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2008.12.26
0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 第3回2008年特殊映像総決算! ]
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「特殊映像ラボラトリー」

第3回 2008年特殊映像総決算!(1)
【2008年の邦画アニメ映画】(1)

斉藤守彦

 年末を迎え、各種メディアでは2008年の総括やら総決算が花盛り。そこで、アニメ、特撮映画といった、いわゆる特殊映像を扱う当ラボラトリーでも、2008年の成果を検証しようという試みである。
 
【2008年の邦画アニメ映画】(1)

 この年は「ハウルの動く城」以来の宮崎駿監督作品が公開されるとあって、周囲の期待は、すこぶる大きかった。その“宮崎アニメ”最新作「崖の上のポニョ」は、現時点で興行収入154億円。正月も引き続き上映されることから、さらにこの数値は伸びるだろうが、160億円を上回ることはないだろう。(「ポニョ」についての興行推移や詳細については、本連載1=「『崖の上のポニョ』早すぎる検証」を参照されたし)
 正月、春、ゴールデン・ウィーク、夏休みの、いわゆるレギュラー・アニメ番組は、いずれも前年並みの成績を維持し、総じて好調であった。このあたりは昨今の観客に見られる“タイトルを知らない作品を敬遠する”保守的な姿勢が良い方向に作用したと言える。とりわけファミリー層をターゲットとした作品は、その保守性に拍車がかかる傾向が強く見られる。
 
[特筆すべき「ワンピース」の、観客満足度]

 正月に公開された「劇場版BLEACH ザ・ダイヤモンドダスト・リベリオン/もう一つの氷輪丸」(東宝配給)は、興行収入7.3億円をあげ、前作「劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODY」の6.6億円を上回った。 
 3月1日から東映系で公開された、東映配給「ワンピース THE MOVIE/エピソード・オブ・チョッパー+冬に咲く、奇跡の桜」、興行収入9.2億円と、前年の9億円をわずかに上回った。

〈過去3作品の興行成績〉
●「ワンピース THE MOVIE/エピソード・オブ・チョッパー+冬に咲く、奇跡の桜」(2008年3月公開)=9.2億円
●「ワンピース エピソード・オブ・アラバスタ/砂漠の王女と海賊たち」(2007年3月公開)=9億円
●「ワンピース THE MOVIE/カラクリ城のメカ巨兵」(2006年3月)=9億円

 「ドラえもん」シリーズが、藤子プロ=小学館中心の製作体制であることに対し、「ワンピース」の場合は東映と東映アニメーションが、製作のイニシアティヴを握っている。そのため、プロモーション面でのパワーアップより、知名度のある原作をより魅力的にするための、いわば内容面でのテコ入れが、ここ数年試みられている。2008年の「ワンピース」は、原作者・尾田英一郎が企画協力として参加。題材もTVシリーズで最高視聴率を記録した「冬島・ドラム王国篇」を、一部のキャラクターなどの設定を改めて映画化した。上映時間1時間50分、ゲスト声優にみのもんた、主題歌にドリームズ・カム・トゥルーを招いたが、それらが興行的に大きなプラスになったとは、残念ながら言い難い。
 しかしながら作品的な評価はすこぶる高く、2008年に公開されたアニメ映画の中でも、そのクォリティはトップレベルと言えるだろう。志水淳児監督の演出は、まさに「泣いて、笑って、手に汗握って」のそろい踏み。たたみ掛けるような展開でありながら、最後には感動の涙を流させ、深い余韻を残す、その手腕はまさに名人芸の域だ。 

 この作品が観客の心をしっかり捉えたことは、データにも現れている。東映がオープニング時に行った観客調査での「作品満足度」は、なんと99.9%!!女性比率52.3%、20歳以上の観客は全体の58.9%を占めたという。
 確かに9.2億円という興行収入は「大ヒット」とは形容出来ないし、例年と変わらないじゃないかという指摘が出来る。だがしかし、この9.2億円は、10億円、20億円にと膨らむ可能性がある、いわば“値打ちのある9.2億円”だと言えなくはないだろうか。「ワンピース THE MOVIE/エピソード・オブ・チョッパー+冬に咲く、奇跡の桜」を心から楽しんだ観客は、必ずや次の「ワンピース」の観客となるだろう。2009年春の新作が製作・公開されないことが残念でならない。

[岐路に立つ「クレヨンしんちゃん」と「名探偵コナン」] 
 これがシリーズ3作目となる、角川映画配給の「ケロロ軍曹」シリーズの新作「超劇場版ケロロ軍曹3/ケロロ対ケロロ・天空大決戦」は、前年を1億円上回る、興行収入5.8億円をあげた。

●「超劇場版ケロロ軍曹3/ケロロ対ケロロ・天空大決戦」(2008年3月公開)=5.8億円
●「超劇場版ケロロ軍曹2/深海のプリンセスであります!」(2007年3月公開)=4.8億円
●「超劇場版ケロロ軍曹」「まじめにふまじめ かいけつゾロリ/なぞのお宝大さくせん」(2006年3月公開)=6.02億円

 興収5億円を下回った前作を挽回。「超劇場版ケロロ軍曹3」の、オープニング成績は163スクリーン計10万2567名と初めて10万名を突破。興収1億697万7300円は、シリーズ新記録にあたる。「ドラえもん」「ワンピース」ほどの大規模なマーケット展開は行っていない同シリーズだが、映画館にとっては1スクリーンあたりの興収が高いことに加え、ショップで扱うキャラクター商品の売り上げなどで、オイシイ番組なのである。
 
 「ドラえもん」シリーズの新作「のび太と緑の巨人伝」は、初めてオリジナル・ストーリーに挑戦した作品であり、その完成度も高い。興行収入33.7億円は、前作より1.7億円の減収だが、コンスタントに30億円以上の興収をあげるこのシリーズは、スタート以来28年を経た現在でも、東宝の大きなマネーメイキング・ピクチャーである。

●「ドラえもん・のび太と緑の巨人伝」(2008年3月公開)=33.7億円
●「ドラえもん・のび太の新魔界大冒険 ~7人の魔法使い~」(2007年3月公開)=35.4億円
●「ドラえもん・のび太の恐竜2006」(2006年3月公開)=32.8億円

 2005年の大規模リニューアルを経た「ドラえもん」シリーズは、完全に復調したと言えるだろう。また作品内容も、子供向けではなく、むしろ同伴者である父親、母親たちを感動させることで、視聴習慣ならぬ“鑑賞習慣”をつけさせようとの狙いが、「のび太の恐竜2006」以降の作品から感じられる。「のび太と緑の巨人伝」では、そこに環境保護というメッセージ性が加わった。
 
 ゴールデン・ウィーク作品では、恒例「クレヨンしんちゃん」シリーズ(東宝配給)が今年も登場。新作「ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者」は、シリーズ初期作品を手がけた本郷みつる監督が16年ぶりに登板し、ファンの話題を呼んだ。

●「クレヨンしんちゃん・ちょー嵐を呼ぶ  金矛の勇者」(2008年4月公開)=12.3億円
●「クレヨンしんちゃん・嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!」(2007年4月公開)=15.5億円
●「クレヨンしんちゃん・伝説を呼ぶ 踊れ!アミーゴ!」(2006年4月公開)=13.8億円

 「クレヨンしんちゃん」シリーズは、1999年4月公開の「爆発!温泉わくわく大決戦」が興行収入10億円を下回ったことで、関係各社によるリニューアルが検討され、その結果、「しんちゃんのキャラクターを以前より強く押し出す」(「ゲスト・キャラの描写に比重がかかりがち」との指摘を反映して)ことや、興行的な観点から、それまでの5~6週間興行を、G.W.の休日3週間に絞ったデイトに改めるという対策が、2000年からとられるようになった。2001年に公開された原恵一監督の「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」のクォリティの高さが評判となり、翌2002年の同監督作品「嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」は、文化庁メディア芸術祭アニメ部門大賞などを受賞したことにより、いちやく注目を集めることになる(山崎貴監督が「BALLAD -名もなき恋のうた-」として実写リメイクするというおまけまでついた)。
 しかしながら、そうした質的な評価が興行成績に反映されたかといえば、これまたイエスとは言えない。ここ数年の「クレヨンしんちゃん」シリーズの興収は12~16億円前後のペースで推移しているものの、08年の「金矛の勇者」は12.3億円と必ずしも良好な成績とは言えず、個人的な感想になるが、久々の本郷監督作品なけど、作品的に高く評価することは出来ない。様々な意味で、「クレヨンしんちゃん」シリーズは、曲がり角に来ているのだろう。邦画系(ブロック・ブッキング)での3週間興行で、これだけの興収をあげれば良しとするか、さらなるヒットを望むか。
 
 同じくG.W.に公開された、これも東宝配給の「名探偵コナン・戦慄の系譜〈フルスコア〉」もまた、岐路に立つシリーズと言えるだろう。

●「名探偵コナン・戦慄の系譜〈フルスコア〉」(2008年4月公開)=24.2億円
●「名探偵コナン・紺碧の棺〈ジョリー・ロジャー〉」(2007年4月公開)=25.3億円
●「名探偵コナン・探偵たちの鎮魂歌」(2006年4月公開)=30.3億円

 2002年の「ベイカー街の亡霊」の興収34億円、03年の「迷宮の十字路」の32億円をピークに、同シリーズの成績は徐々に下降線を辿りはじめるが、シリーズ開始第10作を記念し、人気キャラが勢揃いした2006年の「探偵たちの鎮魂歌」が30.3億円を計上した。しかしこれ以降、興収は再び緩やかな右肩下がりの曲線をき始める。
 この種のファミリー・ターゲットのシリーズは、キーを握る年少の観客が成長し、嗜好の変化が現れることとの追いかけ合いを余儀なくされる。観客層の新陳代謝を迫られる時期が、必ずやってくるのだ。「ドラえもん」シリーズは声優、作品内容など大規模なテコ入れを行い、映画に関しては成功を収めた。「ポケットモンスター」シリーズは、より年少の観客が対象とあって、ダウンの比率が大きく、2003年からの「アドバンスジェネレーション」シリーズ、2007年からの「ダイヤモンド・パール」シリーズと、こ二度のテコ入れで客足を刺激、V字回復ならぬW字回復を果たしている。そうした前例を見る限り、「名探偵コナン」シリーズもまた、「クレヨンしんちゃん」同様、有効なテコ入れを必要としているシリーズと言えるだろう。

【2008年の邦画アニメ映画】(2) に続く

【2008年の邦画特撮映画】 へ
【2008年の洋画アニメ&特撮映画】 へ

[筆者の紹介]
斉藤守彦

1961年生れ。静岡県浜松市出身。
映画業界紙記者、編集長の経験の後、映画ジャーナリスト、アナリストとして独立。「INVITATION」誌で「映画経済スタジアム」を連載するほか、多数のメディアで執筆。データを基にした映画業界分析に定評がある。「宇宙船」「スターログ日本版」等の雑誌に寄稿するなど、特撮映画は特に得意な分野としている。

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「特殊映像ラボラトリー」

第3回 2008年特殊映像総決算!(2)
【2008年の邦画アニメ映画】(2)

斉藤守彦

[前年のペースを持続した「ポケットモンスター」と「NARUTO疾風伝」]

 その「劇場版ポケットモンスター」シリーズだが、劇場版スタート10周年を記念した「ダイヤモンド・パール」シリーズの第1作「ディアルガVSパルキアVSダークライ」公開時、映画館だけで入手出来るキャラクターの配信で話題をまいたが、2008年夏公開の「ギラティナと氷空の花束」でもこのプレゼントを継続した。

●「劇場版ポケットモンスター・ダイヤモンド・パール/ギラティナと氷空の花束〈シェイミ〉」(2008年7月公開)=48億円
●「劇場版ポケットモンスター・ダイヤモンド・パール/ディアルガVSパルキアVSダークライ」(2007年7月公開)=50.2億円
●「劇場版ポケットモンスター・アドバンスジェネレーション/ポケモンレンジャーと蒼海の王子マナフィ」(2006年7月公開)=34億円

 通常ならば、「ディアルガVSパルキアVSダークライ」のような、イベント的要素の濃い興行の後は、シリーズ作品とはいえ興収はダウンすることが常だった。ところがポケモン・シリーズは、そのダウンを2.2億円に収め、最終的に興収48億円をものにした。これは、このシリーズの強さを改めて思い知らされる成績であり、内容面でのテコ入れに注力した「ワンピース」とは対照的に、製作委員会各社と東宝(東宝は、ピカチュウ・プロジェクトに参加していない)の力を結集し、イベント性のパワーアップを行った点が興味深い。
 「ギラティナと氷空の花束〈シェイミ〉」と「崖の上のポニョ」が揃って公開された7月19日。夜半になって地方のシネコンに両作品のスタート景況をメールで訊ねると、すべてのシネコン関係者が「うちは、ポケモンのほうが勢いがあります」と答えてきたのには驚いた。作品の力を引き出すことで、ロングラン興行で興収を積み上げていくジブリ作品に対して、ポケモン・シリーズはあくまでイベント性を重視し、猛然たるスタートダッシュで夏場の興行を席巻し、夏休みの終了と同時に市場から撤退する。どちらが有利かといえば、全国に3200スクリーンもの映画館が点在する現在では、イベント・ムービーのほうが今日的だと指摘できよう。

 これまた東宝配給の夏休み番組として定着した「劇場版NARUTO」シリーズの第5作「疾風伝 絆」は、興収11.8億円をあげた。

●「劇場版 NARUTO -ナルト- 疾風伝 絆」(2008年8月公開)=11.8億円
●「劇場版 NARUTO -ナルト- 疾風伝」(2007年8月公開)=12.1億円
●「劇場版 NARUTO -ナルト- /大興奮!みかづき島のアニマル騒動だってばよ」(2006年8月公開)=7.8億円

 「NARUTO -ナルト-」から「NARUTO -ナルト-疾風伝」への移行は、原作の第一部から第二部への移行を踏襲したもので、同名のTVアニメ・シリーズも2007年2月よりタイトルと内容を改めている。「疾風伝」移行後の劇場版は、コンスタントに興収10億円以上をあげており、2007年と08年の興収の差がほとんどないあたり、この場合もリニューアルは成功したと見るべきであろう。
 
 東映は、「ふたりはプリキュア」という新しい鉱脈を手に入れた。2007年正月に公開した「ふたりはプリキュアSplash Stars」こそ、「デジモンセイバース」とセットで3億円という興行収入だったが、2007年11月の「yes!プリキュア5/鏡の国のミラクル大冒険!」は、シリーズの人気を反映して興収8億円を計上。2008年11月の「yes!プリキュア5GoGo!/お菓子の国のハッピーバースディ」は、8.1億円をあげた。

●「映画yes!プリキュア5GoGo!/お菓子の国のハッピーバースディ」(2008年11月公開)=8.1億円
●「映画yes!プリキュア5/鏡の国のミラクル大冒険!」(2007年11月公開)=8億円
●「映画ふたりはプリキュアSplash Stars/チクタク危機一髪」「デジモンセイバースTHE MOVIE/究極パワー!バーストモード発動!!」(2006年12月公開)=3億円

 「ふたりはプリキュア」シリーズは、その時々の人気によって、シリーズごとに興収の差が出るが(2006年正月公開の「ふたりはプリキュアMaxHeart2」は興収5.7億円であった)、2本の「yes!プリキュア5」シリーズは、2005年4月公開の「ふたりはプリキュアMaxHeart」の8.5億円に次ぐ成績を上げている。いずれも東映αチェーンでの中規模マーケット(110~150スクリーン)となっているが、それだけのスクリーン数でこの興収は、非常に効率の良いビジネスとなっていることがうかがえる。

[小規模マーケットでヒットした、
「空の境界」と「バイオハザード ディジェネレーション」]

 他のシリーズ作品では、アニプレックス製作・配給によるシリーズ「劇場版 空の境界」が、正月の第一章「俯瞰風景」、第二章「殺人考察(前)」に続いて、第三章「痛覚残留」が2008年2月に、同第四章「伽羅の洞」が5月、第五章「矛盾螺旋」が8月に公開された。原作小説を最大限に尊重した、質の高いビジュアルと音響を誇る同シリーズは、都内ではテアトル新宿1スクリーンでの上映ながら(途中からテアトルダイヤが参加)、熱狂的なファンが毎回駆けつけ、テアトル系映画館の単館アニメ作品としては、歴代興収記録を樹立している。

●「劇場版 空の境界/第五章 矛盾螺旋」(2008年8月公開)=4500万円 
●「劇場版 空の境界/第四章 伽藍の洞」(2008年5月公開)=2800万円
●「劇場版 空の境界/第三章 痛覚残留」(2008年2月公開)=2900万円
●「劇場版 空の境界/第二章 殺人考察(前)」(2007年12月公開)=2700万円
●「劇場版 空の境界/第一章 俯瞰風景」(2007年12月公開)=3300万円
(いずれもテアトル系5館での通常興行に、時系列上映などを加えた成績)

 なお全国8都市における、全5作品の現時点での総興行成績は18万3000名、興収は2億円を達成しており、12月20日から公開された「第六章 忘却録音」も好調な出足を切ったとのことから、2009年初春公開を予定している「第七章 殺人考察(後)」まで、かなりの興行収入が期待されるだろう。
 東京テアトル=メディアボックス配給によるアニメ・シリーズ「それいけ!アンバンマン」の新作「それいけ!アンパンマン/妖精リンリンのひみつ」は、7月12日から全国154スクリーンで公開。今年は劇場版「アンパンマン」シリーズ20周年とあって、例年以上の規模のプロモーションが行われた結果、興行収入3.8億円をあげることが出来た。
 シリーズ第3作となる「北斗の拳ZERO/ケンシロウ伝」は、今回ゴー・シネマの配給によって10月に公開。また映画館のマナー・ムービーでおなじみの「鷹の爪 THE MOVIE」が5月に公開されて人気を集めた。
 
 ガイナックスの新シリーズ「天元突破グレンラガン」の第1作「紅蓮篇」は9月6日より角川書店=クロックワークスの配給で公開され、全国11スクリーンでの小規模展開ながら、オープニング2日間で1万3960名、興収2124万5030円をあげた。1スクリーンあたりの興収は191万7718円とすこぶる高く、これまた「ケロロ軍曹」同様、映画館を潤わせることに貢献している。
 「バイオハザード」をCGアニメ化した、神谷誠監督の「バイオハザード ディジェネレーション」は、10月18日より新宿ピカデリーなど全国3スクリーンで2週間限定上映され、先行上映を含むオープニング2日間で、6584名、1027万9400円という絶好調の出足を切った。1スクリーンあたりの興収は、342万6467円と「グレンラカン」の2倍以上を記録。またパンフレットなど関連商品も売り切れが出るほどの勢いだったが、当初からDVD、ブルーレイディスクのプロモーションを目的とした上映であることから、予定通り2週間で興行を終了。配給、興行サイドの姿勢が、一部で物議を醸した。
 
[評価が分かれる「スカイ・クロラ」のマーケティング]

 また押井守監督の新作「スカイ・クロラ」が、米メジャー系配給会社であるワーナーのローカル・プロダクション作品として公開され、興収7億円をものにした。この成果については評価が分かれるところだが、筆者としては押井監督作品の最高記録であった「イノセンス」(興収10億円)を上回って欲しかった。米メジャー系配給会社が邦画各社と大きく差別化出来るのは、そのマーケティング力にある。ハリウッド映画で培った大規模な拡大公開が可能となることは、製作サイドにとって大きな魅力だが、果たして「スカイ・クロラ」を全国213スクリーンという規模で上映することが、作品の力に応じたマーケティングであったかといえば、これまた評価は分かれるところだ。
 なお「スカイ・クロラ」と連動して公開された「攻殻機動隊/GHOST IN THE SHELL」のニューバージョン「攻殻機動隊2.0」は、当初小規模マーケットでの上映だったが、同じワーナー配給の「スピードレーサー」の不振から上映館数が増えた結果、興収6000万円と、当初の予想を上回る健闘を見せた。

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「特殊映像ラボラトリー」

第3回 2008年特殊映像総決算!(3)
【2008年の邦画特撮映画】

斉藤守彦

 特撮映画…とはいうものの、昨今ではCGやVFX技術の進歩によって、一般映画にも特撮技術やその応用が使われることも多く、果たして「特撮映画」とはどのような作品を指すのか、判然としづらい。故にここでは「特撮技術をセールスポイントにした作品」と定義したい。
 
[未だ根強い、「仮面ライダー電王」の人気] 

 なんといっても2008年の特撮映画は、東映の「仮面ライダー」シリーズの好稼働ぶりがエポックだ。2007年夏に公開された「劇場版仮面ライダー電王/俺、誕生!」が、興行収入13億円と、平成ライダー・シリーズの劇場版としては、2003年の「仮面ライダー555/パラダイス・ロスト」の15億円、2002年の「仮面ライダー龍騎/EPISODE FINAL」の14.3億円に次ぐ歴代3位の成績であったことから、「電王」の人気の高さは証明されていた。TVシリーズは2008年1月で終了したものの、さらなるビジネス・チャンスを狙った東映ビデオは、OVとして「仮面ライダー電王&キバ/クライマックス刑事」を、金田治監督で製作。当初この作品が、東映系の4月番組として公開されるはずだったが、東映の子会社T・ジョイが配給権を持つ「モンゴル」が、浅野忠信のオスカー・ノミネートという話題性から採用されてしまい、「仮面ライダー電王&キバ」は、中規模マーケットである東映αチェーンでの上映となった。
 全国136スクリーンでの上映ながら、「仮面ライダー電王&キバ」はオープニングから多くの観客を集め、週末の興行ランキングのトップに輝くヒットとり、最初の1週間で原価を回収。最終的に興収7.4億円をあげるという快挙をなしとげた。8月公開の「仮面ライダーキバ/魔界城の王」「炎神戦隊ゴーオンジャー」は、興収9億円と前年を4億円下回ったが、10月に再度登場した「さらば仮面ライダー電王」が、これまた中規模マーケットでの展開にもかかわらず興収7.2億円を見込む好稼働ぶりで、変わらぬ電王人気を印象づけた。2008年の東映は、3つの「仮面ライダー」番組で、計23.6億円を稼いだことになる。

●「さらば仮面ライダー電王」(2008年10月公開)=7.2億円(見込み)
●「劇場版仮面ライダーキバ/魔界城の王」「炎神戦隊ゴーオンジャー/BunBun!BanBan!劇場BANG!!」(2008年8月公開)=9億円
●「仮面ライダー電王&キバ/クライマックス刑事」(2008年4月公開)=7.4億円

[明暗を分けた 「大決戦!超ウルトラ8兄弟」と「ギララの逆襲」]

 「仮面ライダー」シリーズの宿命的ライバルといえば、「ウルトラマン」シリーズだが、予想を上回るヒットとなった2006年の「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」に続いて、昭和と平成のウルトラマン及び出演者たちが共演する「大決戦!超ウルトラ8兄弟」が、松竹の配給により9月13日から公開された。

●「大決戦!超ウルトラ8兄弟」(2008年9月公開)=8.4億円
●「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」(2006年9月公開)=6.055億円
●「ULTRAMAN」(2004年12月公開)=1.5億円

 結果的にウルトラマン映画の興行収入新記録を樹立した「大決戦!超ウルトラ8兄弟」だが、これは前述した観客の保守性が大きく作用していると言っていい。ウルトラマンたちの共演はもとより、今回はV6長野博の出演が大きな話題となり、ファミリー層、ウルトラマンティガ・ファンの動員に拍車をかけた。なおウルトラマンダイナに変身するアスカ・シンを演じたつるの剛士は映画公開時、歌唱ユニット・羞恥心でブレイクし集客に貢献したが、撮影時にはまだ羞恥心は始動しておらず、思わぬサプライズとなった形だ。
 
 松竹を幹事会社とする製作委員会が製作し、トルネード・フィルムが配給した、河崎実監督の「ギララの逆襲/洞爺湖サミット危機一発」は、当初の予定を繰り上げて7月26日から公開されたが、興行的には奮わなかった(→「特殊映像ラボラトリー・2/河崎実監督ロング・インタヴュー」参照)。
 これも松竹が製作・配給した「ゲゲケの鬼太郎/千年呪い歌」は、前作の興収23.45億円を大きく下回る14億円にとどまった。前作の明るいトーンとは逆に、ダークでアダルトな雰囲気を強調した作品にしたことで、ファミリー層を遠ざけたことが原因と思われる。
 「猟奇的な彼女」などで知られるクァク・ジョエンが監督した、ギャガ・コミュニケーションズ配給「僕の彼女はサイボーグ」は、5月31日から公開され、興収7億円をものにした。主演は今年出演作が立て続けに公開された綾瀬はるかだが、彼女が演じたサイボーグ(アンドロイドだと思うのだが…)のキュートさは、今年の特撮映画界での収穫のひとつだと、個人的に言い切らせてもらおう。

 単館及び小規模公開作品では、小中和哉監督が“和製「ある日どこかで」”を目指した、秀逸なファンタジー「東京少女」、アメリカ資本による「片腕マシンガール」「東京残酷警察」などが登場。また「小さき勇者たち」で特技監督を務めた金子功が監督した「THE MASKED GIRL/女子高生は改造人間」は、「『仮面ライダー』の第1話を、女子高生主演で、まんまリメイクした」(監督談)という、特撮オマージュにあふれた作品だ。

【2008年の洋画アニメ&特撮映画】 に続く

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「特殊映像ラボラトリー」

第3回 2008年特殊映像総決算!(4)
【2008年の洋画アニメ&特撮映画】

斉藤守彦

[目標を大きく下回った「カンフー・パンダ」]

 まずアニメ映画では、ディズニー・アニメの新作「ルイスと未来泥棒」が正月に公開され、興収9.33億円をあげた。ドリームワークス・アニメーションの新作2本は、「ビー・ムービー」が興収2.4億円、全米のみならず海外マーケットで大ヒットした「カンフー・パンダ」は20億円と、公開前の「70億円目標!!」とのかけ声には届かなかった。また「スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ」も興収2.9億円と、あの大ヒット・シリーズとは思えない成績。実写映像とCGアニメのギャップは、特にキャラクター面において埋めがたいミゾが存在している。
 「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」(興収57.1億円)、「アイ・アム・レジェンド」(43億円)、「ライラの冒険・黄金の羅針盤」(34億円)など、“特撮・VFX技術を使ったSF・ファンタジー・アドベンチャー映画”は数々公開されたが、あえて“特撮映画”という日本的ニュアンスにこだわるとすれば、それに相応しいのは6本の外国映画だ。
 まず正月映画として公開された「AVP2/エイリアンズVSプレデター」は、興収10.7億円と大台を突破したが、その内容は前作より相当落ちる。例のラストのくだりに関しては「まだやるんかいっ!!」とツッコミを入れておこう。

 4月に公開された、J.J.エイブラハムズの「クローバーフィールド/HAKAISHA」。エイブラハムズ自身が「日本の怪獣映画からヒントを得た」というだけあって、そのテイストといい、ジャパニーズ特撮映画を彷彿とさせる。興行収入12億円は立派。
 「ショーシャンクの空に」「グリーン・マイル」のフランク・タラボン監督の新作。感動作をイメージさせるアドバタイジングから、女性客を集めたものの、画面を覆い尽くした霧の中ではレギオンとメガギラスが戦っていた!!…とまで言われた、“隠れ怪獣映画”「ミスト」。あまりのイメージ・ギャップに映画館へは苦情殺到。配給会社の話では、「ムーブオーバーが多かったので、興行収入は5億円上がりました」とのこと。
 「キューティーハニー」がコケた庵野秀明監督が試写を見て大絶賛したのが、7月に公開された「スピードレーサー」。そもそも庵野監督がハニーで試みた“ハニメーション”と同様のビジュアルメイクを、全編に採用しているのだから。日本のアニメが豪華な映画になって、帰ってきました…とは言っても、「マッハGo! Go! Go!」の現在での知名度は低く、初日の映画館では40代以上と見られる男性観客の姿が目立ったとか。興収4億円に関係者は真っ青。

 ブーム現象が期待されるというか、カッツェンバーグたちが、意地でもブームにしようと企んでいる3D映画。「とりあえず」といった感じで10月に公開されたのが、H・G・ウェルズの「地底探検」を映画化した「センター・オブ・ジ・アース」。内容云々よりも、3Dメガネの重みで顔面が硬直してくるのと、試写会ではやけに映像が暗いプリントが上映されたことで、売り物である立体効果が今ひとつ実感出来なかった作品だ。それでも興収8億円をあげたのは、特別料金(当日大人2000円)のおかげか。
 あの珍作「怪獣大決戦ヤンガリー」を放ったシム・ヒョンレ監督が、懲りずにまたまた作ってしまった怪獣映画が「D-WARS/ディー・ウォーズ」。ソニー・ピクチャーズとネオの配給で11月に公開されたものの、99スクリーンという小規模マーケットなので、さほど大きな興収にはなっていない。

 …さて2009年の特殊映像たちの成果はいかに。
 (文中の数値は、一部推定/msdb調べ)

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