで、売り物である立体効果が今ひとつ実感出来なかった作品だ。それでも興収8億円をあげたのは、特別料金(当日大人2000円)のおかげか。
あの珍作「怪獣大決戦ヤンガリー」を放ったシム・ヒョンレ監督が、懲りずにまたまた作ってしまった怪獣映画が「D-WARS/ディー・ウォーズ」。ソニー・ピクチャーズとネオの配給で11月に公開されたものの、99スクリーンという小規模マーケットなので、さほど大きな興収にはなっていない。
…さて2009年の特殊映像たちの成果はいかに。
(文中の数値は、一部推定/msdb調べ)
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