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「特殊映像ラボラトリー」 第3回 2008年特殊映像総決算!(1) 斉藤守彦 年末を迎え、各種メディアでは2008年の総括やら総決算が花盛り。そこで、アニメ、特撮映画といった、いわゆる特殊映像を扱う当ラボラトリーでも、2008年の成果を検証しようという試みである。 この年は「ハウルの動く城」以来の宮崎駿監督作品が公開されるとあって、周囲の期待は、すこぶる大きかった。その“宮崎アニメ”最新作「崖の上のポニョ」は、現時点で興行収入154億円。正月も引き続き上映されることから、さらにこの数値は伸びるだろうが、160億円を上回ることはないだろう。(「ポニョ」についての興行推移や詳細については、本連載1=「『崖の上のポニョ』早すぎる検証」を参照されたし) 正月に公開された「劇場版BLEACH ザ・ダイヤモンドダスト・リベリオン/もう一つの氷輪丸」(東宝配給)は、興行収入7.3億円をあげ、前作「劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODY」の6.6億円を上回った。 〈過去3作品の興行成績〉 「ドラえもん」シリーズが、藤子プロ=小学館中心の製作体制であることに対し、「ワンピース」の場合は東映と東映アニメーションが、製作のイニシアティヴを握っている。そのため、プロモーション面でのパワーアップより、知名度のある原作をより魅力的にするための、いわば内容面でのテコ入れが、ここ数年試みられている。2008年の「ワンピース」は、原作者・尾田英一郎が企画協力として参加。題材もTVシリーズで最高視聴率を記録した「冬島・ドラム王国篇」を、一部のキャラクターなどの設定を改めて映画化した。上映時間1時間50分、ゲスト声優にみのもんた、主題歌にドリームズ・カム・トゥルーを招いたが、それらが興行的に大きなプラスになったとは、残念ながら言い難い。 この作品が観客の心をしっかり捉えたことは、データにも現れている。東映がオープニング時に行った観客調査での「作品満足度」は、なんと99.9%!!女性比率52.3%、20歳以上の観客は全体の58.9%を占めたという。 [岐路に立つ「クレヨンしんちゃん」と「名探偵コナン」] ●「超劇場版ケロロ軍曹3/ケロロ対ケロロ・天空大決戦」(2008年3月公開)=5.8億円 興収5億円を下回った前作を挽回。「超劇場版ケロロ軍曹3」の、オープニング成績は163スクリーン計10万2567名と初めて10万名を突破。興収1億697万7300円は、シリーズ新記録にあたる。「ドラえもん」「ワンピース」ほどの大規模なマーケット展開は行っていない同シリーズだが、映画館にとっては1スクリーンあたりの興収が高いことに加え、ショップで扱うキャラクター商品の売り上げなどで、オイシイ番組なのである。 ●「ドラえもん・のび太と緑の巨人伝」(2008年3月公開)=33.7億円 2005年の大規模リニューアルを経た「ドラえもん」シリーズは、完全に復調したと言えるだろう。また作品内容も、子供向けではなく、むしろ同伴者である父親、母親たちを感動させることで、視聴習慣ならぬ“鑑賞習慣”をつけさせようとの狙いが、「のび太の恐竜2006」以降の作品から感じられる。「のび太と緑の巨人伝」では、そこに環境保護というメッセージ性が加わった。 ●「クレヨンしんちゃん・ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者」(2008年4月公開)=12.3億円 「クレヨンしんちゃん」シリーズは、1999年4月公開の「爆発!温泉わくわく大決戦」が興行収入10億円を下回ったことで、関係各社によるリニューアルが検討され、その結果、「しんちゃんのキャラクターを以前より強く押し出す」(「ゲスト・キャラの描写に比重がかかりがち」との指摘を反映して)ことや、興行的な観点から、それまでの5~6週間興行を、G.W.の休日3週間に絞ったデイトに改めるという対策が、2000年からとられるようになった。2001年に公開された原恵一監督の「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」のクォリティの高さが評判となり、翌2002年の同監督作品「嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」は、文化庁メディア芸術祭アニメ部門大賞などを受賞したことにより、いちやく注目を集めることになる(山崎貴監督が「BALLAD -名もなき恋のうた-」として実写リメイクするというおまけまでついた)。 ●「名探偵コナン・戦慄の系譜〈フルスコア〉」(2008年4月公開)=24.2億円 2002年の「ベイカー街の亡霊」の興収34億円、03年の「迷宮の十字路」の32億円をピークに、同シリーズの成績は徐々に下降線を辿りはじめるが、シリーズ開始第10作を記念し、人気キャラが勢揃いした2006年の「探偵たちの鎮魂歌」が30.3億円を計上した。しかしこれ以降、興収は再び緩やかな右肩下がりの曲線をき始める。 【2008年の邦画特撮映画】 へ [筆者の紹介] |
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「特殊映像ラボラトリー」 第3回 2008年特殊映像総決算!(2) 斉藤守彦 [前年のペースを持続した「ポケットモンスター」と「NARUTO疾風伝」] その「劇場版ポケットモンスター」シリーズだが、劇場版スタート10周年を記念した「ダイヤモンド・パール」シリーズの第1作「ディアルガVSパルキアVSダークライ」公開時、映画館だけで入手出来るキャラクターの配信で話題をまいたが、2008年夏公開の「ギラティナと氷空の花束」でもこのプレゼントを継続した。 ●「劇場版ポケットモンスター・ダイヤモンド・パール/ギラティナと氷空の花束〈シェイミ〉」(2008年7月公開)=48億円 通常ならば、「ディアルガVSパルキアVSダークライ」のような、イベント的要素の濃い興行の後は、シリーズ作品とはいえ興収はダウンすることが常だった。ところがポケモン・シリーズは、そのダウンを2.2億円に収め、最終的に興収48億円をものにした。これは、このシリーズの強さを改めて思い知らされる成績であり、内容面でのテコ入れに注力した「ワンピース」とは対照的に、製作委員会各社と東宝(東宝は、ピカチュウ・プロジェクトに参加していない)の力を結集し、イベント性のパワーアップを行った点が興味深い。 これまた東宝配給の夏休み番組として定着した「劇場版NARUTO」シリーズの第5作「疾風伝 絆」は、興収11.8億円をあげた。 ●「劇場版 NARUTO -ナルト- 疾風伝 絆」(2008年8月公開)=11.8億円 「NARUTO -ナルト-」から「NARUTO -ナルト-疾風伝」への移行は、原作の第一部から第二部への移行を踏襲したもので、同名のTVアニメ・シリーズも2007年2月よりタイトルと内容を改めている。「疾風伝」移行後の劇場版は、コンスタントに興収10億円以上をあげており、2007年と08年の興収の差がほとんどないあたり、この場合もリニューアルは成功したと見るべきであろう。 ●「映画yes!プリキュア5GoGo!/お菓子の国のハッピーバースディ」(2008年11月公開)=8.1億円 「ふたりはプリキュア」シリーズは、その時々の人気によって、シリーズごとに興収の差が出るが(2006年正月公開の「ふたりはプリキュアMaxHeart2」は興収5.7億円であった)、2本の「yes!プリキュア5」シリーズは、2005年4月公開の「ふたりはプリキュアMaxHeart」の8.5億円に次ぐ成績を上げている。いずれも東映αチェーンでの中規模マーケット(110~150スクリーン)となっているが、それだけのスクリーン数でこの興収は、非常に効率の良いビジネスとなっていることがうかがえる。 [小規模マーケットでヒットした、 他のシリーズ作品では、アニプレックス製作・配給によるシリーズ「劇場版 空の境界」が、正月の第一章「俯瞰風景」、第二章「殺人考察(前)」に続いて、第三章「痛覚残留」が2008年2月に、同第四章「伽羅の洞」が5月、第五章「矛盾螺旋」が8月に公開された。原作小説を最大限に尊重した、質の高いビジュアルと音響を誇る同シリーズは、都内ではテアトル新宿1スクリーンでの上映ながら(途中からテアトルダイヤが参加)、熱狂的なファンが毎回駆けつけ、テアトル系映画館の単館アニメ作品としては、歴代興収記録を樹立している。 ●「劇場版 空の境界/第五章 矛盾螺旋」(2008年8月公開)=4500万円 なお全国8都市における、全5作品の現時点での総興行成績は18万3000名、興収は2億円を達成しており、12月20日から公開された「第六章 忘却録音」も好調な出足を切ったとのことから、2009年初春公開を予定している「第七章 殺人考察(後)」まで、かなりの興行収入が期待されるだろう。 また押井守監督の新作「スカイ・クロラ」が、米メジャー系配給会社であるワーナーのローカル・プロダクション作品として公開され、興収7億円をものにした。この成果については評価が分かれるところだが、筆者としては押井監督作品の最高記録であった「イノセンス」(興収10億円)を上回って欲しかった。米メジャー系配給会社が邦画各社と大きく差別化出来るのは、そのマーケティング力にある。ハリウッド映画で培った大規模な拡大公開が可能となることは、製作サイドにとって大きな魅力だが、果たして「スカイ・クロラ」を全国213スクリーンという規模で上映することが、作品の力に応じたマーケティングであったかといえば、これまた評価は分かれるところだ。 【2008年の邦画特撮映画】 に続く |
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「特殊映像ラボラトリー」 第3回 2008年特殊映像総決算!(3) 斉藤守彦 特撮映画…とはいうものの、昨今ではCGやVFX技術の進歩によって、一般映画にも特撮技術やその応用が使われることも多く、果たして「特撮映画」とはどのような作品を指すのか、判然としづらい。故にここでは「特撮技術をセールスポイントにした作品」と定義したい。 なんといっても2008年の特撮映画は、東映の「仮面ライダー」シリーズの好稼働ぶりがエポックだ。2007年夏に公開された「劇場版仮面ライダー電王/俺、誕生!」が、興行収入13億円と、平成ライダー・シリーズの劇場版としては、2003年の「仮面ライダー555/パラダイス・ロスト」の15億円、2002年の「仮面ライダー龍騎/EPISODE FINAL」の14.3億円に次ぐ歴代3位の成績であったことから、「電王」の人気の高さは証明されていた。TVシリーズは2008年1月で終了したものの、さらなるビジネス・チャンスを狙った東映ビデオは、OVとして「仮面ライダー電王&キバ/クライマックス刑事」を、金田治監督で製作。当初この作品が、東映系の4月番組として公開されるはずだったが、東映の子会社T・ジョイが配給権を持つ「モンゴル」が、浅野忠信のオスカー・ノミネートという話題性から採用されてしまい、「仮面ライダー電王&キバ」は、中規模マーケットである東映αチェーンでの上映となった。 ●「さらば仮面ライダー電王」(2008年10月公開)=7.2億円(見込み) [明暗を分けた 「大決戦!超ウルトラ8兄弟」と「ギララの逆襲」] 「仮面ライダー」シリーズの宿命的ライバルといえば、「ウルトラマン」シリーズだが、予想を上回るヒットとなった2006年の「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」に続いて、昭和と平成のウルトラマン及び出演者たちが共演する「大決戦!超ウルトラ8兄弟」が、松竹の配給により9月13日から公開された。 ●「大決戦!超ウルトラ8兄弟」(2008年9月公開)=8.4億円 結果的にウルトラマン映画の興行収入新記録を樹立した「大決戦!超ウルトラ8兄弟」だが、これは前述した観客の保守性が大きく作用していると言っていい。ウルトラマンたちの共演はもとより、今回はV6長野博の出演が大きな話題となり、ファミリー層、ウルトラマンティガ・ファンの動員に拍車をかけた。なおウルトラマンダイナに変身するアスカ・シンを演じたつるの剛士は映画公開時、歌唱ユニット・羞恥心でブレイクし集客に貢献したが、撮影時にはまだ羞恥心は始動しておらず、思わぬサプライズとなった形だ。 単館及び小規模公開作品では、小中和哉監督が“和製「ある日どこかで」”を目指した、秀逸なファンタジー「東京少女」、アメリカ資本による「片腕マシンガール」「東京残酷警察」などが登場。また「小さき勇者たち」で特技監督を務めた金子功が監督した「THE MASKED GIRL/女子高生は改造人間」は、「『仮面ライダー』の第1話を、女子高生主演で、まんまリメイクした」(監督談)という、特撮オマージュにあふれた作品だ。 【2008年の邦画アニメ映画】(1) に戻る |
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「特殊映像ラボラトリー」 第3回 2008年特殊映像総決算!(4) 斉藤守彦 [目標を大きく下回った「カンフー・パンダ」] まずアニメ映画では、ディズニー・アニメの新作「ルイスと未来泥棒」が正月に公開され、興収9.33億円をあげた。ドリームワークス・アニメーションの新作2本は、「ビー・ムービー」が興収2.4億円、全米のみならず海外マーケットで大ヒットした「カンフー・パンダ」は20億円と、公開前の「70億円目標!!」とのかけ声には届かなかった。また「スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ」も興収2.9億円と、あの大ヒット・シリーズとは思えない成績。実写映像とCGアニメのギャップは、特にキャラクター面において埋めがたいミゾが存在している。 4月に公開された、J.J.エイブラハムズの「クローバーフィールド/HAKAISHA」。エイブラハムズ自身が「日本の怪獣映画からヒントを得た」というだけあって、そのテイストといい、ジャパニーズ特撮映画を彷彿とさせる。興行収入12億円は立派。 ブーム現象が期待されるというか、カッツェンバーグたちが、意地でもブームにしようと企んでいる3D映画。「とりあえず」といった感じで10月に公開されたのが、H・G・ウェルズの「地底探検」を映画化した「センター・オブ・ジ・アース」。内容云々よりも、3Dメガネの重みで顔面が硬直してくるのと、試写会ではやけに映像が暗いプリントが上映されたことで、売り物である立体効果が今ひとつ実感出来なかった作品だ。それでも興収8億円をあげたのは、特別料金(当日大人2000円)のおかげか。 …さて2009年の特殊映像たちの成果はいかに。 【2008年の邦画アニメ映画】(1) に戻る |
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